聴覚や嗅覚など、視覚の代用とする耳や鼻などの既存の知覚器官を「第二の目」とするのなら、それらとは全く違う新たな知覚器官は「第三の目」となる。
いわば「内なる目」のことで、シヴァの額の目や仏陀の白毫、ヨーガのアージュニャーチャクラがこれに当るとされている。中二病的には邪気眼となるだろう。
さてこの第三の目だが、脳に存在する小さな内分泌器「松果体」に関連があるのではとかねてから推測されていた。
昔から松果体は、霊的体験に重要な役割を果たしていると考えられていて、幻視、透視、啓示を見ることができると言われている第三の目の神秘的概念とよく結びつけられていたからだ。
松果体に関する過去の見解
紀元2世紀のローマの外科医で哲学者のガレノスは、松果体は"霊的プネウマ"の流れを調整する弁のような役目を担っているのではないかと言っている。
それから1500年後には、フランスの哲学者、ルネ・デカルトも、有名な心身二元論の中で、松果体は"魂の座"であると主張した。
この数世紀の間に、西洋の秘教は、松果体をヒンドゥー教のアジュナ・チャクラ、そして第三の目の論理と融合させ、物理世界と精神世界の橋渡しとしての概念を推し進めてきた。
しかし、松果体の能力についてのこうした伝説は、科学で実証できるのだろうか?
幻覚作用の専門家であるリック・ストラスマン博士は、本当に松果体の作用が霊的体験の引き金になりえるのか、と疑問を投げかける。
松果体が分泌する睡眠調整ホルモンのメラトニンのせいなのか、あるいは、強力な幻覚作用があるDMT(ジメチルトリプタミン)のせいなのか、それともこの両方のせいなのかということだ。
松果体の科学研究
ブラジルの研究グループは、16人の霊媒師(MGグループ)と16人の霊媒師ではない人(CGグループ)の松果体を調べ、分泌されるメラトニンなどのホルモン量を比較してみた。 論文「"Seat of the Soul"」の中で、彼らはそれぞれのグループの松果体の大きさとホルモンの分泌量を比較した実験結果を報告した。
統合失調症などで人格分離体験をした人の松果体は、通常よりも小さく、メラトニンの分泌も低いことに注目したという。
“Seat of the soul”? The structure and function of the pineal gland in women with alleged spirit possession
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/brb3.1693
この実験は、2018年の1月から2019年の4月までの間、ブラジルのカンポグランデで行われた。心霊主義団体マト・グロッソ・ド・スルと相談の上、選ばれた霊媒師を被験者として実験を進めた。霊媒師グループも、霊媒師ではないグループも全員女性だ。
霊媒師も非霊媒師も松果体に違いがないことが判明
プレスクリーニング試験では、MGグループ(霊媒師)のほうが、CGグループ(非霊媒師)よりも多くの異常な体験をしていることがわかったが、精神衛生状態には大きな違いはなかった。
霊的体験を多くする霊媒師たちの松果体は、一般の人の松果体となにか違いがあるのだろうか? 結果的には、大きな違いはないことがわかった。
現在の研究において、霊媒師とそうでない人の松果体の大きさ、夜間の尿中のaMT6sのレベル(6-スルファトキシメラトニンは、メラトニンのおもな代謝産物なので、朝の尿中のレベルは前夜のメラトニン生成と相関している)、自己申告の主観的睡眠の質(PSQI)に違いは見られなかった。
つまり、異様な体験をよくすると考えられている霊媒師の松果体は、構造的、機能的にごく普通で、特に際立った点はなかった。
この結果は、統合失調症など精神疾患をもつ人の特徴を説明する文献で使われるデータとはかなり対照的だ。統合失調症の患者はだいたい、健康な人に比べて、松果体の大きさが小さく、メラトニンの分泌も少なく、よく眠れないことが多い
ただ、上記で研究者たちが指摘しているように、霊的な体験をした人たちが、解離体験をしたグループと同じような、松果体やホルモン分泌の変化がないというのは、奇妙に思えることに注目すべきだろう。
霊媒師の霊的体験は、精神疾患の類ではない
こうした結果から、松果体と霊的な体験との関係を推測する今後の研究は、メラトニンの生成以外のまだ探究されていない分野をベースに行われるべきだということがわかる。
つまり、さらに実験を重ねれば、幻覚誘発性のあるトリプタミンの分泌や、磁気受容体を調べることができるはずだ。
霊媒師は特殊なサイズの松果体を持っているわけでもなければ、メラトニンが異常に分泌されているわけでもない。
だから、松果体の大きさやメラトニンの分泌量を算出するだけでは、噂の域でしかない霊的体験における松果体の役割を明確にするには十分ではないと、研究者は警告する。
ただ一つ明らかになったことは、この実験結果は霊媒師の能力は精神疾患の類はないことを裏付けているという。
現在の研究が示しているのは、文化的な事情(この場合は霊媒師)で、ある種の精神疾患に似た症状をもつ人でも、ごく普通の分泌や構造的特徴をもっていて、一般の精神障害をもつ人に見られる特徴とはかなり異なる。
しかし、メラトニンの生成が増えることが、霊媒的体験をする体質の顕著な特徴とは思えない。さらに、霊媒師は病的な解離症状のある患者とは違って、感情的調整がきちんとでき、ストレスを早く回復できる反応パターンをそなえている。
だから、この研究から言えるのは、霊媒師の能力は決して病的な解離現象ではないということだ。霊的な体験は疾患ではないということと、精神疾患による解離障害との診断の違いを、きちんと定義することが重要だ。
示された証拠からは、文化的にちゃんとバランスのとれた霊媒師は、たいてい精神的、肉体的に健全であることがはっきりわかるからだ。
こうした状況を正しく区別することで、霊媒師におかしな汚名をきせたり、無用な扱いすることを避けることができる
★マジな話、俺も第三の目を持っているのじゃ!
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