フエルサブルータ WA! | akaneの鑑賞記録

akaneの鑑賞記録

歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

アルゼンチンの前衛パフォーマンス集団が創った観客一体型ショー。
日本での公演は、2003年の赤坂以来2回目。
オフブロードウェイでも話題のようだし、半額チケットが買えたので行ってみましたが…

はっきりってそれほどでした。
ちょっと期待しすぎたかもしれません。
セットは凄い大掛かりだし、奇想天外なアイデアも面白いんですが、構成というか演出がイマイチ。
セットとスタッフだけアルゼンチンから来ていて、パフォーマーが日本人というのもね。
オーディションで選ばれた20代の男女が、アルゼンチンで2か月リハーサルを積んで出演しているそうです。
とっても頑張って盛り上げているんだけどいかんせん、客席はそれほど盛り上がらない。その必死さが見ていて痛々しいというか、観客との温度差にいたたまれなくなる。
クラブのノリなのかパフォーマンスを見せるのか、はっきりしないので、観客もどう盛り上がっていいのかわからないって感じ。
もっと「クラブ」っぽさを押し出して、そういうパリピが集まるイベント系にした方が良いと思う。
普通の観客は特に声も出さないし、突っ立ってみてるだけですからね。
スマホ撮影OKというのも、おそらくSNSへの発信を目論んでいるんでしょうけれど、どうしても撮影する方に気がいって参加することに集中しないという弊害も。

 

以下、盛大にネタバレです。

 

パナソニックがスポンサーなので映像や光の演出は凄く綺麗です。
ホールに入る前からかなりのスクリーンが導入されていて幻想的。

 

全体的な構成は前回と同じ
日本公演を意識してなのか、甲冑姿での合戦、般若の面、和太鼓、芸者など、和のテイストでまとめられています。

 

最初は客席内が陣屋のような、布で仕切られた狭い空間に入ります。
家紋や城、草木や桜など、屏風絵のような雰囲気。
なんですが、これがちょっと学園祭の趣きなんですよね…少し嫌な予感が。
そこに忍者の扮装をしたパフォーマーが拍子木を打ち鳴らしながら歩き回り、いよいよ幕が全部取り払われると
ステージには巨大な般若と能面、そして和太鼓のセッション。

 

次に男女4人がワイヤーに吊られて観客の上を飛びます。
と同時に紙吹雪とミスト状の水も降ってきます。

でもワーって言いながら、ブンブン行ったり来たりするだけで、特に進展はありません。

フロア中央にベルトコンベアーが出現、甲冑姿の男が立っています。

上から大量の水が降り、正面から突風が吹く中、ひたすら走り、前方から飛んでくる紙吹雪、幕や扉、段ボールの壁などを突破していく「走る男」
4人ほど他の武将も現れますが、特に立ち回りなどのパフォーマンスはなく
ともかく1人がひたすら走るだけ。

 

ステージに幕が張られ、こちらも上から大量の水が流れ落ちる中、ワイヤーで吊られた男女が幕の上でパフォーマンス。

垂直の幕の上を走り回るわけでもなく、最後は男性がワイヤーを持って、女性を何度も幕に叩きつけるという謎な動き。

ステージに水槽のようなケースが現れ、3人の芸者ガールがパントマイム的なダンス。

 

レールに衣装と本体が固定されていて、ジェットコースターの宙返りのように反転して上下逆さまになる。

天井から巨大な幕が降りてきて、様々な映像が映し出される。これは綺麗。

 

幕の所々に穴が開くようになっていたので、おそらくそこからパフォーマーが降りてきて、観客を吊り上げたりするような演出があったのかと思われるのですが、なにかトラブルがあったようで何もなし。

フロアに屋台のような山車が現れて、中でパフォーマーが踊り狂い、その屋台をぶっ壊し、椅子やテーブルを投げる…訳には行かず、控えめに下に落とす。

巨大なワゴンのようなものも現れて観客をそれに乗せて一緒に踊ったりもするんですが、なんとなく遠巻きに見ている観客。
そのうちDJっぽい人がステージに現れて一気にクラブっぽく無理やり盛り上げる。

上から巨大プールが降りてきます。

プールと言っても、深さ80cmぐらいの巨大な透明のビニールプールで、水はほとんど入っていません。
人が動いたり傾いたりすると、ザ~っと波になったり中央に水が溜まったりする程度。
4人のパフォーマーが最初に着物を脱いでお風呂に入るような小芝居をしているのがよくわからない。
日本だからお風呂なんですかね。

そのあともプール内を飛び跳ねたり平泳ぎのような形で動き回ったり
まぁ縦横無尽に動くのですが、こういうのこそ綺麗に振り付けされていないとグダグダで見ていられないですね。
ベターっとカエルのように張り付いて動くのを下から見上げているのであまり美しいとは言えないです。

プールが観客の頭上すれすれまで降りてきて、底面ごしに触れ合ったりもできます。

で、そのプールが上がって行って暗転したところでなにやら不穏なアナウンス。
どうやらメカニックの故障で、この先のパフォーマンスができないようなんですが、はっきりした説明もなくなんとなく待たされる。
突如最初の和太鼓のシーンが再現され頑張ってエンディングを盛り上げようとするも不発。

スタッフが登場して、テクニカルの不備なので、お詫びとして出口でご招待チケットを1人1枚ずつ配布するとのこと。
パフォーマーが口々に「すみませんでした!」「絶対もう一度見に来てください!」とかいうのも、なんか素人っぽくて興ざめです。

プロのショーでそんなセリフありえないでしょ。
非常に中途半端な気分で終わってしまいました。
これ、半額チケットだったからまだしも、定価で買ってたらブチ切れるレベル。

アイデアは良いんですよ、どれも。
斬新だし、今までのショーでは見たことのないものだし。
でも出オチなんだよね。
最初だけ「わー!」って思うんですけど、その先の演出が稚拙なので、1分もすると飽きてしまう。
パフォーマーの力量も問われるかな。
ストーリー重視なのか、ガンガン音楽流してクラブのノリなのか、じっくりパフォーマンスを見せるのか、その意図するところが曖昧なので、構成がすごくバランス悪い。転換もスマートじゃない。
それに南米の熱狂的な民族性みたいなのがないと、客席が一体になって盛り上がらないですよね。
こういうのは日本人に向かないと思う。
そう考えると、やっぱりシルクドソレイユは凄いなと。

ちょっとモヤモヤ気分で山手線に乗ったら、「新宿~池袋間でトラブル発生」と目黒でストップ。
動き出したと思ったら「浜松町で人身事故」と恵比寿でストップ。
なんだかトラブル続きの日でした。