私学列強である神奈川高校野球界に革命がもたらされる日が来るのであれば、それは今日であったことだろう。
64年ぶりの県立勢甲子園出場の期待が集まる第1シード県立相模原(県相)が、私学列強のシンボルでもある、皇帝横浜を迎え撃つ。
昨夏ベスト8、昨秋ベスト4、今春準優勝。
着実にステップアップしてきた県相。
その戦績は決してフロックではない、誰もが認める強さを兼ね揃えている。
県相が神奈川高校野球の象徴である横浜を倒し、神奈川高校野球界に新時代をもたらすのではないか?
『今日、横浜敗れる。』
戦いの舞台となった相模原球場は、そんな見出しを頭に思い描いた者もいたことだろう。
我こそが歴史の目撃者となるべく、1万6千人となる満員札止めの大観衆が詰めかけた!
今夏での勇退を表明されている、横浜渡辺監督がシートノックの最後を締めくくるキャッチャーフライを打ち上げたとき、満員に膨れ上がった大観衆から万感の拍手が送られていた。
まるでこれが渡辺監督の最後のノックになるかのような拍手が球場全体から湧き上がっていた。
それほどまでに、ここにいる観衆みなが県相の強さを知るところであり、そうなるものだと疑わないでいたのかもしれない。
しかし、ここに集まった1万6千人の観衆は、横浜という壁のあまりの厚さを、あまりの高さを、痛感させられることになるのであった。
未だ途切れない入場者列に、試合開始時刻を10分繰り下げて開始するという異例の事態の中始まった試合。
横浜・藤平。
県相・宮崎。
両エース互いに序盤はランナーを与える展開。
2回表、藤平はライトの落球と自らのバント処理送球エラーでノーアウト1,2塁のピンチを招くが、後続を打ち取った。
2回裏、宮崎は横浜打線に3連打を浴び2点を失う。
立ち上がり、アウトローへの制球が甘く、逆球もあり、真ん中近辺にボールが集まっているように感じた。
正直、今日の出来は良くないのかと感じたが、そこからの粘投は見事だった。
藤平は、県相2番井口にはタイミングを合わされていたが、他の打者は封じ込み、付け入る隙を与えない。
8回裏、ランナー1塁で迎えた井口に痛烈な当たりを浴びたが、ピッチャーライナーゲッツーで切り抜けた。
満員札止めの大観衆が固唾を飲んで見届けた、この夏の神奈川大会ハイライト試合。
13時28分、ここまでチームをけん引してきた県相エース宮崎がセカンドフライに打ち取られ、最後のバッターとなった。
しかし彼は天を仰ぐことなく、静かに整列に向かって行った。
3-0。
ノーシード横浜がエース藤平の4安打完封劇で、第1シード県立相模原を下し5回戦進出を決めた。
横浜時代は終わらない。
神奈川高校野球界において、本当に大きな存在、圧倒的な存在である横浜高校。
名将勇退後も、強くあり続けなければならない高校だ。
横浜高校、校歌斉唱時、県立相模原のナインは誰ひとりこうべを垂れることなく、胸を張っていた。
県立相模原の挑戦は終わった。
「今年の夏に限っては」、という注釈を付け加えておこう。
遠くない未来に、県立相模原が県立校からの甲子園出場という、革命をもたらすことだろう。
そんな予感を感じて、大観衆は相模原球場を後にした。























