罪深き少年たち | akaneの鑑賞記録

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韓国映画界のベテラン演技派俳優ソル・ギョングが主演を務めた実録サスペンス。1999年に韓国で実際にあった「参礼(サムレ)ナラスーパー事件」をもとに、濡れ衣を着せられた少年たちの無罪を証明するため奮闘する刑事の姿を描く。

1999年、参礼(サムレ)にあるウリスーパーマーケットで強盗殺人事件が発生。捜査は難航を極めたが、じきに警察は近所に住む3人の少年を容疑者として逮捕し、事件は終結したかのようにみえた。しかし翌年、「狂犬」の異名を持つ敏腕刑事のファン・ジュンチョルのもとに、ウリスーパー事件の真犯人に関する情報が寄せられる。当時の捜査内容や記録に不可解な点が多いことに気付いたファンは、やがて事件に隠された秘密と警察・検察の暗部を目の当たりにする。

 

 

 



これは凄く面白かったです!!
時系列がかなり前後するので、ちょっと混乱するのですが、ともかく主演のソル・ギョングさんの演技が素晴らしく、物凄く説得力があって引き込まれます。

 


その他の出演俳優もとても豪華。
少しでも台詞のある主要キャスト数十人、全て顔も出演作もわかる人たちばかりです。
まぁ私が韓ドラを良く見ているから、ではあるんですが、それだけ名だたる俳優陣が、この大きな社会的問題を扱った映画に、強い意志を持って出演しているともいえます。

適当な捜査で犯人をでっち上げた警察&検察と、その隠蔽工作をたった一人で暴き、無実の少年たちを助けようとする刑事との息詰まる対決です。







1999年、全羅北道(チョルラプクト)完州郡(ウォンジュグン)参礼邑(サムレウプ)の小さなスーパー「ウリマーケット」が若い男性三人組に襲われ、被害者の家族のうち、70歳の女性が死亡、金品が盗まれるという強盗殺人事件が発生しました。


数日後には警察の捜査網は近所の少年3人に絞られ、被害者の証言と彼ら自身の自供により3人を逮捕。速やかな事件解決を称えられて事件を担当した捜査課のチームはメンバー全員が昇進しました。

 


翌2000年、「狂犬」と称される叩き上げの刑事、ファン・ジュンチョル刑事が完州警察署に捜査班長として赴任してきました。
小さな田舎町ですから大した事件もありませんが、全力で犯人逮捕に取り組む熱血刑事です。

 

 

 

 

 

ある日、ジュンチョルのもとにウリマーケット事件の真犯人についての情報が入ります。

 

 

 

電話をしてきたチンピラは、つるんでいる友人が、事件当日、マーケットの門は開いていたのに、テレビで放映されていた実況見分で、逮捕された少年3人は塀をよじ登っていたとか、盗んだ宝石類を釜山で売りさばいた話などから、犯人は自分の友人と釜山から来た仲間の三人組に間違いないと証言。

 

 

 


ジョンチョルはウリマーケットを訪ねて扉に鍵がかかっていることを確認し、被害者の女性から扉の鍵は事件のすぐあとに修理をしたと聞き出します。

また、ジュンチョルは逮捕された少年の家を訪ね、3人のうちの1人は満足に字も書けないことを知ります。自分の名前さえ書けない少年が長文の供述書を書いたのは明らかに不自然です。
 

 


ジュンチョルは刑務所で少年3人と面会しますが、ジュンチョルが刑事と知ると彼らはひどくおびえて、ともかく「二度と警察には行きたくない。罪を認めるから刑務所にいたい」というほどでした。

彼らが刑事たちから拷問を受け、無理やり自白させられたのは明白であり、ジュンチョルは少年たちの無実を晴らすために再捜査に乗り出します。

 

 

 


ようやく真犯人と思われる三人を突き止め、話を聞いたジュンチョルは、その会話を録音して被害者の女性に聞いてもらうのですが、彼女は恐ろしい経験を思い出したくないと心を閉ざしており、ジュンチョルは追い返されてしまいます。


さらに事件の責任者だったチェ・ジュソンはあらゆる妨害を企て証拠を隠滅。
当時の担当検事までが乗り出してきて、真犯人に関する偽造文書まで提出するのです。

 

 

 

 


結局、ジュンチョルは責任を取らされ左遷されてしまいます。

出世コースからは完全に締め出され、赴任地は離島や辺鄙な田舎ばかり。

 

 

そして16年後、定年間近となり、古巣の完州警察署に戻って来たジュンチョルのもとに、二人の女性が訪ねて来ます。それはウリスーパーの被害者女性と弁護士でした。

 

被害者女性はかつて誤って彼らを犯人だと証言したことを深く後悔していて、刑期を終えた今も前科者として差別を受けている彼らになんとか償いをしたいと考えサポートをしているのです。

 

 


一度は権力に押しつぶされ事件から身を引いたジュンチョルでしたが、彼女たちの熱意と、今も厳しい人生を送っている少年たちを見て、刑事人生を賭け再審に向けて捜査を始めます。
警察と検察の妨害は果てしなく、執拗にジュンチョル達を追い詰めるなか、唯一の証人は証言してくれるのか?

再審の行方は?

 




 


この映画は、1999年に実際に起きた「参礼(サムレ)ナラスーパー事件」を基に作られました。逮捕された少年たちは懲役3年から6年を言い渡されましたが、刑期を終えて出所した後、再審専門の弁護士の助けを得て再審請求が認められ、無罪を勝ち取りました。彼らは捜査過程で刑事たちから激しい拷問を受け自白を強要されたことが認められたのです。

 

この事件は、警察組織の成果主義が招いたものです。
ろくな証拠もないのに暴力で少年たちを犯人に仕立て上げた調査課の刑事たちは、迅速な犯人逮捕を評価されチーム全員が昇進しました。
しかし後年、これが冤罪事件として認められたあとも、事件に関わった刑事や検事は、全く罪に問われていないそうです。



この組織的な罪に立ち向かった叩き上げの刑事は、実在の人物ではありませんが、不器用ながらも誠実で使命感溢れるジュンチョル刑事の孤軍奮闘ぶりが、警察組織の腐敗した側面をより鮮明に浮かび上がらせています。
唯一の証拠も握りつぶされ、文書偽造、家族への脅迫、様々に降りかかる容赦ない攻撃にも諦めず一歩ずつ立ち向かう姿に、見ている私も一喜一憂してしまいました。。

国家の威信を保つためには、どれだけ月日が経とうとも、人を殺めたり脅したりしてでも、隠蔽した事件は全力で隠し通す権力者たち
現在、日曜劇場で放送中のドラマ「アンチ・ヒーロー」とも通じるものがありますね。

 

 

骨太の韓国映画がお好きな方、おススメです!