18世紀末、革命の混乱に揺れるフランス。若き軍人ナポレオンは目覚ましい活躍を見せ、軍の総司令官に任命される。ナポレオンは夫を亡くした女性ジョゼフィーヌと恋に落ち結婚するが、ナポレオンの溺愛ぶりとは裏腹に奔放なジョゼフィーヌは他の男とも関係を持ち、いつしか夫婦関係は奇妙にねじ曲がっていく。その一方で英雄としてのナポレオンは快進撃を続け、クーデターを成功させて第一統領に就任、そしてついにフランス帝国の皇帝にまで上り詰める。政治家・軍人のトップに立ったナポレオンと、皇后となり優雅な生活を送るジョゼフィーヌだったが、2人の心は満たされないままだった。やがてナポレオンは戦争にのめり込み、凄惨な侵略と征服を繰り返すようになる。
ナポレオン・ボナパルト(1769年8月15日 - 1821年5月5日)の生涯を忠実に描いた作品です。
リドリー・スコット&ホアキン・フェニックスと言えば「グラディエータ」を思い出しますね。
当時ホアキン・フェニックスはまだ売れていなかったので、かなりラッセル・クロウ押しでしたけど。
今作も、戦争シーンの迫力は素晴らしいです。
人海戦術というか、CGに頼らず無数の人間や馬が激突するリアルさは無敵。
特に、オーストリアとの戦いで、敵を凍った湖の上におびき出して全滅させるシーンは凄かったです。
氷が割れ、湖がみるみる血で赤く染まっていく様子が。
そしてなんといっても衣装やセットの豪華さ!
この映画でも、本当に凝っていて感動しましたが、今作も力が入ってますね。
有名な戴冠式のシーンは、まさに肖像画そのものでした。
こちらが絵画
ナポレオンと言えば、漠然と「英雄」のイメージを持っていて、それほど詳しく歴史を知らなかったので、ここまで戦争に明け暮れた一生だったとは驚きました。
そしてヨーロッパは本当に何世紀にも渡って戦争が続いていたんだな、と改めて思い知らされた感じです。
ベートーヴェン(1770年~1827年)やシューベルト(1797年~1828年)とほぼ同年代。
18世紀から19世紀に至るまで、クラシック音楽は非常に発展した時期で、パリもウィーンも社交界の中心だったので、なんとなく平穏な時代のように思っていました。
野心溢れる25歳のナポレオン。
初戦のトゥーロンの闘いでは、作戦が成功するかどうかドキドキしたり、自分も剣を振るって必死に戦ったり、かなり初々しさがありました。
愛馬に大砲の弾が直撃するシーンも、非常にインパクトがありました。
それにしても「大砲」の破壊力が凄いです。
ナポレオンは、パリの陸軍士官学校で砲兵科を選択したらしい。
先見の明がありますね。
では弓矢の殺傷力が無敵でしたけど。
ぶっきらぼうで愛想もなく、女性にはモテそうにない武骨な男。
母親と年上女房のジョゼフィーヌには頭が上がらない、ややマザコン気質?
どの偉人も、上り調子の時は、何をやっても上手く行くし、様々な幸運にも恵まれてどんどん出世していきますが、ひとたび凋落が始まると、天に見放されたごとく一気に転落して行くのですね。
頭ではわかっていても、引き返せないというか…栄枯盛衰は逃れようもありません。
ナポレオンは政治・経済の改革にも尽力しましたが、この映画では「軍人」の部分が強調されています。
エンドロールで、生涯で率いた戦いは61回、とのクレジット。
モスクワ侵略失敗以降の戦死者数をみると、かなり戦犯だった気もします。
有能な指揮官でありながら、ジョゼフィーヌには、こまめに手紙を書いて、嫉妬して、支配しようとして支配されてしまったり。
ホアキン・フェニックスは、そういうナポレオンの複雑な内面を非常に的確に演じていて、さすが!なんですけど
いかんせん年齢が…
最初の登場シーン、ナポレオンは25歳ぐらいのはずですが、どう見てもオッサンでしかなく、フレッシュ感が皆無で、そこは残念でした。
あんまりカリスマ性は感じなかったな~。
登場するだけで画面が輝くような華がないんですよね。
かなり似せてはいるんですけど。
その点、ジョゼフィーヌを演じたバネッサ・カービーは、とても妖艶で、したたかな女性で、イメージピッタリ。
声が低いのも肝が据わってる感じで良かったです。
でも本当は、ナポレオンより8歳も年上なんですよね。
出会った時は、すでに32歳で2人の子持ち未亡人ですから。
でも二人の演技や存在感が素晴らしいので、そのあたりのリアルさは追及しないのね、って感じ。
ジョゼフィーヌは、前の夫との間に2人子供がいたのに、どうしてナポレオンとの子供には恵まれなかったのでしょうね。
それにしても御年86歳のリドリー・スコットさん、素晴らしいエネルギーです。
映画館の大画面で観るに相応しい大作です!
おススメ!