ハウス・オブ・グッチ | akaneの鑑賞記録

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巨匠リドリー・スコット監督が、ファッションブランド「GUCCI(グッチ)」の創業者一族の崩壊を描いたサスペンスドラマ。サラ・ゲイ・フォーデンのノンフィクション小説「ハウス・オブ・グッチ」を原作に、グッチ一族の確執と3代目社長マウリツィオ・グッチ暗殺事件を描き出す。

1995年3月27日、GUCCI創業者グッチオ・グッチの孫にあたる3代目社長マウリツィオが、ミラノの街で銃弾に倒れた。犯人の特定が難航する中、犯行を指示した驚きの黒幕が明かされる。

マウリツィオの妻で、グッチ家の崩壊を招くパトリツィア・レッジャーニを「アリー スター誕生」のレディー・ガガ、夫マウリツィオ・グッチを「マリッジ・ストーリー」のアダム・ドライバーが演じ、アル・パチーノ、ジェレミー・アイアンズ、ジャレッド・レトが共演。
 

 

 




1月に見たものなので、ちょっと記憶も薄れているのですが、非常にゴージャスなワイドショーって感じでしょうか。

調度品や衣装、その他セットも品が良く、見ていて気持ちも豊かになりますね。
自宅に「クリムト」の絵画が飾られているような家ですから。


そしてなんといってもMVPはレディ・ガガ様でしょう!!

メリハリのあるボディ、成り上がりの感じ、生まれ持った魔性の女気質、押し出しの強さとかもう本当にピッタリでした。






パトリツィアは、貧しい母子家庭に育ちましたが、母親が運送業者社長と再婚。
一気に景気の良い暮らしを手に入れます。
義理の父にはベタベタに甘やかされ、雇われているドライバーたちにもちやほやされながら成長。
男を扱う手練手管はこの環境で培われたかもしれませんね。






一方、20歳のマウリツィオ・グッチは法律を学ぶ大学生であり、グッチの家業を継ぐつもりもありませんでした。





父親のロドルフォも


グッチ後継者の座など全く興味がなく、洗練された気品と身のこなしでスクリーンデビュー、女優の卵だったドイツ人女優と結婚をしました。

一人息子のマウリツィオが生まれたため、家族を養うために映画俳優を辞め、家業のグッチで兄弟と共に働き始めた経歴です。
亡くなった妻の美しい思い出に今も囚われているような、暗くて保守的な父親と環境に嫌気が差していたマウリツィオ。





この二人があるパーティで偶然、出会います。
絵にかいたようなチェリーボーイであるマウリツィオは、華やかなパトリツィアに一目惚れ。




グッチの息子だと知ったパトリツィアも、その後も偶然を装った猛烈なアプローチをして、彼を落とします。






「パトリツィアは粗野で、野心的で、金以外には何も興味がない、おまえにふさわしい女性じゃない」と言うロドルフォの反対を押し切ってふたりは1972年に結婚。






ただ、この当時、マウリツィオは父親に勘当され、パトリツィアの運送会社でしばらく働いていたというのが意外でした。
「グッチの看板がなくなった男なんかいらないわ!」ではなかったんですね。





彼らに救いの手を差し伸べたのは、叔父のアルド・グッチ。



彼は芸術的な兄のロドルフォとは違い、ガンガンマーケットを広げて商売をしていきたいタイプ。
ニューヨークに二人を呼び寄せてビジネスパートナーとし、実の子供のように可愛がりました。



アルドの息子パオロは、デザインの才能も商才もなく、アルドにもロドルフォにも全く相手にされず、一家の鼻つまみ者です。






パトリツィアは、夫がグッチ家の中で名を上げるべく尽力したことが評価されてマウリツィオのオフィシャル・チーフ・アドバイザーとなり、マウリツィオ自身も社内でさらに出世していきます。






そして1983年にロドルフォが亡くなると、マウリツィオがこのファッション帝国の株の大部分を獲得。

時代遅れとなったブランドイメージを一新、新進気鋭のデザイナー、トム・フォードを迎えて、再度王者の地位を確立します。




すべてが順調かのように思えた結婚生活でしたが、変化が訪れたのはそれから2年後の1985年。

結婚生活も12年目に入ったところで、パトリツィアは、かなりビジネスにも口出しをし、世話になった叔父のアルドまでも追い落とすなど身内を裏切るような計画を実行するようになりました。




一族の浪費額は膨らみ、元々ビジネスの才覚に優れていたわけでもないマウリツィオは社長業のプレッシャーに追い込まれ、言い争い絶えなくなった家庭から、マウリツィオは逃げ出してしまいます。



マウリツィオは以前からの恋人であったパオラとの結婚を望んで、パトリツィアに離婚を迫っただけでなく、

 





自身が所有するグッチの株を推定価格1億2000万ドル(約132億円)で投資会社「インヴェストコープ」に売却。



パトリツィアは、怒り心頭!


