カラーパープル | akaneの鑑賞記録

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巨匠スティーブン・スピルバーグが1985年に手がけた名作映画「カラーパープル」をミュージカル映画としてリメイク。1982年に出版されピュリッツァー賞を受賞したアリス・ウォーカーの同名小説と、ブロードウェイで2005年からロングランヒットを記録したミュージカル版をもとに再映画化する。
ミュージカル版の楽曲と併せ、ネティ役のハリー・ベイリー自身が作曲した「Keep It Movin’」などの新曲も交えて歌われる。

 


横暴な父に虐待され、10代で望まぬ結婚を強いられた女性セリー。唯一の心の支えである妹とも離れ離れになり、不遇な日々を過ごしていた。そんな中、型破りな生き方の女性たちとの出会いや交流を通して自分の価値に目覚めたセリーは、不屈の精神で自らの人生を切り拓いていく。

 


主人公セリー役にはブロードウェイ版でも同役を演じたファンテイジア・バリーノ、シュグ・エイブリーは「ドリーム」のタラジ・P・ヘンソン、少女時代のネティは「リトル・マーメイド」のハリー・ベイリー、スクイークにはシンガーソングライターのH.E.R.らが共演。また、ブロードウェイ版でソフィア役を演じてトニー賞にノミネートされたダニエル・ブルックスが本作でもソフィア役で出演。

 

 

 






パワーーー!!

ともかくパワフル!
のっけから圧が凄い!
地響きがするような歌声

地面を打ち鳴らす激しいダンス

 


もうね、これは黒人の皆様でないと表現できませんね。
なんというか、体温は絶対5度ぐらい高いし、人間としての体組織の密度も違うと思う。

みっちり具合&重量感が果てしない。
日本人とか麩菓子レベル。



セリーとネティは、母を早くに亡くし、高圧的な父親の元で育った、とても仲の良い姉妹です。

 

 

 

セリーは2度目の出産をしますが、相手はなんと父親!

(後日、母の再婚相手、継父だと知ります)
今回も赤ちゃんはすぐに取り上げられ、どこかに売られてしまったようです。

 

セリーに飽きた父親は、二束三文で彼女を「ミスター」に嫁がせました。

 

 

 

「ミスター」は子供がすでに3人もいる中年男で、家の中も荒れ放題。
そんな男の後妻となったのです。

セリーはまだ14歳!

 


ある日、父親にレイプされそうになったネティが逃げてきます。
なんとか妹を置いてやって下さいと頼みこみ、ほんのしばらく、幸せな日を送りますが、結局「ミスター」もネティをレイプしようとし、抵抗したネティはライフルで脅され追い出されます。

 


「きっと手紙を書くから!!!」

 

 

そう言って逃げて行ったネティ。

 


しかし、ネティからの手紙がセリーの元に届くことはありませんでした。





ゴキブリと言われ、牛馬と同等に扱われ、レイプも暴力も当たり前みたいな環境で生きて、戦って、自分の人生を勝ち取った女性の物語。

 


基本的には辛い人生の描写が多いから、暗くなりがちだけれど、ミュージカル仕立てになっていることで、ストーリーにメリハリがあり、より迫力が増してスピード感もあって、映画とミュージカルの良さを最大限に生かしていると思いました。
限られたスペースやセットで演じる舞台だと全ては再現できないので、ある程度セリフで説明しなければなりませんが、映画ならそういうシーンも実写で見せられるので、説得力が増します。



妻とは名ばかり。殴って脅して、奴隷のように自分に従属させる男たち。
女性が強気になると男たちは言い返せないから、

 

 

まだ何もわからない10代の若い女の子をモノにしようとする。
そういう男は自信がないから、自分より弱いものを従えて君臨しないと怖いのでしょう。
やたら同類の男とつるんでいるのもその証拠。
1人では何もできないし、結局捨てられる



現在でもこういうDV夫はいますよね。

妻には「お前はバカだ、ダメだ。1人では何もできない。オレ様なしでは生きていけない」と言い続けて、女性の自己肯定感を潰す。
お金は全て管理して、最低限の金額しか与えない(生活するのが精一杯)。
友人や外界との接触を絶ち、孤立させる。

知識や情報を得られないようにする。

 

 


夫婦だけでなく、会社や師弟関係にもこういうパワーバランスは存在していると思います。





しかし、セリーはどんなにひどい目にあっても、ネティとの再会を信じ続け、ミスターや子供たちの面倒をみました。

 

投獄されたソフィアを6年間、毎週お見舞いに行ったり、

 

 

 

夫の元愛人なのにシュグの世話もしました。

 

 

いつも自分は後回しにして、人のために尽くしていたのです。

ただ、もう少しだけ目を開いて、世界を見て、自分を見ることができれば良かったんです。

そのきっかけを与え、救い出してくれたシュグ。

 

 

 

 

 


情けは人のためならず

 


自分の店を持ち、自分の裁縫の腕前で独り立ちができたセリー。

 

 


クライマックスで歌う「I'm Here」は凄かった。。。
醜いと言われ続けてきたセリーが、「I'm Beautiful」と歌ったときには涙腺決壊!

 

そうだよ!

 

私は美しい
私は生きている

Love Myselfだよ!!

 

 

 



こちらはブロードウェイ版

 

 






1985年版の旧作はほとんど忘れてしまったので、U-NEXTで改めて見てみたのですが、原作があるものだし、両方ともスピルバーグ監督がかかわっているので、展開としてはほぼ同じ。
多少、シチュエーションの違いや場面の前後があるぐらいです。
ただ、旧作は、映画の最初と最後に広大なコスモス畑が映し出されるので、「カラーパープル(紫色)」のイメージが分かりやすいですね。

 

 

 

 


アリス・ウォーカーが育ったジョージア州の田舎。
周りには農場や畑が広がり、紫色の花があちこちに咲いていました。
自然に咲く花の中で、赤や黄色は気付きやすく、紫は特殊な色だと思いがちですが、実は自然の中にごくあたりまえに存在する色。
人生も同じこと。
自分の周りに幸せがあるのに、見えていない。
ちょっと意識を変えてみると見えるのに、という思いを込めたタイトルなのだそうです。


セリーにはずっと見えなかったカラーパープルが、シュグ、ソフィア、ネティの力で見えるようになったのです。


そしてコスモスの花言葉は「乙女の真心、謙虚、調和」
乙女の真心を持つセリーの、40年にも渡る忍耐を乗り越えた先に花開いた美しい人生を象徴しているようですね。





酷いことを続けてきたダンナは、畑に虫がわいて収穫を失い、妻にも子供にも捨てられ、いつ野垂れ死にするかと思ったけれど、改心してネティを呼び寄せることによって、また人とつながることができたという流れ。
その改心がちょっと唐突で収まりが悪かったのですが、これに関しては「セリーとミスターとの間に生じた変化の過程が書かれていない」ということで、出版当時から批判があったようです。
 

 

 


全般的に今作の方が、キャラクター設定がとてもはっきりしていて、強くて印象的な感じがしました。
今の時代に合うようにエンタメとしてもアップデートされて、色鮮やかになっています。
 

 


全てのキャストが本当に素晴らしく、生きる力を与えてくれる名作です。