メットガラ ドレスをまとった美術館 | akaneの鑑賞記録

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歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

しばし休憩して、シェークスピアで疲れた頭を休めてから、渋谷文化村ル・シネマで「メットガラ」を。


ニューヨークのメトロポリタン美術館で、アメリカ版「VOGUE」編集長であるアナ・ウィンターが毎年主催する「メットガラ」の舞台裏を追ったドキュメンタリー。2015年5月に同イベントが特別展のオープニングを兼ねて行われるにあたり、 アナとキュレーターのアンドリュー・ボルトンが中心となり一流デザイナーらの協力を得ながら準備に奔走する様子に密着。一人あたり25,000ドル(約285万円)と高額な席料にもかかわらず600席が瞬時に満席になるのは、彼女の人脈と情熱の賜物だ。(この収益金はメトロポリタン美術館服飾部門の1年間の活動資金に充てられる)

「ファッションが教えてくれること」を見て以来、アナ・ウィンターは大いなる憧れの存在です。ファッションをアートの域に高め、なおかつ商業的に成立させた手腕は本当に素晴らしい。
もちろん今回も密着ですから色々な場面で登場していますが、ちょいちょい「プラダを着た悪魔」キャラが炸裂していてステキです(笑)
あまりにもズバっと切り捨てるので、時々ミーティングが凍り付いたりもしますが、プロジェクトを進めていくには、ともかく素早い決断が必要ですし、色々な立場の人間がそれぞれの思惑で意見を通そうとするのですから、自分の感性に絶対的な自信を持って舵取りをしないと収拾がつきません。


展覧会のテーマは「鏡の中の中国」。
多くのデザイナーが中国をイメージして作ったオリエンタルなドレスが集められ、その美しさ豪華さと言ったらもう言葉になりません。
鮮やかな色彩や刺繍を施されたものだけでなく、青と白の磁器をイメージしたものなどもあります。

またドレスの展示方法が桁違いの斬新さ。
ドレスのテーマに沿って部屋の装飾を変えるのですが、何千本ものアクリルの柱に光を当てて竹林に見立てたり、水中に割れた鏡を入れて光をきらめかせたり、宮殿風のレイアウトだったり、映画を流したりと、もうどれほどの英知がここに集結しているのだろうと…。

キュレーターのボルトンはアナとは対照的に穏やかで裏方に徹していますが、アイデアは常に攻めていますし、決めたことをやり遂げる手腕はさすが。
こういうイベント準備はどうしても遅れが出るものですが、スタッフたちも最終的には何日も徹夜し、当日の朝まで作業が続きます。

メトロポリタン美術館のファッション部門だけでなく、中国文化の部屋にもドレスを展示するのですが、美術班のスタッフは「ドレスが目立って展示品が霞むようでは困る」とか、それぞれの思惑が錯綜します。
テーマが中国ということで、政治的に難しい部分も多々あり、ウォン・カーウァイが監修にあたってあまり政治的感情を刺激しないようにとダメ出ししています。
中国側のマスコミもインタビューをするのですが、ともかく「なぜ昔の中国ばかり取り上げるのか、現在の中国が反映されていない」と挑発的で、ちょっと理解できませんでした。

大局が見えていなくて、とりあえず難癖つけてるみたい。
現在の中国人デザイナーのドレスだって何着も展示されているのにね。

洋服は日常的に着るものであり、芸術か商品かと論争されることもありますが、今回の展示品を借りるために、イヴ・サンローランののメゾンを訪ねたシーンで、彼のコレクションが厳重な倉庫に5000~6000点も保管されているのには驚きました。さすがフランス!

そしていよいよクライマックス「メットガラ」本番。
レッドカーペットを敷き詰めた長い長い階段に、次々に現れるセレブたち。
彼女たちもそれぞれ、有名デザイナーのオートクチュールで贅を凝らしたドレス姿を競います。

 

そして今回のメインゲストはリアーナ!果てしない額のギャラだったようです。
あれだけのスターたちを相手に圧巻のライブ!

レディ・ガガだって観客ですからね!

ティファニーやミラノ座のドキュメンタリー映画も見ましたが、映画としての出来が全然違います。
きっちり舞台裏の仕事ぶりを見せながらもキラキラワクワク感も満載で、全てが圧倒的でした。
そういうところもセンス抜群だなと。

 

 

と同時に、すこ~しだけ企画なんぞに関わっている身としては、なんかもう完膚なきまでに叩きのめされた気もします。
あまりにも手の届かない世界、レベルなんだと思い知らされて…。