オデッサ in 東京芸術劇場 | akaneの鑑賞記録

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「オデッサ」は、三谷が約3年半ぶりに書き下ろし演出する新作舞台。アメリカ・テキサス州のオデッサを舞台にした“男と女と通訳の会話バトル”が展開し、留学中の日本人青年役を柿澤勇人、日本語を話せない日系アメリカ人の警部役を宮澤エマ、英語を話せない日本人旅行者役を迫田孝也がそれぞれ演じる。
 

 

 


面白かったーーー!
最高!!


 

 

 

2020年7月公演の「大地」は全くチケットが取れず、ストリーミング鑑賞

 

 

 

2022年12月公演の「ショウ・マスト・ゴー・オン」はチケットが取れたのに公演が中止となり、こちらもストリーミング鑑賞
 

 


やっと…やっと…ステージでの鑑賞ができました。

 

 


このチケットもなかなか取れず、何度も抽選に落ち、補助席売り出しでなんとか2階席をゲットできました。
だって「鎌倉殿」のメンバー3人ですもん。大人気ですよ。
客席は立ち見も大勢で、本当に完全満席でした。



本当に三谷幸喜さんって天才です。
もう本当に面白い。

 

 


舞台は取り調べ室として借りているバーの一室のみ。
出演者も3人のみ。
1時間45分、ぶっ通しで喋ってるだけなのに、全くダレず流れがスムーズで爆笑の連続です。




登場人物は三人。 言語は二つ。 真実は一つ。
密室で繰り広げられる男と女と通訳の会話バトル。




英語のセリフが字幕で表示されるとあり、どうなることかと思いましたが、字幕の出し方にも遊び心があり、タイミングもピッタリで、全くストレスはありませんでした。

 

 

 


1999年のアメリカ、テキサス州オデッサ。
地元の老人が撲殺される事件が起こりました。
その重要参考人として、コジマカンタロウと名乗る日本人旅行者(迫田孝也)が勾留されるのですが、彼は一切英語を話すことができず、取り調べができません。そして警察署内は連続殺人事件の解決に追われ、人員不足。

 

 


捜査を押し付けられたカチンスキー警部は日系人ですが日本語は話せません。本来の職は、遺失物係。
警察署内の部屋も一杯で使えず、近所の閉店後のバーで取り調べを行うことに。


通訳として連れてこられたのは、語学留学をしつつホテルのジムでトレーナーをしている日本人青年のスティーブ日高(柿澤勇人)。

 

 



基本的にカチンスキー警部が英語を話し、その日本語訳が映像として字幕に投影されます。
スティーブ日高は英語を日本語に通訳してコジマに伝え、コジマの言葉は英訳してカチンスキー警部に伝えます。

 


カチンスキー警部とスティーブ日高の二人だけで会話をするときは、「共通言語である英語でスムーズに会話している」という設定なので、日本語(標準語)が使われます。


スティーブ日高とコジマは、互いに出身が「鹿児島」だと分かり、急激に親近感を覚えました。
二人が会話するときは「鹿児島弁」です。

 

 

 

コジマは英語が全く理解できず、自分が何の容疑で捕まったかもわからず、怯えています。
スティーブ日高は、身なりもボロボロでお金もなく野宿しているという気弱な雰囲気のコジマが殺人などするわけない!と確信し、なんとかこの状況から救い出してあげたいと思います。

しかし、いざ取り調べが始まり、自分に殺人の容疑がかかっていると分かった途端、コジマは急に態度を翻し、「自分が殺した!逮捕してくれ」と懇願し始めます。

驚いたスティーブ日高は、コジマを助けたい一心で、あえて間違った通訳を両者に伝えることによって、段々会話の内容が支離滅裂になり、誤った認識が生まれてしまうという設定が本当に面白いんです。


急に「自分が犯人だ」と言い出したコジマに対して、あれこれ説明して説得している様は、明らかに挙動不審で、カチンスキー警部も「違う内容を伝えているんじゃないの?そんなに長い言葉、喋ってなかったわよ!」と突っ込むと

