マティアス&マキシム | akaneの鑑賞記録

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歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

 

 


2009年、19歳にして『マイ・マザー』で初監督を務め、主演と脚本家も兼ねたカナダの若き俊英グザヴィエ・ドランが、友情と恋心の狭間で揺れる青年2人の葛藤を描く。

 

幼なじみである30歳のマティアスとマキシムは、友人の短編映画で男性同士のキスシーンを演じたことをきっかけに、心の底に眠っていた互いへの気持ちに気づき始める。
婚約者のいるマティアスは、親友に芽生えた感情に戸惑いを隠しきれない。
一方、マキシムは友情の崩壊を恐れ、思いを告げぬままオーストラリアへ旅立つ準備をしていた。
別れが目前に迫る中、本当の思いを確かめようとするマティアスとマキシムだったが……。
ドラン監督が「トム・アット・ザ・ファーム」以来6年ぶりに自身の監督作に出演し、主人公の1人マキシムを演じた。
 

 

 

 

いや~もう~メッチャ忙しい!

コロナ禍とかどこ行った?

ぐぁーーーーー!!!たちけて!

 

 

 

いや、気を取り直して。。。

話題のドラン監督、新作を観てきました。

 



5歳の頃から一緒に遊んでいる幼なじみ同志。
お互いになんとなく気持ちはあったのだと思いますが、単なる友情と思ってフタをしていたのかな。
友人の妹が制作する短編映画でキスをして、その気持ちに気付いてしまう。
このポスターを見てもわかるように、ちょうどカメラで隠れるようにして、キスシーンは映されません。
あとからその映画を観る場面もあるのですが、観客には絶対見せないんです。
その辺、くーーー!って感じよね。



気持ちに気付いてから、お互いを意識して言動不審になるんですが、その揺れ動く気持ちを持て余す二人をずっと描いています。
周りの友達、家族も二人を静かに見守り、静かに応援しています。


もう一度、想いをぶつけあうようにキスをする場面はありますが、

 

 

それ以外セクシャルなシーンは全くないです。

 

 

 


そう思うと、「窮鼠はチーズの夢を見る」はかなり攻めてたな~と思いました。
そしてノンケの恭一を落とした今ヶ瀬の手練手管!!(笑)




「君の名前で僕を呼んで」に感銘を受けて、この作品を撮ったとのことで、このTシャツの色は何か意識したのでしょうか。







フランス語が流れていても、舞台がカナダなので、フランスとはかなり違う印象。
風景はもちろん、言葉はかなり英語交じりだし、発音もちょっと違う感じ。

 

 


登場するのは、マティアス、マキシムの他、小学校の頃からずっとつるんでいるのであろう男友達。

 

 

 

 

 

実際にドランの地元の友人が出演しているそうなのですが、6人集まると、もううるさくて。
マリファナをやり、タバコを吸い、酒を飲みながら、なんかくだらないことをべらべらしゃべって騒いでるのが、まるで大学生のノリ。
 

 

 


マティアスはいちいち言葉尻を捉えるめんどくさい性格。

「誕生日ケーキに火を点けようぜ~!」
「ケーキじゃなくて、ロウソクに、だろ?」

みたいな。

それを言ったか言わないかでみんなで揉め、インスタにアップしたから証拠が残ってるぜ~!みたいなこと延々やってて、それはちょいとうんざりしました。

まぁ新卒ぐらい?20代前半の設定かと思ったら、みんな30歳だと。
えーーー、30歳であのノリはないわ。

 


マティアス以外、定職についている風もなく、結婚どころか彼女もおらず、親がいる実家に暮らして、みんなで集まってはジェスチャーゲーム?言葉遊びみたいなのに興じてて。

いや子供すぎるやろ。
しかも田舎だから店もなく、いつもそれぞれの家に寄り集まって騒ぐから、もれなく母親とか叔母さんが登場。
これもまた、うるさい。
 


そして徹底的に父親が出てこない。
ほぼ女の家族しか登場しないの。
相当マザコンよね…これ。



ドランはかなりMっぽいです。
自分が演じている人物は、かなり虐げられてる設定。

マティアスは法律事務所に勤め、美人の恋人もいるのに対し、マキシムはバーテンダーで貧乏。顔に大きな痣もあるし。
父親はおらず、精神を病んだ母親を抱えています。

 

 

 

