毎回のことですが、大抵7話ぐらいになるともうどうしてもどうしても何か書きたくなってくるのです。なにしろ多くが7話あたりが転換点になるからなのです。

とは言え、『My Stand-in』は転換点が非常に多い。これは同じ脚本家による『Bad Buddy』にも通じるところがあるなあ。

『Bad Buddy』で言えば、5話の屋上キス。7話からは彼らは2年生になり「先に恋に落ちたほうが負け」ゲームの開始でした。

 

7話の前に、最初の転換点である5話のことを。

『My Stand-in』5話では、同じ時刻に事故のために昏睡状態になっていた別の「Joe」の体に主人公「Joe」の魂が入り、新たな人生を始めたのだが・・・という大きな転換回でした。新たな人生の筈だけれど、生活のために結局は現在の母親と縁のあった映画制作会社のWutと出会い、彼を頼ってまた同じ映画制作の現場で仕事をすることになるのですが・・・。

ところで「入れ替わりもの」ドラマは幾つもあります。

ここでちょっとGMMTVのJimmySea初主演となった『ViceVersa』に話が飛びます。

Jimmy演じる俳優とSea演じる映画のカラリストを目指す青年が、ふたりともここと似ている別次元の世界に飛び、そこで生きるシナリオライターを目指す青年と映画制作会社の息子の体にとそれぞれが入れ替わってしまう物語でした。

私はこのドラマが好きでしたし、いいところをいっぱい挙げることができる。

ただひとつ。めちゃくちゃ残念なのは「入れ替わり」についての演出は、これで本当に良かったのか?と思う点です。

JimmyとSeaが別次元で入れ替わったのは、Nanon演じる青年とOhm演じる青年でした。それは演出としてちょいちょい「鏡に映った自分ではない男の姿」として挿入されるのは『My Stand-in』と一緒です。これがなぜNanonとOhmが演じているのかと言えば、多分、『Bad Buddy』終わってまもなく始まったのがこの『ViceVersa』だったのですが、『Bad Buddy』からのおむなの人気を引っ張る形での起用だったのでは、と思うのですよ。でも私はそれが全体のバランスとしてあまりよくなかったのでは・・・?とずっと思っているのです。どう頑張ったって新人で初主演のJimmySeaに比べて、ベテランで『Bad Buddy』の大きな余韻を引きずるOhmNanonの存在感はデカすぎたのです。

 

『My Stand-in』では、Joeの魂が入ったかつてモデルをしていたJoeを演じるのは Winner Tanatat Kunaneksinという、多分まだそれほどは知名度のない俳優のようです。 それがこの作品で重要な効果を出していると思います。

イケメンなんですよこの人も。でもPoomとはまったく違う感じなのね。濃い眉、くっきりな目に厚めの唇にがっしりとした歯を見せて笑う、全体に濃いかんじのPoom演じるJoeに比べて、Winner演じるJoeの顔はおっとりとしてどこかおとなしめで薄い感じの造形に作っている。

このJoe(Winner)の顔が本当にいいタイミングでJoe(Poom)と差し替えられて、いくらセリフの中で登場人物たちが「何故かJoeを思い出す」と言っても、その姿はJoe(Winner)であり決してJoe(Poom)ではない、ということを自然に思い起こさせる。そして視聴者に対して、Joe(Winner)から受ける印象がJoe(Poom)よりも少し劣っているように感じさせる仕掛けになってるのでは、と思うのです。

これは入れ替わりものではとても大事なポイントだと思う。特にそれが回が進んでくれば来るほどそう感じるのではないかと思う。

 

 

その複雑さが現れたのが、この7話!(やっと7話の話に!)

5話以降、「My Stand-in」というタイトルの秀逸さにジワることになっています。

何故なら、Joeはスタントマンであり有名俳優Tongの代役を演じていました。

Mingは最初、片思いするTongの後ろ姿をJoeに重ねて、Joeを求めます。

Mingの心はTongに揺れながらもJoeへの想いも募らせた矢先、Joeを失ってしまいます。

そしてJoe(Winner)の中にJoe(Poom)の面影を見出したMingは、Joe(Poom)の代役としてJoe(Winner)を求めるのです。

新しい姿かたちで生まれ変わったJoeは、今度は自分自身の代役を演じなければならない。仕事として作品の代役を演じることはできても、誰かの愛する人の代役だけはもう絶対にやりたくない、と思っているのに。このあたりのJoeの苦悩は、「外側の姿がJoe(Winner)」というのがいかにうまく演出されているかで伝わるものが変わってくると思うのです。

そこが人選と演出含め、すごいなーと思うわけですよ。

 

 

 

さて第7話は、エンドクレジットに載っていたYEWの「Flaw」がかかりました!

