ダンケルク | akaneの鑑賞記録

akaneの鑑賞記録

歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

 

戦争怖い

平和が一番

海岸での1週間と、船の1日、空の1時間
この設定に関しては特に違和感はありませんでした。
ドイツ軍の兵士が見えないことがさらに恐怖をあおります。
戦闘機は登場しますが、基本逃げている兵士しか登場しません。
そしてともかく音楽が素晴らしい。
ずーーーーっと常に緊張を強いられます。
名前も顔も残らない、無名の兵士たち。
プロフェッショナルな軍人というよりは、寄せ集めの足軽みたいな二等兵を演じるのも、いわゆる有名ではない(でも実力はバッチリ)な役者さんばかりで、余計にリアリティがあります。
まるでドキュメンタリーみたいです。
何の前触れもなく静寂の中、いきなり銃弾や魚雷が飛んできて、自分自身も戦場にいるような気持になってきます。
飛行機も船も攻撃を受けたらひとたまりもありません。
まさに空飛ぶ棺桶、海に浮かぶ棺桶に過ぎないと思い知らされます。
沈み始めたら成す術がないんです。

もう沈むのを見ているしかない。
誰も助けてくれず右往左往する兵士たち。
自力で生き残るしかない。そして運。
全編CDなしってのが凄いですよね
水没するシーンなど、こちらも溺れる気持ちになります

それにしてもケネス・ブレナーの存在感。
なんて制服が似合うんだろう。
桟橋に立ってるだけなんですけどね。
しっかり落ち着いて現場を仕切り、指示もバッチリ。

40万人の兵士を軍艦で救出するのは無理だから、民間船で救出したという話なのですが、ドイツ軍は民間船は攻撃しなかったのかな?
だって軍の船はほとんど爆撃されて沈んじゃってたから。
漁船とか観光船みたいな小さな船が大挙してやってくるんだけど、映画の中ではほとんど攻撃されてないんですよね。

実際は沈んじゃった船も結構あったのでしょう。

 

「1Day 海」の主人公である紳士。

途中の海上で救出した兵士は「絶対ダンケルクに戻るのは嫌だ」とパニックを起こし、同船していた息子の友人を突き飛ばして怪我を負わせてしまいます。
「早く病院に」という気持ちもありつつ、もう引き返せないところまで来ていたため、そのままダンケルクに向かい大勢の兵士を救いますが、その男の子は死んでしまいます。
自身の長男も戦争で失くしてしまっているのに「我々が戦争を起こしてしまったんだ」と責任を感じ、兵士の救出を全うするのです。
戻ってきた兵士たちが「絶対人々には受け入れられない。石を投げられる(逃げ帰ってきた)」と思い詰めているのが悲しい。
でも実際は温かく迎えられたのでした。
イギリス軍は、兵器やその他、莫大な量を置き去りにしてきたため、その後復活するのに3年ほどの年月がかかったそうですが、一番の財産である人材を30万人も救ったチャーチルの政治力が素晴らしい。
兵器は作れるけど、兵士は作れない。
日本だったら真っ先に「お国のために死ね」と言われるでしょうね。

ドイツ軍(ヒトラー)がこの撤退に対して、一時休戦というかそれほど深追いして攻撃しなかった理由については諸説あるようですが、このダンケルクの戦いがその後の第二次世界大戦の勝敗を決する大きなターニングポイントになったそうです。
そして英雄譚として受け継がれるイギリス。

対して無様な敗戦と受け継がれるフランス。
ここでも大きな隔たりがあります。

トム・ハーディだけはちょっとヒーローです。
燃料がなくなってしまっても、グライダーのように飛びながら敵機を撃墜し、なんとか砂浜に着陸できたけど…最後は拉致されちゃったのかな。

 

ともかく凄い映画です。

この時代、色々考えさせられますね。