自分がいなくなったら母親はまともに生活ができないから、叔母を後見人につけてお金の管理や身の回りの世話をしてもらって…と気遣っているのに、母親には全く感謝されず、怒鳴り散らされるばかり。
その反面、母親は弟とは仲良くやっていて、そこでも大きな疎外感、無力感に苛まれます。

こんな日常から飛び出したくて2年間オーストラリアに行くのですが、それも何か仕事が決まっているわけではなく、バーテンでもしながら仕事探すわ、みたいな状況なんです。




ドランの映画は、独特の作風で、脚本も自分で書き、衣装も編集もすべて自分でやります。
「行間を読む」的な表現が多く、直接的な気持ちや状況をセリフで語ることがありません。
大きな起承転結のストーリーもないし、断片的な風景が連なっていくんですけど、なんとなく引き寄せられて見入ってしまうんですよね。
だけど、ラストは「ん?で、なんだったの??どうなんの??」って締め方が多いです。
使われている音楽は結構好き、画もとても綺麗。
MVを数多く撮っているので、そういう雰囲気あります





映画としてはどうなの?という部分はあるので『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』は観なかったんですが、俳優としての彼の演技はとても好きなんです。
表情がすごく豊かでホントに切なくて、もう見てて胸がギュッとなる表情をするんです。

目の表情も良いんだけど、特に口元はなんだか視線が吸い寄せられてしまう。
フッと口角を上げたりするだけでドキッとします。





ドラン自身がゲイですし、ほとんどが女親との確執を描いた作品で、本人もだいぶ拗らせてる感じがします。

 



苦しみ、みじめさ、苦悩、怒り、哀しみ

 

報われない思い、届かない思い、渇望

 

いつも飢えて、傷ついて、しんどい




自身の父親はマヌエル・タドロス



ドランの作品にもいくつか出演しているんですが、父子の関係はどうなんでしょう?
俳優として忙しくしていて、ほとんど一緒に過ごさなかったのかな?





彼の映画は、第三者として観客として突き放して鑑賞するには向きません。なんというか彼の脳内とリンクしてヴィジョンを共有するような感じ。
一度別の脚本家や監督の作品に出演して演じているところを見てみたいんですけど、彼にとって「仕事として」映画を撮ったり、役を演じたりすることは無理なんでしょうね。
だから子役から仕事していても、今一つブレイクしなかったのかも。

 

 


これまでの作品、ほぼテーマが「ゲイと母親との確執」です。
相当の怒りや屈折した気持ちを抱えていて、映画を撮ることで解放される部分はあっただろうけれど、これだけ作品を作っても、これだけ称賛を受けて成功しても、彼の中で燃え盛っている葛藤は鎮火しないのでしょうか。

 


でもそろそろこのテーマから離れた映画も作ってほしい。

ちょっと飽きた。
誰でも多かれ少なかれ親との確執は抱えているし、性別関係なく恋愛の苦しみも経験しています。
彼の作品は、それらを普遍的に描いたというより、なんとなく彼の私情をむき出しでぶつけられたような気がするんですよね。
20代までならチヤホヤされるだろうけど、30代になったら世間の目も厳しくなるんじゃないかなぁ。


 

 

 



彼の作品で、好きなものをご紹介します。



●マイ・マザー(2009年)

 

第1作目。弱冠19歳で脚本、コスチュームデザイン、プロデューサー、主演、初監督を務めた半自伝的作品。
原題は 仏: J'ai tue ma mere, 英: I Killed My Mother
第62回カンヌ国際映画祭の監督週間で上映され、20カ国の配給業者に売却された

情緒不安定な母親との不和に苦悩する少年が、愛情と嫌悪感の狭間で葛藤する姿を描き、初監督作ながら第62回カンヌ映画祭監督週間に出品されるなど高い評価を獲得した。

カナダ・ケベック州の町に暮らす17歳のユベールは、口やかましく、趣味の悪い母親がどうしても受け入れられずにいた。幼い頃は大好きだった母親への憎しみは募るばかりで、自分でもどうしようもない苛立ちにさいなまれる。

 

 

 


映画製作について全く何も教育を受けず、素人の高校生がこれを撮って世に出したとなると、やはり天才としか言いようがありませんね。
カット割りなどは稚拙なところもありますが、すでに今の作風と変わらないし、彼自身のスタイルが完成しています。

 


17歳で映画を撮ろうと思い立ち、絶対カンヌに持っていくと明言、その通りになりました。
家を売り、私財を投げうって、さらには配給会社からも切られ、それでも完成させた執念はすさまじいと思います。

