テレビ番組の「グータン」をパクって、定期的に催している女の子だらけの飲み会。
そこに、いつも参加したいと熱望してくれている、知り合いのカメラマンの男性がいるのですが。
その方は50オーバーという年齢を感じさせない、若々しいルックスと気さくな人柄。

「あ。そういえば今日もお誘いするの、忘れちゃったねー」

決して男子禁制ではないこのグータン会、いつもなぜかその方にお声をかけなかったことを会の最中に気づくという、かなりユルい、というか失礼な私たちなのですが。


今回の集合のお店は、女性が経営している池尻の隠れ家。
まだ夜は冷えるというのに、少しでもセレブリゾート気分を味わんと、いち早くテラス席を陣取ります。

ひとしきり美味しい料理と赤ワインをいただき、だいぶ落ち着いたところで改めてメニューを見ると、、、
ふむふむ、ウイスキーも幾つかラインナップされていて。
その中に、意外にも「オールドパー」があるのを発見!

「オールドパー」
‘パー爺さん’という意味で、トーマス・パーという、152歳まで長生きしたおじいさんの名前からつけられた、ブレンデッド・スコッチウイスキー。
このパーじいさん、80歳の時に結婚(初婚)し、なんと子供をもうけたというからびっくり。そして更に105歳の時、不倫相手にも身ごもらせてしまうというから、恐るべし子孫繁栄能力。おののきなのです。

このパーじいさんの長寿&絶倫にあやかって、日本の吉田茂、田中角栄元首相などの政治家もこのウイスキーがお気に入りだったそう。

なので、私の中ではどーうも、このウイスキーは男子のための元気になるお薬的な、だいぶ偏ったイメージになってしまっていて、なかなかちゃんと口にしたことがなかったのです。
(本来はオールドパーとしては、長年変わらない高品質のウイスキー作りを行っています、という真っ当なイメージなのでしょうが。)


そういえばいつも呼び忘れてしまうその例のカメラマンさんにも、20近くも年下の彼女がいるって聞いたときはびっくりしたっけ。彼女の方がそろそろ子供を欲しがっているとか。

誰だって年相応に生きることは簡単。
このパーじいさんやカメラマンさんのように年甲斐なく生きる人ってのは、素晴らしい!(by 渡辺淳一先生の講演より)ってことかしら、、、

それにしても小洒落た女の子向けのお店にもこのオールドパーをおいているなんて、いいのかしらあ?女の子がどんどん強くなっちゃうじゃなあい?
など思いつつ、オールドパーを、ストレートでペロリな私。

小寒いテラスの中、店で用意された膝掛けストールを体に巻き付けつつ。
南国リゾートテラス気取りだったはずがまるで冬の暖炉を囲むような出で立ちに変貌しながらも、30オーバーのガールズトークは夜更けまで繰り広げられたのです。



三軒茶屋のイタリアン「GUCCINA」にて、女4人、戦慄ディナー。

めいめい気の向くまま、食べたい放題、飲みたい放題いただき、美味しいワインと料理に各自大満足の夜。
シェフとの会話も小粋にこなせるのがいい女の条件と言わんばかりに、厨房から出て来たシェフへのお声掛けも、勿論抜かりありません。
お腹は腹八分目をとうの昔に超えているにも関わらず、まだまだ喋りたりないのが、女のパラドックス。

夜も更け、主婦のグループ客が帰り、隣のカップルが帰り、、、、と、気づくと私たちのグループが最後の一組になっています。
大人として気にしつつも、もう少しいさせて~、と、思う存分パワフルディナーを楽しむ私たちに、お店の人から素敵なサービスが。

