森の中に入って澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んだら、木々の恵みを実感することだろう。木は二酸化炭素を吸収し、空気から汚染物質を除去しつつ新鮮な酸素を吐き出してくれる。
これまで、森林の空気清浄効果を室内に取り込むのに観葉植物が最適であるとされており、新たな研究によると、少しくらいの観葉植物ではまったく効果が期待できないという。
室内に漂う化学物質を本気で取り除こうと思ったら、部屋を数百本を置かないと効果が得られないという。もうそれはジャングルだ。
植物に有害な化学物質を除去する力は確かにある
植物の空気清浄能力を調べた研究はいくつもある。
それらが主に対象としているのは、塗料や家具など、室内のさまざまな物質から発生する「揮発性有機化合物(VOC)」だ。VOCは健康被害を引き起こすことがあり、たとえばシックハウス症候群の原因として知られるホルムアルデヒドなどもこれに含まれる。
そうした先行研究は、植物でVOCを取り除くことができるのか確かめる実験を行い、かなり有望な結果が得られている。確かに植物には有害な化学物質を空気から除去してくれるパワーがあるということだ。
ただし植物の量が問題
ところが『Journal of Exposure Science and Environmental Epidemiology』(11月6日付)に論文を掲載したアメリカ・ドレクセル大学の研究グループによると、これらの研究には大きな問題があるという。
それは、これまでの植物の空気清浄力を調べた実験が、密閉された部屋で数時間から数日かけて行われていたということだ。
そのような状況は一般家庭の環境とはまるで違う。普通の家では、新しい空気が常に循環しているし、部屋を満たす空気の量だって実験のそれとは比べ物にならないくらい多い。ついでに室内を漂うVOCだって次々に排出されている。
そうした状況では、ちょっとやそっと植物を置いたくらいでは、空気がキレイになったとしてもたかが知れているという。
空気清浄効果を得るために必要な観葉植物の量は?
では、室内にどれくらい植物を置けば、意味があるくらい空気をキレイにすることができるのだろうか? 研究グループはそれを実験した12本の先行研究からおおよそのところを調べてみた。
結果は研究によってバラ付きがあるものの、それなりの空気清浄効果を得るなら1平方メートルに10~100本の植物を用意しなければならないようだった。
平均として見るならば、植物1本で1時間あたりに空気をキレイにできる範囲は0.023立方メートルだった。
参考までに言っておくと、一般的な空気清浄機の能力なら100立法メートル/時間である。つまり、それに匹敵する効果を植物から得ようとするならば、数百本は部屋に置かなければならないということだ。ジャングルみたいにしなきゃダメということだ。
だが観葉植物は他に効果がある
少々置いたくらいじゃ観葉植物に空気清浄効果は期待できない。キレイな空気を部屋に入れて、化学物質を取り除きたいというのなら、窓を開けるのが一番手っ取り早い。
だが、だからといって観葉植物がまったく無意味というわけではない。オフィスに置けば集中力を高め、効率的に仕事をこなせたり、痛みを和らげたり、うつや不安障害の症状緩和に対する効果が確認されているからだ。
さらに植物の緑は目にもやさしく、部屋をおしゃれに演出する。森林のような澄んだ空気は楽しめないかもしれないが、それだけで十分飾る価値があるというものだ。
References:Study: Actually, potted plants don't improve indoor air quality/
☆部屋を植物園状態にすれば、俺の精神も安定するかもしれん!