とうとう、心酔していた占い師の国生さゆり(ちがーう!!)


と共謀し、夫の殺害を企てます。



1995年3月27日。オフィスに入ろうと階段を上がっているところで銃撃を受けたマウリツィオは帰らぬ人に――。






当局は最初からパトリツィアに嫌疑をかけていたものの、捜査は大変難航して、2年もの間、未解決事件となっていましたが、彼女がマウリツィオの殺害のために霊能者を含む4人の共犯者を雇っていたことが証明され、ようやく1997年1月31日、逮捕されます。




ご本人のパトリツィア・レッジャーニさんがご存命だからか、それほど「完全に悪女」という風には描かれていませんでした。
リドリー・スコット監督にしては、少々甘いなぁとも思いました。ちょっと歯切れが悪いですね




この事件については、色々な記事や書籍も残っています。
まさに「事実は小説より奇なり」を地で行くようなお家騒動なので、いくつか読んでみるのも面白いと思います。



結婚した当時のご本人たち






それから25年後、パトリツィアは有罪とされ、懲役29年の判決を受けました。




2011年10月には、開放型刑務所(模範囚や、犯した罪が比較的軽い等の基準を満たした者が収容される刑務所で、社会復帰に向けた職業訓練などが提供される)で刑期を全うする機会を与えられるも拒否したというパトリツィア。

職員に語ったところによると、「私は人生で一度も働いたことがないし、まさか今から始めるつもりはない」と言ったのだとか!



2016年10月、模範囚であったことから刑期が早まり、18年で出所を許可された彼女。その後はコスチュームジュエリー・ブランドでコンサルタントとして働きはじめたそうです。



2021年10月頃に撮影されたパトリツィア。

 





釈放後、パトリツィアは年に約1億5,000万円ほどを受け取る(さらに刑務所にいた間の未払い分も受け取る)ことを裁判所が決定。これは、マウリツィオが亡くなる2年前にサインした合意書に基づいているものだそうです。


凄いですね。
殺人教唆なのに、悠々自適な生活。
いくら合意書があったとしても「罪を犯したら無効」にならないんでしょうか。




まぁ当然とは思いますが、パトリツィアご本人含め、グッチファミリーから、この映画は非常に不評とのこと。
デザイナーのトム・フォードも「こんな状況じゃなかった」と言っているそうですから、実際のところはどうだったのか分かりませんが。



パオロ・グッチを演じたジャレッド・レトは、かなりラジー賞的な評価になっていますね。

 





史実を見る限り、そんなに凡才でもなく、色々会社のことを考えて尽力したように思うのですが、グッチファミリーの愚かさを一気に引き受けたような役作り。
容姿の作り込み方といい、演技といい、少々やりすぎな感じはしました。



最後の決闘裁判」ほどではありませんが、アダム・ドライバーの何となく癇に障る優柔不断なボンボン具合はなかなか。





ジェレミー・アイアンズの孤高な雰囲気と、イケイケタイプのアル・パチーノの対比も素晴らしかったと思います。

御殿場アウトレットに店舗を出す計画もあったようで、アル・パチーノの口から日本語を聞くとは…





最後まで一族に馴染めなかった二人。





どんなに着飾っても、頑張っても、生まれ育ちの違いは永遠に埋められなかったパトリツァアの寂しさ、みたいなものも感じました。

「氏素性」ってあまり好きな言葉ではありませんが、やっぱり簡単には越えられないものですよね。





リドリー・スコットは2000年代初頭にフォーデンの『ザ・ハウス・オブ・グッチ』の権利を取得しましたが、企画は長い間停滞し、2019年11月にスコットの監督就任とレディー・ガガの出演が決まるまで多くの監督や俳優の起用が噂されました。
当初は、アンジェリーナ・ジョリーがパトリツィア役、レオナルド・ディカプリオがマウリツィオ・グッチ役を演じるなんて話もあったようです。

他にもパトリッツァ役にはペネロペ・クルスやマーゴット・ロビーも検討されていたとか。




でもなんといってもレディー・ガガ様ですよ!

 







アリー/ スター誕生」は、ストーリーも古臭くてイマイチでしたけど、これは本当に当たり役でした。

彼女が演じることによって、ただ単に「成金の野心に溢れた女」だけではなく、パトリツィアの可愛らしさや一生懸命に事業に尽くした部分も巧く表現できていたと思います。

 

 

追記

アメブロの表示に不調があったため、新規でアップしなおしました。

前回「いいね」をしてくださった方々、申し訳ございません。