松竹座 七月大歌舞伎 夜の部 | akaneの鑑賞記録

akaneの鑑賞記録

歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

 

夜の部!
まずは舌出三番叟。
鴈治郎さんと壱太郎くんの親子共演。
厳かな感じはあったけど、わりとおとなしい感じ。
以前見た二人三番叟なんかは、もっとアグレッシブだったような…。


さぁいよいよ盟三五大切ですよ!!
染五郎さんのチャラ男っぷりが良いですねーーー!!
紺地の着物がすてき~。
でも最初の船のところは、もっと小万とイチャイチャしてほしかったな~。
いやイチャイチャというより、もっと大人な感じでいやらしく攻めて欲しかったですよ。
時蔵さんに遠慮かな~?
濃厚なラブシーンはしないアイドル、みたいだとちょっと物足りない。
三五郎ってもっとゲスな野郎なんじゃないかな~と思うんですが、染五郎さんだとちょっとお行儀良くてカッコよすぎる。
どっちかっていうと、染五郎さんは六七八右衛門のタイプですよね。
まぁ後半は主従関係も出てきますけど、最初はもっとこってりしたワルが良かったな。

この芝居が、ここまで忠臣蔵と関わっているとは知りませんでした。
四谷怪談を見ても思うんですが、南北はよっぽど「仇討ち、忠義なんてくだらない」と言いたかったのかなぁ。
人を何人も殺していようと、元々は武士だから罪にも問われず、金さえ用立てできれば仇討ちに参加できるっていうのも、ずいぶん皮肉な話です。
そんなことが美談になってしまうのが許せなかったのか、ただ単に「忠臣蔵」のヒットが面白くなかったのか。
100両のお金が巡り巡ってというのは、三人吉三みたい。
源五兵衛 実は討ち入りで最も活躍したともいわれる不破数右衛門なのも、なかなかぶっ飛んだスピンオフ設定。
伊右衛門にしても源五兵衛にしても、討ち入りに必要な百両調達がトラブルの発端。忠義と現実の狭間で苦しみ、結局好きな女を殺してしまい、何人も死者が出るという悲劇。

仁左衛門様の源五兵衛。上品でおっとりしていて、お育ちの良い雰囲気。

道具屋に家財道具を洗いざらい持っていかれても「良い良い」ってニコニコしてて、その割には六七八右衛門に「畳がなくなっちゃったから、なんか敷くもの持ってきてよぅ!」って無理言ったりして、ちょっと世間知らずなおにいさんです。
だからコロッと小万に騙されちゃったんだよね~。
最初はほんわかしててとても殺人鬼とは思えない源五兵衛さんですが、小万に裏切られたと知ってダークサイドに堕ちてしまいます。
でも「殺人鬼・サイコパス」というよりは、悲しみの方が大きくて…つらい。
源五兵衛の復讐を恐れて虎蔵の家で雑魚寝しているところに、源五兵衛登場!
伊勢音頭のように、丸窓の障子にシルエットが!!
そして次々と5人を惨殺!三五郎と小万はなんとか逃げ延びますがそのあとをヒタヒタと追っていく花道の仁左衛門様。
メラメラと復讐に燃えるのではなく、すでに亡霊になってしまったような源五兵衛には、この世のことなんてもう何も見えてないみたい。

 

小万と三五郎が深川から逃げて四谷に越してくるシーンだけ、ちょっとコメディです。
「伊右衛門とお岩さんが住んでいた長屋」とか、自分のヒット作パロっちゃう。
大家が幽霊のフリをして店子を怖がらせて敷金ふんだくるとか、とんでもないことしてるのが小万のお兄さんだったり。
六七八右衛門が「こんな恐ろしいところ住めません!」って言ってるくだり、どうも染五郎さんで見たことあるような気がするんだけど…うーん、思い出せない。

殺しの場面は、それはそれは凄惨なんだけど、美しい場面でした。

女殺油地獄とか牡丹灯篭にも共通する殺しの美学が、仁左衛門様だとなお一層際立って、形の美しさとドラマ性が高まります。
首を懐に入れて持ち帰る時も、本当に愛おしそうに抱きかかえているんですよね。

 

 

それが、このポスターです。なんともいえない表情。
外に出ると雨が降っていて、小万の首が濡れないようにわざわざ戻って傘をさして帰っていく。
その傘が超絶ボロボロなのも哀愁。
やっと自分のものになったという安心感というか、もう小万のとこになると善悪の区別もつかないんだな~って。。。
しとしと降る雨の中、花道を歩く姿をみんな固唾をのんで見つめていました。

 

そして自宅に首を持ち帰ると、仏壇の前に供えて、ご飯を食べる!!

 

いや、なぜそこで食事。。。

 

なんか夫婦っぽくご飯食べたかったのかしら。
で、小万の首にも食べさせてあげようとすると…!

かっと目を見開き口を開けた-----!!

ビビったーーーー!
いや、やけにリアルな生首だな~とは思ってたんですよ。

(この時点で通常の観劇ではないね)
机に置くときに本人とすり替えるんですね!すごい演出!!
初めて見たので、南北さんも超満足!なリアクションをしてしまいました。


その後、源五兵衛の罪は六七八右衛門が被り、主従関係が判明した三五郎は切腹し、なんやかんやとお家騒動の時は、割と正気な源五兵衛さん。
最後は「これぎり~」にて終了。
松也さんの六七八右衛門はとっても良かったです。

こういう必死で健気な振り回されキャラ、似合いますね。

歌舞伎を見ていると、今より相当「人の死」というものが身近だったんだなと思い知らされます。
病院で死ぬ人もいないし、行き倒れや水死体も一杯あっただろうし、殺し殺されというのも日常だったんでしょうか。
河原のさらし首をみんなで見たり、西洋だって民衆が見ている前でギロチン処刑も当たり前
血なまぐさいですねー。

普通にドキュメンタリーにしてしまうとあり得ないストーリーですが、それを芝居として成立させる歌舞伎の力、仁左衛門様の魅力を堪能しました。

これだけの芝居を観ることができて本当に感動です。
この芝居、引き継いで行ける役者さん、いるでしょうか。
染五郎さん!頑張って!!