情けない私と息子の決意。 | 届かない手紙

届かない手紙

自死遺族〜
最愛の夫を失った妻の記録。
二度と戻らない日々…
行き場の無い気持ち…
もう二度と届くことのない夫への想いを綴る。

 

 

その日の夜、息子に父親の死を告げた。

向かい合い、そっと息子の手を握り…

 

「パパ、見つかったよ。」

 

「生きてなかった…。」

 

我が子に、父親の死を知らせるのは辛かった。

夫が帰宅しなかった日から丸二日が経っていた。

 

 

「パパ、どこにいたの?」

 

「…自殺?」

 

「なんで?」

 

「どこでどうやって死んでたの?」

 

答えられなかった。

 

 

答えられたのは発見された地名だけ。

 

自殺かどうかは警察の人が調べてくれていること。

遺書が無かったのでなぜ亡くなったかはわからないこと。

 

死因については…言えなかった。

 

本当に聞きたいのであれば教えることはいつでもできる。

でも、今知ることで後悔するかもしれない。

怖がりな息子が想像して苦しんでしまったら?

似たような場所に行けなくなってしまったら?

 

今じゃなくていい。

 

「パパがどうやって亡くなったかはもう少し成長して、本当に知りたいと思ったらその時に話すよ。」

 

そう伝えるしかなかった。

 

 

「うん、今はやめておく。」

 

「なんとなく想像はついてるけど…」

 

「だってパパは…きっと他の方法は出来ないはずだから…」

 

 

そうだね。

たぶん、息子の想像通りだと思う。

でも今はまだ、ハッキリはさせない。

 

 

そして夫の死は告げられたものの、まだ誰も遺体の確認が出来ていない状況だった。

 

夫の両親も、まだ引き取れなくても確認しに行きたいとのことだった。

 

 

私は…こわかった。

亡くなってしまった夫を見れる気がしなかった。

どんな状態になっているかもわからない。

現実を受け止められる気がしない。

 

何故かはわからないけれど昔からご遺体を見るのが怖かった。

触れる事も出来なかった。

 

だからたとえ愛する夫であっても確認する勇気がなかった。

 

「こわい…行きたくない…。」

 

そう言う私に周囲は呆れていた。

 

 

そして息子が…

 

「俺が行く。」

「ママが行かなくても代わりに俺が確認してくる。」

 

息子の決意を聞いて自分が情けなくなった。

 

一度も涙を流すことも取り乱すこともしない息子。

何も言わないけれどきっといろんな気持ちを抱えたはず。

 

冷汗で冷たくなっている息子の手を握りしめながら…

いつの間にか、こんなに成長していたんだなと思った。