邪神帝国 // 朝松建 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!

「邪神帝国」



朝松建、著。 1999年。



 ホラーやSFなどを読んでいると、

その原点とも言うべきいくつかの

作品や、神話・民話の類が気になります。


 その一つが、「クトゥルー神話体系」です。

これは、神話無き国・アメリカで生みだされた

邪神神話です。


 産みの親は、H.P.ラヴクラフト。

彼が、1923年から商業誌に掲載を始めた、

ホラー作品がこれらの邪神の体系を生み出す

元となりました。


 彼の死後も、他の作家たちがこの邪神たちの

物語を綴ることによって、「クトゥルー神話体系」

と呼ばれる作品群が形成されて行きました。


 私は、いわゆるコアなファンでは無いので、

ラヴクラフトやダレスの本を何冊か読んだだけ

ですが、その後も次々とこの神話体系に

属する作品を発表する作家が後を絶たず、

現在では全体像を把握することさえ難しい

膨大な神話体系が構築されているようです。


 日本でも、栗本薫さんや、菊池秀行さんなど

新たなる「クトゥルー神話」を生み出す試みが

数多くなされています。


 私は見ていませんが、ウルトラマン・ティガも

クトゥルーの邪神と戦ったようですね。

現在、「クトゥルー」がどれほど知名度を得ている

のか分かりませんが、どの世界にもコアなファンが

いるのは確かなようです。


 この「邪神帝国」は、日本でのクトゥルー研究者

として有名な、朝松建さんによる、新たな「クトゥルー」

作品の短編集です。



 「伍長の自画像」


  「私」がパブで出会った画家志望の青年・平田は

 前世で「伍長」と呼ばれていたと語る。

 オカルトに傾倒する「伍長」は魔術で何者かを

 召喚しようとするが、その最中に

 「天ハワタシヲ最大ノ人類ノ解放者二定メタ」

 と口走る。

 彼が去った部屋には「伍長」の自画像が残された。

 そこに描かれていた人物は、平田ではなく、

 オーストリア生まれの画家志望の青年だった。

 その人物は後にドイツの首相になる・・・。


 他に、「ヨス=トラゴンの仮面」・「狂気大陸」

「1889年4月20日」・「夜の子の宴」・「ギガントマキア

1945」・「怒りの日」を収録。


 全ての作品がナチスがらみで、なかなか面白い

短編集に仕上がっています。


 ただ、残念なことに現在では、入手困難な本の

ようです。

まぁ、コアなファンしか読まない作品群なのは

確かです。


 私は、コアなファンでは無いですが、

単なるモノ好きではあります・・・。