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「モダンタイムス」
伊坂幸太郎、著。 2008年
『魔王』の続編的側面を持った作品。
おおまかなコンセプトだけを決めて、週刊モーニング誌に連載されたという経緯が示すように、いささか行き当たりばったりな感が否めない。
『モダンタイムス』というタイトルに込められた寓意は理解出来るが、どうも…薄い。
薄いのですよね、何もかもが…。
この時期の伊坂さんの行き詰まり感が露わになった作品でもある。
都会的で洒脱な会話や、現代性を表現するセンスは健在。
あくまでも、“個”の問題として“事件”に対決してゆくという姿勢・スタンスも、実に伊坂さんらしい。
ただ、物足りない。
マンネリ…というよりも、どうも著者のモチベーションの低下を感じてしまう。
キャラクターの面白さと、設定の奇抜さ、あとはファッショナブルな雰囲気で読ませる小説。
テーマは解る。
実に、現代という時代の無気味さも現れている。
だが、散漫であるが故に希薄。
“社会派”ではないので、重苦しく問題を押し付けるような作品を書く人ではない。
だから、重いものを期待している訳ではないのです。
ただ、どうも、突き抜けた所がないなぁ…と。
面白い部分は多々あるのです。
主人公の奥さんが謎のエージェントみたいな感じなのに、結局は旦那への愛で行動していて、だけど、どうもその行動が普通じゃないとか。
主人公の友人・伊坂“好”太郎が女好きで軽薄で、内容の薄い作品を書いていて…とか。
暴力業(?)の男の奇妙な友情とか。
『魔王』のあの人とか。
人物はとても魅力的です。
でも、結局、中途半端な結末に終わってしまう。
カタルシス不在。
そこが、問題だ。
行き詰ってますね。
伊坂さん。
━そう感じる作品。
この後、伊坂幸太郎氏は新たなる方向性を思索し始める。
そういう意味では、第一期伊坂幸太郎の最後の作品群に含まれる作品です。
酷評しましたが、やはり好きな作家です。
酷評しようとも、読み続けてゆきます。
いつか、手放しで絶賛出来る作品を読ませてくれると信じて。