聞きたくない。 | 届かない手紙

届かない手紙

自死遺族〜
最愛の夫を失った妻の記録。
二度と戻らない日々…
行き場の無い気持ち…
もう二度と届くことのない夫への想いを綴る。

 

 

耳を塞ぎたかった。

 

心拍数が上がる。

 

時計の針の音。

自分の心臓の音。

 

血の気が引いていく。

 

 

「落ち着いて聞いてください。」

「今〇〇警察署から一報が入りました。」

「まだ詳しい事は何もわかっていません。」

「〇〇さんと言う名前の身分証明と人が1人見つかりました。」

 

 

これ以降、記憶が断片的で記憶が曖昧なままです。

自分が覚えていることと、その後周囲から聞いたことを繋ぎ合わせて記録しておきます。

 

 

何を言われているのかわからなかった。

何かの事件に巻き込まれたのかと思った。

 

「落ち着いてください。」

「身分証明があったこと、そこに一人の人がいたことしかまだわかっていません。」

「その方がご本人なのかも、生きているのか亡くなっているのかもわかっていません。」

 

 

その瞬間インターホンが鳴った。

 

 

何かの間違いだったんだ。

夫が無事に帰ってきたんだと思って急いで玄関に向かった。

 

 

そこには私の母が立っていた。

 

「…パパ生きてないかもしれない」

 

そう言って私は泣き崩れた。

 

あまりの事態に母も慌て、「ちょっと待っていて」と外で待機してた家族を呼びに行ったが、警察官の方に「そばを離れないでください」と言われてた。

 

状況がわからずパニックの中、再び警察官の電話が鳴った。

 

 

「やだ!その音聞きたくない!やめてーーー!」

 

 

耳を塞ぎ、泣き崩れ、半狂乱になる私を母が宥め別室に連れて行った。

他の家族が代わりに警察官から話を聞いてくれていた。

 

話を聞き終えた家族と警察官が私のところに来て説明を始めた。

 

本来であれば、はっきりわからない時点でお伝えすることは無いのだが、目の前にいる時に電話に出たので既に話が聞こえているかもしれないこともあり未確定の段階で伝えてくれたそうだ。

 

そして再びきた電話の内容も確定ではないが、恐らく生きている状態ではなさそうだという話だった。

 

これから管轄の警察署から刑事さんたちが来て、お話を聞いたり家の中の様子を撮影したりして調べますのでそのままお待ちくださいとのことだった。