違法DL罰則化から1年 回復しない音楽売り上げが示すもの
ネットで反響を呼んだのは、9月29日にNHKが報じた「違法ダウンロード刑事罰適用1年 売り上げ回復せず」というニュース。だが、受け手の反応に「驚き」はほとんどなかった。「知ってた。みんな1年前から知ってた」(ツイッター)
少し考えれば分かることだけど、ある曲にお金を出さず違法ダウンロードするということは、その曲はお金を出してまで聴きたいと思っていないということ。
例えば私は自分が好きな平井堅やドリカム、小柳ゆきのCDは必ずジャケット買いをしている。
音楽データだけではなくジャケットにも価値を見出しているので、最近多いダウンロード販売しか無い曲は「価格が高くても良いからジャケット販売してくれないかな~」と思ったりする。
つまり、自分が欲しい曲にならお金を払うことは渋らない。
違法ダウンロードするということはそこまでの価値を見いだせないということだろう。
そもそもネットでは、売り上げ減の原因を違法ダウンロードに求める音楽業界の主張に懐疑的な意見が多かった。昨年の著作権法改正をめぐる議論では、日本レコード協会が「違法ファイルなどの推定ダウンロード数は43.6億ファイルであり、これを正規音楽配信の販売価格に換算すると6683億円、正規音楽配信の2010年間売り上げ860億円のおよそ8倍に相当」という推計を示し、法改正を後押しした。しかし、「期待できる市場規模とはかけ離れている」「釣り逃した魚を計算する漁協」(はてなブックマーク)と、逸失利益の計算としてあまりに過大だと揶揄(やゆ)する声もみられたほどだ。
何よりも間違っているのは違法ダウンロードされた曲数をそのまま販売価格計算していること。
違法ダウンロードされている曲というのは「無料だからこそダウンロードする」という曲が大半なので、それがダウンロードできなければCDも買わないだけだろう。
そんな違法ダウンロードの曲数をそのまま売り上げに転換できると考えていたとすると浅はかすぎるし、事実違法ダウンロードが減っても売り上げには還元されなかった。
売り上げが漸減傾向にあるとはいえ、比較的高額な音楽CDが今でもよく売れ続けている日本の音楽市場は、世界的にも特異だという。日本レコード協会の統計によれば、昨年の音楽CDやDVDなど音盤の売上額は、音楽市場の売り上げ全体の約85%を占める。音楽ビジネスの主流が音盤販売から有料配信に移りつつある米国など諸外国とはかなり異なり、ある意味では世界の潮流から取り残されているとも言える。
結局これなのだろう。
PCが一般化し、携帯音楽プレイヤーの高性能化により大量の曲を持ち運んで聴くことができるようになった現代で、CDという媒体はニーズに合わない。
大量の曲を持ち運んで聴くのが前提なのだから、安価多売のビジネス形態でないと上手くいくわけがない。
それなのにCDの値段はCD全盛期の頃と変わらないのでは売り上げが落ちるのは当たり前である。
「音楽ビジネスは転換期にあり、他国では同じネット配信でも、1曲いくらの販売から定額聴き放題のサービスへと移行している。音楽への支出は固定費ではないし、ヒットチャート入りの曲は必ず聴かないと、という時代でもない。利便性を高めないと、ユーザーは離れていく」
確かに現在はオリコンの価値が完全に下がっている。
要因はボカロ等を始めネットから多種多様な曲が聴くことができることになったことや、数年前のK-POPブームのような実際のニーズと違う曲のゴリ押しなどだろう。
オリコン等のヒットチャートが全てではなくなったので「ヒットチャートをチェックする」ということも少なくなった。
曲が溢れているので、「自分が好きな曲を好きなだけ聴く」ということができる定額聴き放題が理にかなっているだろう。
違法に曲をダウンロードするにも品質等のチェックの労力を考えれば、定額で品質の良い曲をダウンロードし放題というのは必ずニーズがあると思われる。