東直子「とりつくしま」
これは、最近読んだ本の中で一番感動しました…。
短編集ですが、どの物語にもホロリ…。
この世に未練を残して死んでしまった人に、「とりつくしま係」が問いかける。
「とりつくしま」…この世にあるなにかのモノにとりつくことができる。
もう一度、この世を体験することができる。
思いついたモノを言ってごらんなさい…。
母は息子のロージンバッグに、妻は夫が使うマグカップに、息子はママとよく行っていた公園のジャングルジムに、娘は母の補聴器に、夫は妻の日記に…。
大切な人を見守っていたい。
もう一度姿を見たい。
そばにいたい。
大切な人が見ているものを一緒に見ていきたい。
幸せになるのを見届けたい。
それぞれの、切実な思いが伝わってきて、胸が締め付けられる。
あとがきによると、東さんはラストシーンの一言を思いついてから書き始めたとのこと。
それを読んで、改めて一つ一つの最後の一言を読み返してみると、確かに、その人の思いの全てがつまっていて、またまたウルウル…。
そもそも亡くなっている人の物語なので、やるせなさと悲しさ、切なさがありながらも、それぞれの大切な人への思いに、温かく優しい気持ちになりました。
最後の一言に、光が射しているようでした…。
これを読んだ人はきっと、自分のとりつくしまは何だろう…と考えるに違いない。
私は…何だろう?