 

 


「日本語とは、そういう複雑なものなのです。
わずか17文字で、情景を語るのが俳句で…」など、いきなり俳句の説明になったり

 

 



殺人の動機が、オデッサの風景を語る「詩」になったり

 

 


殺人の方法を説明するのが、そば打ちの手順になったり

 

 



どさくさに紛れて、スティーブ日高の通訳がどんどんエスカレートしていきます。
 

 


なんとか彼の容疑を晴らすために、事件の細かいアリバイ、証言の矛盾などを追及しているうちに、とうとう真犯人が見つかり、コジマは無罪放免!

 

 


「やったね!!良かった良かった」と三人三様で喜んでいる時、ある人物が放った一言で状況は急展開!!!

 

 

 

 

 


コメディとしての面白さだけでなく、後半はミステリーとしての謎解きやどんでん返し展開に釘付けです!


そして3人とも本当に演技が巧くて、三谷さんの脚本を完全に演じ切る力量があるので、もう最高!としか言えません。

 


 

 

宮澤エマさんは、もちろんバイリンガルですが、今までこれほど英語を使う役はなかったと思います。
日本語も英語も、本当に流暢で素晴らしい。その滑舌の美しさに惚れ惚れします。
母は日本人、父はポーランド人。アメリカで生まれ育ったけれど、日系人ということで味わってきた差別。
それを撥ね退けるためにどれほどの努力をしてきたか。
小学生の子供を育てながら、毎日忙しく警部の仕事をこなしている大変さなどがリアルに伝わってきます。
 

 



 

柿澤勇人さんは、スティーブ日高と名乗っていますが、ハーフではありません。本当の日本語名があります。
日本で高校~大学と進学したものの、自分のやりたいことは見つからず、勢いで留学して4年ほどになるけれど、まだ何者でもない焦り。
ネイティブではない英語と鹿児島弁をつかっての大変な役です。
でも「雨の日に捨てられた子犬みたいな目」で甘えたりするんですよ(笑)

 

 

 

 

迫田孝也さんは、日本の職場である不祥事を起こし、自暴自棄となってアメリカにやってきた設定。
前半の可哀想な雰囲気と、後半の「低音ボイス」のギャップが凄い!!!
迫田さんってなんとなく憐みを感じさせるキャラでありながら、どこか底知れぬ闇を秘めているのが良いですね。

 

 

 


そしてもう1人の出演者は、音楽・演奏を担当する荻野清子さん。
舞台下手にグランドピアノが置かれ、さらにピアニカや笛も駆使して、即興的に音楽を付けていきます。
それがまた俳優の感性を刺激し、相乗効果でステージを盛り上げます。





終演後にトークコーナーがあったので、色々舞台裏の話も聞けました。
日々、どんどんセリフや設定が変わっていき、元の台本とはかなり違うものになってしまったとか。

三谷幸喜ワールドを熟知している3人と、3人にアテガキされた台本。
しっかりとキャラクター設定があって、今までどんな背景があってここにいるのか、どんな悩みを抱えているのかといった人物像もしっかり描かれていて親近感が湧きます。

序盤や中盤に張られた伏線を回収していきながら物語が収束していく展開は凄く計算されていて、構成が本当に素晴らしかったです。


これから地方公演となりますが、もうチケット取れないかな…?
当日券が出たりするかもしれませんし、もし機会がありましたら是非、観劇してください!!
本当にお勧めですよ!



【公演スケジュール】
2024年1月8日(月・祝)~28日(日)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス

2024年2月1日(木)~12日(月・祝)
大阪府 森ノ宮ピロティホール

2024年2月16日(金)~18日(日)
福岡県 キャナルシティ劇場

2024年2月24日(土)・25日(日)
宮城県 東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)

2024年3月2日(土)・3日(日)
愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール