闇に佇みて -31ページ目

懐妊


風のたより

語りべの物語のよう


過去の話に色をつけて

時が流れたことを
思い知らされる


語りべは

あまりにも
真実を語りすぎる


命が宿れば嬉しかろ


喜びたい


素直に
喜べない


目に映る想い出の
一部始終は


本当に遠い
過去に色褪せるままに


幸せそうな
母の顔であるなれば


ごめん


僕には


かける言葉が


ない


どうすれば…


電話口

とても懐かしい声

愛しさが込み上げる
しっとりとした声


病を知って

連絡を取ろうとしても
一方通行だったのに…


憂いのある声は

泣き出しそうな

心細そうな

苦しみめいて




『いなくなっても、会いに来てくれる?』


…て


いなくなったら
会えないのに


『会いに行くよ』


…としか

言えなかった



『…好きよ』


なんて言うから



『僕も好きだよ』


って

涙をこらえて

携帯を握りしめて…




『ばいばい』の言葉で
電話が切れた



短い電話だったけど

色んな思い出を語ったよ


昨日の事を話すように



…もっともっと
思い出を作ろうよ


年老いて

お茶でも飲みながら

思い出そうよ


まだまだまだまだ


まだまだまだまだ


先の話だよ



まだ
思い出には


…ならないで

繰り返し


同じような事を繰り返し

やっぱり
生きているんだな

考えてみれば
僕は

僕自身の姿や形に
捕らわれて生き続けて
いる

存在するのは
とても怖い

認識されて

比較されて

企まれて

愛されたり
憎まれたり



僕はこんなに
嫌な奴なのに

優しいと言ってくれる
人がいる

僕はこんなに
真剣なのに

真面目にやれと言う
人がいる

姿が見えるから
思い切れずに

人々の目の中で
応えようとする



きっと

だよね



でも存在している
限り

その方が

そこにいて
応えている僕の方が

人々の理解を受ける


そんな事が染み付いて

人の気持ちを考えながら

自分らしさに
操られながら

同じような事を

繰り返している


ふう。。