ぶたぶた日記 // 矢崎在美 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
ぶたぶた日記 (光文社文庫)/矢崎 存美
¥500
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 「ぶたぶた日記(ダイアリー)


 矢崎在美、著。 2004年。



 いつもの古本屋で、ふと目に止まった本。

「ぶたぶた日記」・・・、何の気なしに手に取って

裏表紙を見ました。



 ぶたのぬいぐるみが生命を持ったら!?

見かけはかわいいぬいぐるみだが、中身は知恵

も分別も人一倍ある中年男・山崎ぶたぶた。

義母(?)の代理でカルチャースクールのエッセイ

講座に通うことになったぶたぶたが、仲間の生徒

たちの人生に温かな波紋を広げてゆく・・・・・・。

 くすっと笑えて、静かな感動が残る・・・・・・ご存じ

超人気シリーズ新作が、書き下ろしで登場!

 (裏表紙より引用)



 多分、普段の私なら購入しない、けれど何故か

この日は野生の直感が「買え!」と・・・・・・。

まあ、少し読書に疲れていたので、軽いものが

読みたかったせいもありますが・・・、結局何か

読むのか・・・・・・。


 ところが、これが大当たり!

野生の直感恐るべし!

面白い!


 「超人気シリーズ」とあるから、私が知らなかった

だけで、世間では皆知っている作品なのか?

今更、「これ面白いです」も無いのか?


 エッセー講座の参加者は六人。

その内の一人が(?)ぶたのぬいぐるみ。

名前は「山崎ぶたぶた」。


 温厚で優しく、思慮深い。

声の渋いナイスミドルの会社員。

妻と娘がいる実に幸せそうな家庭環境。


 何故、ぶたのぬいぐるみなのか、説明は一切ない。

この、ぶたぶた氏が、エッセー講座の仲間の悩みなど

の相談にのり、解決して行くという短編集です。


 初対面の人たちは、最初驚きためらいを感じるの

ですが、徐々にぶたぶたさんの人柄(?)に惹かれ、

彼を信頼して心を開いてゆきます。


 最初の短編では、新米講師を伴ってぶたぶたの

行きつけの店で一杯。

店主の親父さんは「おっ、ぶたぶたさん、久しぶりー!」

皆が場所を詰めてくれます。


 ぶたぶたさんは、周囲に認知されていて、なかなか

人気者のようです。


 「先生、ビールでいいですか?」

「は、何でも・・・・・・」

「じゃあ、生二つと、枝豆、あと焼きとんの盛り合わせを」


 で、講師の講義はどうだったかという質問に、

「そうですねえ~・・・・・・わたしはこういう講義は初めて

なので何とも言えませんが、わかりやすかったと思い

ましたよ」

などと答える訳ですが、これがぬいぐるみの発言だと

何となく可笑しくって・・・・・・。


 引きこもり寸前の少女の話なども、心温まる内容で

ぶたぶたさんの平凡だけど優しい言葉が沁みます。

主人公がぶたのぬいぐるみと言うだけで、物語が

違った色合いを帯びるのですねえ。


 これは、ギャグ小説ではありません。

ハートウォーミングなファンタジーです。

いやはや、予想外の面白さでした。


 良いですよ、この本。

昨日、続きを購入してご機嫌な私です。