移民交渉は難航し続けた。
母的存在の卑弥呼と九州王朝側の方が圧倒的な強さがあった。
大陸から移民交渉をしているのはタカス(鷹の目)であった、彼らは日本のスメルには違いないが、国を統治するというよりは海外で駐在したり外八洲(海外)を常に監督するようなスメルであった。
そのため皇統は明確であるが内八洲(国内)では、母的存在の卑弥呼の従兄のような関係でありながら、九州王朝での実権は持っていなかった。
記憶では九州の玄関口は広大な芦原が繁っていた、そこで年の近い青年と出会った。
きっと17歳くらいの年令のように思う。
青年はタカスの息子で、私は卑弥呼の子として互いに意気投合し、いつしか逢引を繰り返すようになっていた。
九州から半島に移民入国を待つ人々の鬱憤が溜まり始めた頃、芦原の警戒も強くなっていたが、いつも馬で隼人の子が見張りをし、馬に掛ける麻は寝袋やレジャーシートのように使うことも出来ていた。
芦原に行き麻布潜り込み、大陸の話や色んな民族の話は面白く、時間を忘れるように二人で話をしていた。
日に日に沿岸部に船が集まり出し、入り江付近は緊迫した状態だったのにも関わらず。
その日は、隼人の子供と別に単独で芦原で彼に会いに行っていた。
一方母的存在の卑弥呼のところに、毎日タカスの父が懇願していた。
「卑弥呼、なぜ分かってくれない、彼らはこの土地に住みに来たのではない、入国に許可を出してくれれば、内陸の東に渡り皆が暮らせるところを探す」
「どこの王も拒んだらどうする?戦争になるぞ」
「だから、戦いが起きない場所に皆を先導する!卑弥呼の許可が下れば渡っていけるじゃないか」
「一民族であればまだ何とか出来るが、多国籍に多文化そして、それを率いた御主(タカス)自身が統制出来ていないのにも関わらず入国を認める訳には行かない!」
「それを何とか、もう停泊している舟も限界だ、戦は避けたい!」
「御主も外八洲の人間と変わらなくなってきたみたいだな、侵略や占領を繰り返し、其々浮き草のようになった民が、民族の生き方を無くして先導者に従って生きることが、どれほど難しいことか分かっているだろう。万が一受け入れ先があったとしても、この国に入って人々に危険を感じなくなった時に、自分たちが侵略され住むところを奪われたように同じことを繰り返すことだろう」
「いや、そんなことはさせない」
「本当に御主は、、外の。難民だけでなく半島に待つ、嘗ての大陸の王族や騎馬隊たちは一体なんなんだ!」
「彼らも今は追われた身、権力を振りかざすつもりがないから待ってくれているんだ!」
「御主の、その調子の良い話に、いつまで従い続けることが出来るか?だな」
「そう言わず何とか!」
タカスは、何度も入国を試みる。
卑弥呼は頑として受け付けまい。
そんな様子も、九州の長老たちは分かっていて。
難航した様子も
そして次なる展開も
その先の準備も、戦になる準備もしていた。
長老たちには、卑弥呼が頑なに何を怖れているのか?も分かっていたし。
この流れが今後どのように国を変えることになるか、薄々分かっていたかも知れない。
そうして混沌とした毎日の中、芦原で隠れて逢引をする若い二人が捕まってしまった!
相手はタカス側と言っても、タカスが率入れようとしている大陸側の兵士みたいな人間だ。
私が捕虜になってしまったばかりに、状況は一転し、停泊していた舟と大量の移民が動き始めてしまった。
そして圧倒的な力を持つ九州王朝も、下手に手を出すことも出来ず通行許可を出す形で、九州から内陸に次々人々が入国するようになった。
これには理由があり、私には「最後の後継者」と言う定めがあったからだ。
九州が突破出来ても、東の内陸にも土着王族が存在する。
私と言う人質は、ある意味入管パスのような役割りだった。系統は「黍」の姫、だからこそ内陸に点在する同じ王族も、とりあえずパスすることが出来る。
卑弥呼の後継者であり、黍の祈り子である。
その宿命は、多民族との交流と新天地を探す旅が始まったとも言える。
この後の旅が、鮮明に残る記憶で沢山のドラマがあった。
とりあえず、断片的な記憶をここにまとめておいて、鮮明な記憶は物語として伝えたい。
けれど物語として書く自信がないときは、このような形で箇条書きするかも知れない。