 


この映画はまさにドランの原点。
自伝とも言われています。
お母さん役、「マティアス&マキシム」と同じ女優アンヌ・ドルヴァルさんですし。

 

 

 


父親の不在
頼れるのは実母ではなく叔母や友人の母親 
ゲイの自分

 

 


こんな母親と暮らすのは辛いなとも思うけど、こんな情緒不安定な息子も困るわぁ(笑)
映画全編の7割ぐらいは、母と息子、二人で喧嘩してるシーンですからね。

あとエンディングが曖昧なのも同じです。
この先、どのように進んでいくか、ハッキリ示さず、いかようにでもご想像くださいみたいなの。

 

 



●グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル (2016年)
Xavier Dolan: a l'impossible je suis tenu 
※ドキュメンタリー映画

 

 


彼自身のインタビューや、出演した俳優たち、プロデューサーやカメラマンなどのインタビューをまとめたもの。
彼の映画への取り組み方や作り方などがよくわかります。
なんか「ものすごく生き急いでる人」って感じしますね。
体内時計が普通の人の3倍ぐらいの速さで進んでいる気がします。
映画撮ってないと死んじゃうっていうか。
それだけ自分の情熱を注ぎこめて、自分を解放できる手段が見つかって本当に良かったね、って思う。

 

 

 


彼の撮り方はまず音楽から。

その音楽に合う風景、演技、セットなどを作りこんでいく方式。
あとはファッション雑誌を山ほど見て、気に入ったショットは破って保存。
そうやって「こういうイメージ」というのを伝えていくらしい。
だからミュージックビデオっぽい感じがするんですね。

ものすごい有言実行の精神力を持ち、凄まじい集中力で携わっているのはわかるけれど、半面ものすごい危さも感じます。

長生きできなさそう。。。
 

 



●トム・アット・ザ・ファーム(2014年)

グザヴィエ・ドランを初めて知ったのは、2014年に公開されたこの作品です。




2013年、監督第4作目の『トム・アット・ザ・ファーム』は第70回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で上映され、国際映画批評家連盟賞を受賞。
カナダ東部ケベック州の雄大な田園地帯を背景に、閉鎖的な家族と地域を舞台に描いた心理サスペンス。恋人の男性ギョームが亡くなり悲しみに暮れるトムは、葬儀に出席するためギョームの故郷を訪れる。しかし、ギョームの母アガットはトムの存在を知らず、息子の恋人はサラという女性だと思っている。トムの存在を唯一知るギョームの兄フランシスは、トムに恋人であることを隠すよう強要。当初は反発を覚えたトムだったが、次第にフランシスの中に亡きギョームの姿を重ねるようになり……。カナダの人気劇作家ミシェル・マルク・ブシャールが2011年に発表した同名戯曲の映画化。
 

 

 

 


まず、このビジュアルにやられました。

 

 

 


カナダの田舎町の閉塞的な雰囲気。

トムはモントリオールの広告代理店で働く若者。
恋人のギョームは25歳で交通事故で死亡。

でもあまり詳しいことは語られず、回想シーンもありません。
彼の葬儀に参列するため、ギョームの実家にやってきたトム。
そこにはギョームの母と、兄のフランシスが暮らしていました。
ギョームがゲイだったことをひたすらに隠そうとするフランシス。
恐らく彼自身もゲイだと思われますが、田舎では隠さなければやって行けません。
実は弟に対してもそういう思いを持っていたか、もしかしたら関係があったのかも。
フランシスは非常に粗野で乱暴、トムを痛めつけ、誘惑し、自分の農場に縛り付けます。
トムはフランシスに恐怖を覚えながらも、ギョームに似ている兄に惹かれていく。。。

 

 

 


なんかちょっとサスペンスっぽい感じもあるんですよね。
ひょっとしたギョームは殺されたのでは?みたいな雰囲気もヒタヒタと。

二人でタンゴを踊るときの恍惚とした表情

 

 

 

 

 

首を絞められながらギョームを思い涙を流すなど

 

 

なかなか官能的。
 

 


フランシス役のピエール=イブ・カルディナルさんも、カッコいいんですよ~。

 

 

髭でエキゾティックな男性、好きなんですかね。
マティアスもそうだもんね。

 



作品としてはこれが一番好きです。


いずれもアマゾンプライムで観られます。