瀬尾まいこ「おしまいのデート」 | 虹がでたなら

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瀬尾まいこ「おしまいのデート」

温かく切ない、5つのデートを描いた短編集。

1話目。両親の離婚後、母親に引き取られた彗子が、父方の祖父と一か月に一度会うデート。

母が再婚することになり、そのデートもおしまいに…。

2話目。親がいなくてちょっとした悪さを繰り返す高校生男子を、玉子丼を食べに連れて行ってくれる、「上じい」と呼ばれる教師。

自分が就職してからは、給料日の度に、退職した上じいに奢るようになるのだが…。

3話目は高校生の男子2人のデート。

それほど仲が良いわけでもない同級生に誘われ、もしや?…とドギマギしながら出かけていくと、誘ってくれた理由があり、男同士、楽しい1日を過ごすのだが…。

4話目は、バツイチのOLが公園で捨て犬を見つけ、毎日仕事帰りに餌をやりに行くと、同じように餌を与えている学生の男子と出会い、親しくなる。

犬は亡くなってしまうのだが…。

5話目は、保育士の女性と、父子家庭の園児の父親が親しくなり、園児ともなんとか距離を縮めたい…と思っていたところ、園児が、3人でデートをしよう…と提案をしてくる物語。


どの物語も、「おしまい」があり、ウルウルとしてしまう。

特に上じいの物語は悲しかった。

でも清々しい寂しさ。

二人が、心を通わせながら毎月食べた玉子丼は、どれだけ美味しかったのだろう…と、食べたくなる。

1話目のおじいちゃんとのデートも切なかった。

おじいちゃんが飄々としたキャラクターで癒やされた。

「生きてればどんなことにも次はある」…という言葉が胸に沁みました…。


私も祖父とのデートを思い出した。

小学生の頃から、電車で3駅離れた祖父母の住む村まで、エレクトーンを習いに行っていました。

毎週日曜日、電車に乗っていくと、駅で祖父が待っていて、車で先生のところまで送ってくれました。

そしてレッスンが終わると迎えに来てくれて、祖父母の家へ。

村にただ1つのよろずやみたいなお店をしていた祖父母のところで、お店で売っている牛乳パンを食べたり、祖父が作ってくれたものを食べたり。

祖父が炒めた蜂の子を食べたときもあった!!

バナナは体にいいから…と、毎回勧められた。

で、お小遣いをもらって帰る…。

高校生になって、祖父母の家の裏に家を建てて引っ越したから、車でのデートはなくなってしまったけれど。


祖父母の家には池があって、そこに鯉を放っていて、お店で注文が入ると祖父が網で捕らえてきてさばいていました。

カッコ良かったな。


祖父は私の目の前で心臓の発作で亡くなったのだけれど、息を引き取る直前、「だんだん暗くなっていく…」と言ったのが忘れられません。

死ぬ瞬間って、そうなんだ…と…。


…と、この本を読んで、大好きな祖父のことをあれこれ思い出して、ちょっと淋しくなってしまいましたが、生きていれば、どんなことにも次がある!