桐野夏生「グロテスク」 | 虹がでたなら

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桐野夏生「グロテスク」
ハーフで、悪魔的な美しさをもつユリコと、ごく平凡な姉のわたし。
わたしはユリコを憎み、避けるように生きている。
そして、わたしと同じ名門Q女子高に通う、優等生のミツルと、必死に周りに溶け込もうとしている和恵。
4人とその周りの女子高生、関わる男性たちのヒリヒリする関係…。
やがて、美しかったユリコ、ユリコを意識している和恵は、年を取るにつれてグロテスクな容貌となり娼婦として破滅へと向かう…。

登場人物の、誰も好きになれない。
共感もできない。
読んでいても嫌な気分になることの多い小説。
しかも上下巻あるからなかなか終わらない。

それでも投げ出すことなく読み終えたのは、構成の巧みさゆえ。
「わたし」の視点からの語りだけではなく、ユリコの手記、和恵の日記、殺人を犯したチャンの上申書、それぞれの立場からの物語が描かれ、それによって登場人物に厚みが加わる。
とは言え、誰も幸せになることはなく、救いのない物語だったな…。