ベンジャミン・バトン 数奇な人生 | akaneの鑑賞記録

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「セブン」「ファイト・クラブ」のデビッド・フィンチャーとブラッド・ピットが、F・スコット・フィッツジェラルドの短編小説を映画化。

80代の年老いた姿で生まれ、歳をとるごとに若返っていき、0歳で生涯を終えたベンジャミン・バトンの奇妙な人生を、数々の出会いと別れを通して描く。

 

 

 

 

 

 

 

 

2005年、ハリケーンが接近中のニューオーリンズ。

 

 

病院で死の床に伏している老女デイジーは、娘キャロラインに、ある日記帳を自分に読み聞かせるよう求めます。

その日記帳にはベンジャミン・バトンという男の人生が綴られていました。
 

 


1918年のニューオーリンズ。

第一次世界大戦が終わった日の夜、ある男の子が生まれました。
しかしお産が重くて妻は亡くなってしまい、その子供をみた夫は驚愕!!
皴くちゃで、まるで老人のような赤ん坊だったのです。
ショックを受けた夫は、その子供をある老人施設の前に置き去りにしました。

老人施設を経営するクイニーとティジーの黒人夫妻は、赤ん坊に気付き、その姿に驚きましたが、子供の産めない体だったクイニーは、神様からの贈り物だと思い、ベンジャミンと名付けて育てることにします。

 

 

身体も弱く、長生きはできないだろうと言われていましたが、少しずつ成長し、車いすで生活できるようになり、やがて立ち上がれるようになりました。

 

 

 

 


1930年の感謝祭の日、杖一本で歩けるまでに若返ったベンジャミンは、施設に遊びに来た入居者の孫娘デイジーと運命的な出会いを果たします。

 

 

6歳の彼女は老人の姿をしているベンジャミンを見ても、全く驚きませんでした。

このエル・ファニングがもうメッチャ可愛いです!!
 



1936年、17歳も終わりに近づいたある日、若返りを続け元気になったベンジャミンは、世界を知るため、船で旅立つことを決意。

 

船乗りの仕事をしながら滞在したホテルで人妻との切ない恋と別れを経験したりします。

 

 

デイジーは、ニューヨークのバレエ学校のオーディションに合格し、バレエダンサーの夢に向かって歩みます。



1945年、26歳になったベンジャミンはニューオーリンズに帰り、大人の女性に成長したデイジーとも再会しますが、都会で洗練されたデイジーに戸惑い、二人の気持ちはすれ違ってしまいます。

 

 

その後、デイジーはパリで交通事故にあい、バレエダンサーの夢を断たれてしまいます。

驚いてかけつけたベンジャミンですが、デイジーから「こんな姿は見られたくない」と言われ、距離を置いてそっと見守ることしかできませんでした。

 

 


しばらくして、デイジーがニューオーリンズに帰って来ます。

ベンジャミンとデイジーの年齢が初めて重なり、ようやく身も心も結ばれるのでした。

 

 

新居で二人だけの甘い生活を送り、

 

 

デイジーは女の子を生みます。それがキャロラインでした。

 

幸せに満ち溢れた家庭生活のはずでしたが、ベンジャミンは若返り続ける自分に父親はとても務まらないと悩みます。

そしてキャロラインが1歳になったとき、ベンジャミンは父親の財産なども全て残して、二人の前から姿を消してしまいます。
 

 

 

 


十数年後、デイジーはバレエ教室を経営し、再婚もして親子3人で暮らしていました。
そこに20歳そこそこの若者となったベンジャミンが訪ねてきます。
「古い知人」と家族に紹介しつつ、感情を抑えられない二人は一夜を共にするのでした。
 

 

 

 

やがて、ベンジャミンは10代の少年の姿となると同時に記憶の大半を失って、自分のことさえ分からない認知症となってしまいます。

公園で衰弱しているところを保護され、所持品からデイジーの元に連絡がきました。

 

かつての老人ホームに入居した二人。

ベンジャミンは次第に幼児の姿となり、赤ん坊となり、老婆となったデイジーに抱かれながら永遠の眠りに就くのでした。


 

 

そして日記を読み終えた時、デイジーも息を引き取ります。

 

 

 

 

 

 

 

老人から若返っていくという数奇な物語ではありますが、淡々と日常が綴られていくので、さほど大きな盛り上がりもなく、ちょっと長いかなって感じはします。



デイジー役のケイト・ブランシェットが素晴らしかったですね!!
最近は、ちょっと男前なお姉さまって役が多かったですけど、今回は17歳から老人までを演じています。

 

若い時の溌剌とした感じと

 

 

熟年の色っぽさ

 

 

バレリーナの役なんですけど、ご自身も子供の頃に習っていて、この映画のためにも特訓したようで、特に難しいシーン以外は、全てご自身で踊っているのだとか。
ジャンプなどの技術云々ではなく、体のラインや手指の動きの滑らかさがとても美しかったです。


 

 

 

 

 

そして本作は美術賞、視覚効果賞、メイクアップ賞とアカデミー賞を三つ獲得しており、それを裏付ける特殊メイクやCGにも注目です。

例えばベンジャミンが推定60歳~80歳の頃の映像に、ブラッド・ピット本人は一度も映っていません。
体はその年齢に該当する他の役者のもので、顔はCG合成なのだそうです。

 

 

 


CGに関するメイキング

 

 

 

 


60歳ぐらいの見た目からは、老けメイクで演じていて、

 

 

 

ようやく実年齢の40歳ぐらいになったとき、

 

 

ベンジャミンとデイジーが同じ年齢になったときの2人は、本当にセクシーでカッコいいですね~~!
匂い立つような、って感じです。

 

 

 

 

 

その後、20歳ぐらいのベンジャミンが中年のデイジーを訪ねてくるところ。
若いころのブラッド・ピットを彷彿とさせるような美しさでしたけど、特殊メイクでも若返らせるのは難しいんですね。

 

 

かなり夕暮れの暗さでごまかしてましたが、ちょっとギリギリって感じでした。
 

 

 

 

 


壮大なお伽噺。

ベンジャミンとデイジーの生涯をかけた純愛がテーマでしょうか。
互いに求め合いながらも、別々の時の流れを生きなければならないふたり。
人生のちょうど真ん中で、やっとほぼ同じ年齢になったふたりは強く愛し合いますが、それも一瞬のこと。
やがてまた、時に引き裂かれてしまうのです。

 

 

 



とても驚いたのは、この作品がスコット・フィッツジェラルドによる短編小説を元にしていたことです。
そう!あの「グレート・ギャッツビー」のスコット・フィッツジェラルド。

 

「不老」と「富」という、人間が求めて止まない二大欲求。
しかしながら、不老のベンジャミンも、富を得たギャッツビーも決して幸せにはなれませんでした。
なにやら意味深ですね…






なお、フィッツジェラルドの原作はすでに著作権が切れているので、オンラインで入手できます。
https://manybooks.net/titles/fitzgeraldfother08benjamin_button.html



映画ではベンジャミンは、皺くちゃの老人のような醜い赤ん坊として生まれ出るのですが、小説では、「70歳になろうかという老人」が生まれてきて、産院のベビーベッドでいきなり「あんたがわしの父さんかい?」と「かすれたしわがれ声で」父親に聞くらしい(笑)
老人ホームの入口に捨てられることもなく、育ての母クイニーもいなし、生涯の恋に落ちるディジーも出てこず、わりとその時々で女性を乗り換えるとか。

 

ただ単に老人から若返っていく、という設定だけ採用したのかな?