可愛いグラスが並べられ、、、、
自家製リモンチェロのサービスでした。

こちらのお店でもやはり無農薬のレモンを使って漬込んでいるそうです。
シロップが入っていたので、甘くて優しい味わい。

素敵なお店の粋なサービスをクイクイいただきながら、またお喋りに花が咲き。
私たちの席をたつ時間がまた随分先になってしまったのです。。。

ジメジメした季節はストレスに拍車をかけます。
それに、業界的に忙しいこの時期、少しでも夏を先取りして気分をリフレッシュしようと躍起になり、友人と夜ゴハンの場所を探して恵比寿を徘徊しておりました夜。

よく通る路地に、いつの間にか新しい店が出来ていました。
アジアンリゾートダイニング的な、まさに夏向けの外観。
オープンテラスになっていて、広すぎず狭すぎずの白い空間のところどころに、南国風の植木が置かれ、壁には海の写真が飾ってあるのを即座にチェックした私たちは、ここいいかもね~と、波に乗るように、中に入ってみることにしました。

ところが。

こんなにも早く一抹の不安を覚えたのも珍しいくらい、足を踏み入れた瞬間に、ちょっと今夜、違ってしまったかも?と思ったわけです。
それは、その店のスタッフが、おそらく50歳代であろう、どうみても脱サラ組の夫婦が二人で切り盛りしている姿が目に入ったからなのです。

漠然とした不具合感をおして、奥の席に。
私はなるべく鈍感になることにし、友人との会話を楽しむことにしましたが、もはや市原悦子的な目線で気になる様々な動き。


どうやらお母さんが厨房~カウンター内担当、お父さんがホール担当。
お二人とも夏をイメージしたであろうTシャツ、ジーパン姿。
おそらくこの店の南国スタイルにあわせて意識して着用しているのだと思われます。

お父さんが注文をとりに来てくれるのですが、その受け答えなど非常にご丁寧なのが、悲しいかなこのラフな異国ムードを演出したい空間にとって、少し違和感がある気がしてなりません。

料理に関しては、アジア、エスニックを意識したであろうメニュー。
ですが、意図と反して非常に日本的な和皿にきちんと盛りつけられたエビやチキン。味付けもダシがいきた繊細さで、ご夫婦の親切さが滲み出ている日本の家庭料理を思い起こしてしまうのです。


夜。サラリーマンやOLさんのグループが入れ替わり訪れ、適度ににぎやかになってきた店内。

OLさんグループのオーダーしたフローズンカクテルを作るため、ドキッとする程大きな音を出す機械で何度も何度も氷を砕くお父さん。
カラフルなカクテルを頼まれ、慣れない手つきでゆっくりとシェイカーをふるお父さん。
店内の音楽がきれて無音になり、焦ってCDをかえているお父さん。
そういうときに限って、すいませーんというオーダーが入って、一緒に焦るお母さん。
ものすごく静かにテーブルに皿やグラスを置き、何も言わずに定位置に戻るお父さん。

ご夫婦はおそらく、とてもいい方々なのだと思います。
無理している訳ではないんです。
ただ、アジアンリゾートスタイルという匂いが、微塵もないだけなのです。

命取り。
私は、自分の中に生まれた哀愁感を消し去るように、普段は頼まないであろう「チチ」という夏のリゾート風味満開のカクテルを頼みました。

チチ。
ウォッカに、ココナッツミルクとパイナップルジュースを入れ、シェイクした、南国ムードの定番カクテル。

暫くして、ココナッツ風の器にもられ、ハイビスカスとパイナップルが奇麗に飾ってあるチチが運ばれてきました。
このカクテルがお父さんの手によって目の前に静かに置かれた瞬間。

しまった。。。

このチチによって、その他全てのものとのギャップが現実化され、よりいっそう浮き彫りになってしまった気がして、私はこれをオーダーしたことを悔やみました。
ここが確実に恵比寿の路地裏であることを痛切に感じる、極めつけの一杯になってしまったのです。

お願い。なんとかこの夏、乗り切ってほしい。

リフレッシュのつもりが、逆に心配事を抱え込んだ夜。
ご夫婦を陰ながら応援しようと密かに誓ったのです。