町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」

母、義父、義理の弟に冷たくされながら育ち、義父が病気になってからは一人で介護を担い、人生を搾取されて生きてきた貴瑚。
学生時代の友人と、その同僚アンさんに救い出され、かつて祖母が暮らしていた大分の家で暮らし始める。
そこで、母に虐待され、「ムシ」と呼ばれる少年と出会い絆を育んでいく。
52ヘルツのクジラは、他のクジラには聞き取れない高い周波数で鳴く世界で1頭だけのクジラ。
何も届かず、何も届けられないため、この世で1番孤独だと言われている。
その鳴き声に癒される2人…。
周りから見て、それは虐待ではないか…と思っても、その子どもにとってはたった一人の母親であり、いくら冷たくされてもなお、愛されたい…と願ってしまう。
そんな切ない思いをしてきた2人が出会い、新しい生き方を見つけていく過程に、希望を感じます。
他にも学生時代の友人、アンさん、島で出会った男性…、人との出会いによって救われ、辛い現実に何度も傷つきながらも、その都度誰かにまた救われる。
52ヘルツのクジラであったとしても、きっと気づいてくれる人がいる…と、優しい気持ちになれる物語です。
映画化される、とのことでキャストが楽しみです。
貴湖は杉咲花さんらしい。
重要な人物で、難しい役どころ…、アンさんを誰が演じるのかが楽しみです。