パトリオット・デイ | akaneの鑑賞記録

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2013年4月15日に発生したボストンマラソンを標的にした爆弾テロを題材にした映画。
約100時間で解決したその経緯を再現していきます。
主演:マーク・ウォールバーグが演じたボストン警察巡査部長、トミー。
「テッド」のジョンと同一人物とは思えない…凄い!
彼だけがフィクション、というのも効いています。
つまり彼は、多くの名もなき警官たち、ボストン警察の象徴なのでしょう。
実話に忠実に作られていますが、彼の目線で進めることによってドラマ性が生まれ、単なるドキュメンタリーにならず、観客の感情に訴える作品になっています。

州知事、警視総監やFBI特別捜査官など実在の人物が次々に登場、爆発から数時間後にはFBIが到着して巨大な廃工場が即座に捜査本部となり、爆発現場を再現、全ての遺留物がそこに置かれ、検証が始まります。

スパイ映画だと、防犯カメラであっという間に顔認証ができて自動的に追尾が始まったりしますが、地道な防犯カメラチェックでようやく犯人を割り出し、地元の地理に詳しいトミーとともに「今ここで写っていたら、1分前はどこにいる?」と犯人の足取りを想定して探り、顔が鮮明に映っている画像を見つけ出して行きます。
その顔写真がマスコミに漏れてしまい、発表される前に犯人と断定して公表するかどうか、などの苦しい決断を迫られたり、逃走した弟を追って郊外の町で深夜突然始まった銃撃戦なども、予定調和的なアクションシーンではなく、現場の警官も何が起こっているか分からずパニックになりながらの応戦、手持ちカメラの不安定さなどが臨場感一杯で、見ている方もずっと体に力が入ってしまいます。

犯人は、若い兄弟。思想主義に凝り固まった典型的なテロリスト
狂信的ではありますが、行き当たりばったり的なところもあり逮捕に至りましたが、これが組織的なプロの犯行だったらもっと被害は大きく、逮捕もできなかったかもしれません。
ただ、一般市民レベル、普通に暮らしている若者が見よう見まねで爆弾を作ってテロを決行できる、ということの方が怖いですね。

アメリカ万歳!的な印象を持つ人もいるでしょうけれど、そこには確かに命や体の一部を失ってしまった一般市民がいて、わが身を顧みず犯行現場に直行した警官がいて、不眠不休で犯人確保に携わった多くの人員がいて、この難しい情勢に対して速やかに決断実行した上層部がいたことは確かです。

今も各地で発生しているテロ事件。
2020年の東京オリンピックを目前にし、日本でもいつどこでテロが発生するかわかりません。
その時、今の日本にどれだけの対応能力があるんでしょうか?
共謀罪法案で揺れている国会をみながらそんな危機感がひしひしと迫ってきました。

デリケートな国際問題である本件を、たった4年でこうして映像化し、全世界に配信した。
そのことはものすごく大きな意味があり、素晴らしい行動力だと思います。
映画のラストには、実際に捜査にあたった方達の「絶対テロには屈しない」という力強い言葉、そして片足切断などの被害を受けたご本人たちが登場してのメッセージ、亡くなった方たちを実名で顔写真を公表する意思、これがアメリカだなと思いました。
日本ならきっと「遺族の気持ちも考えて」と消極的になってしまうはずです。

「ボストン ストロング!」

 

このような熱い市民意識と団結力は、日本人には無理かもしれません。
でも警察や自衛隊の方々はきっと粛々と任務を追行してくれるのでしょう。
ある意味「シン・ゴジラ」と対照的な映画だと思いました。