国立新美術館で開催されています。
光あふれる優しい作品の数々。
穏やかな気持ちになれます。
入ってすぐ。
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「うなぎを獲る人々」。

いきなり涼しい世界に。
絵の奥の方から、風が吹いてくるようです。
そして、木登りしたり、お母さんに甘えている?子どもたちの声や水の音が聞こえてきそうです。
マネ。
「鉄道」という作品。

女の子のつるんとした背中がかわいいです。
この女の子、汽車を眺めているかと思われますが、どんな表情をしているのでしょう??
私が幼稚園や小学校の先生だったら、子どもたちに想像させて、描かせてみたいです。
向こう側から見たこの女の子。
同じくマネ。
「オペラ座の仮面舞踏会」。

思えば、このシルクハットというのも不思議な物体です。
なぜこのような形の帽子ができたのか。
ドガの描く世界は、絵に動きがあり、表情が生き生きとしています。

左「障害競馬ー落馬した騎手」。
馬に踏まれちゃいそうです。
逃げて!と声をかけたくなります。
右「舞台裏の踊り子」。
いい寄る男性に、つれない踊り子。
プライドの高さを感じる横顔です。
ギュスターブ・カイユボット。
「スキフ(一人乗りカヌー)」。

水の動きが見えるようです。
女の子の麦わら帽子が、リボンが付いていてとてもかわいいのです。
こんなカジュアルな感じで、のんびりとカヌーを楽しんでいたのですね。
静かな森の中に、水の涼やかな音が響いているようです。
点描の世界。
子どもの頃、卵の殻に色をつけて粉々にしたものを貼っていった絵を思い出します。

左 ポール・シニャックの「ブイ」。
右 ジョルジュ・スーラの「ノルマンディのポール=アン=ベッサンの海岸」。
本当に細かいです。
どれだけ忍耐強いのか!?…と思います。
隣り合った色は異なるのに、全体として眺めると美しい調和がとれている…。
色の不思議。
セザンヌ。
左「川辺」。
右「赤いチョッキの少年」。

セザンヌの絵は、ザクザクッと描かれているようで、でも陰影が美しく、独特の世界です。
でもなんだか、セザンヌの絵は、静か。
この男の子も、なんか人の気配がしないというか…映画トワイライトに出てくる吸血仲間のような、冷気を漂わせています。
(あくまで私の勝手なイメージ。)
そして不思議なのが、メアリー・カセットの描く子どもたち。
後ろで見ている女性たちが「かわいい!」…と言っていたけど、私には、単純にかわいいとは思えなかったですよ。

左「浜辺で遊ぶ子どもたち」。
二人でいるけど、背中を向けて、自分の世界にひたる。
お互い独り言をいっている感じ。
楽しい、というより、妄想の世界??
右の「麦わら帽子の子ども」。
モデルを頼まれたけど…、「疲れちゃった」みたいな、トイレに行きたいみたいな、困った表情をしています。
そして極め付けがこの「青いひじ掛け椅子の少女」。

お嬢様、ご機嫌ななめですか?
退屈ですか?
…というような表情です。
どれも、子どもたちの素直な、ありのままの表情…と考えると、先日、足利美術館で見た肖像画の無理やり?おすまし顔より自然でいいですが…。
モネの作品は、光あふれる躍動感のある絵でした。

左「ヴェトゥイユの画家の庭」。
夏!眩しい!暑い!
蝉の声が聞こえてきそうです。
右「日傘の女性、モネ夫人と息子」。
奥さんと息子さんを描いたこの作品が、私は一番気に入りました。
風を感じる絵なのですが、上の方は左から吹いていて、下の方は右から吹いているようなのです。
この二人を中心に空気がうずまいているような。
妙。
そして二人の表情が不思議。
おまけで描いたような目が、漫画みたいなのですよ。
表情が読み取れない。
家族なのに?

そしたらです。
びっくり。
ルノワールが、この親子を描いていました。
「モネ夫人とその息子」。

こちらでは、こんなにも生き生きした表情をしています。
良かった…、と、なぜか安心。
そして最後はゴッホです。
「薔薇」。

白く渦巻く背景と薔薇の花弁。
うねうねとした世界に吸い込まれそうです。
背景の緑も、薔薇の白も、ゴッホの絵の中では静かな印象ですが、でもやはりただならぬ力がみなぎっています。
そしてやはりものすごい目力を発する自画像。

すべて見透かされそうな。
自分のことも見透かしてしまったのでしょうか。
見透かせなくて見つめすぎたのでしょうか。
美しい絵の数々に、爽やかな気持ちになった展覧会でした。
そして爽やかすぎるこの会場。
床のところどころに穴があいていて、そこから冷風が出ているのですが、絵に夢中になりながら移動して、うっかりその上に立ってしまうと、吹きだす冷気に驚きますよ!