めっちゃ好きな曲です。

これがかかるシーンがまたどえらいいいシーンでしたよね。私はYEWのギターが流れた瞬間から既に涙腺決壊しましたけれど。

Joeはかつて恋した相手であり人生を破壊したひとでもあるMingに、今は「金で買われた」状態です。

そして今、かつてJoeの後ろ姿にTongへの渇望を重ねてJoeを抱いたMingに、今度はJoeを求めるMingに外側がJoe(Winner)のJoeは後ろから抱かれようとしている。

しかし途中でMingは、それが寂しさを埋める手段でも欲望を埋める手段でもないと気付いてしまうのです。

 

 

そこにこの曲のアレンジバージョンがバーンッ!ですよ!

作中ではサビ部分がまるっと使われてましたね。

みんなー、泣きながら一緒に聴きましょう!


「この2年間、生きながらにして殺されているように感じている」とMingは占い師のところで告白しています。その苦しさがこの7話のこのシーンで表現されていると思います。

 

それでもMingは、まだ出会ったばかりであり姿かたちはJoe(Winner)なのに、富豪の長男であり現在は芸能界でキャリアを積んでいるMingに対してなにひとつ物怖じもせず、そしてふとしたことに思いやりや優しさを見せるこの男の中に、何度も何度もJoe(Poom)を見つけてしまうのです。

 

Mingはずっと愛にしか生きていない人です。

Tongの気持ちがMingの妹にあることを知り、その現実から逃げるように海外へ留学し、今は芸能界に身を置きながら消えたJoeの帰りを待っています。7話中盤以降では、彼の周囲の人々が(Joeは勿論、多分Tongでさえも)映画制作のために集中して動いていようとも、彼だけは自分の愛によって感情が生まれ、それを優先してすべての行動を選んでいます。

Joeは、Joe(Winner)の母親のため、共に映画を作るチームのため、そしてプロのスタントマンとして生きている人ですが、将来、このMingと共に生きていけるのだろうか・・・と感じずにはいられないシーンがこの7話にはいくつも出てきます。そのたびにMingの痛さについて私まで胸が痛くなるわ。

 

ちなみにMingが激しい嫉妬でJoeに迫り、そんなMingに振り回されて怒るJoeのシーン。

 

ここでもYEWが流れます。「Just」という曲です。

さあ、みんなー。この曲を聞いてまた一緒に泣きませう。

そしてMingとTongのシーンに映っていくのですが、ここのふたりの会話で、Joeが消えたことをきっかけにMingの心はTongから離れたのではないかと思わされます。

その前に「MingさんはTongさんの映画に出演するときだけ笑顔を見せる」というセリフがスタッフから語られ、それを聞いたJoeはうんざりした気分になるというシーンがありましたが、実はMingの気持ちはもうTongから離れつつあったのではないでしょうか。

そしてそれが決定的になるのが7話ラストのシーン。

Mingはもう、これまで以上に自分の立場や社会的地位、映画制作にかける人々の気持ちなどからまったく剥離していて、ただ自分の愛しか見つめていません。そして彼はその自らの愛の起源に気が付いてしまったのです。

一瞬で魅入られたあの背中。

Tongのものではなく、最初からJoeのものだったのだと。

Tongの代役だと自ら罵った、Joeのものだったと。

 

 

ここで流れるのがエンディング曲でもあるNineくんが歌う曲です。

切ない・・・。

 

 

ここからMingは真実を知っていくのか。

それよりもTongが何を考えているのか怖い。

Tongはもともと、俳優としてこれから生きていくよりも富豪の娘の婿として、ゆくゆくはその家を牛耳っていくことを目指しているのじゃないかしら。そのために邪魔なMingを排除しようとしていきそう・・・。

Mingにとってはまさに大きな転換点となった7話。

物語の枝はあちこちに張られていき、どうなっていくのが本当に楽しみです。