不信~彼女が嘘をつく理由 | akaneの鑑賞記録

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歌舞伎や演劇、映画、TVドラマなど鑑賞作品の覚書

 

どんよりした気持ちを引きずりつつ池袋へ。
ご飯を食べて気持ちをリセットして東京芸術劇場へ。
プレイハウスは良く行きますが、シアターイーストは初めて。
非常にこじんまりとした小劇場の真ん中にドーンと平らな舞台があり、スツールが6脚。

このスツールが自動で色々なポジションに動くのですが、どうもコンピューター制御で大変高価な仕組みらしい!
舞台の両端にはボードがあって、小道具などを置いてあります。
全体的にモノトーンでまとめられたスタイリッシュな雰囲気。
客席は舞台を挟んで両側に7列ずつぐらい。
本当に間近で役者さんの表情まで見られる贅沢な空間です。

この芝居、メチャクチャ面白かったです!
ごく普通の夫婦の平凡な生活。
そのさりげない会話の中に、時々挟み込まれていく突拍子もない展開。
全ての会話や行動が様々に絡み合ってお話が展開していく高度なミステリー。
でも笑いもたっぷり。
実力ある役者さんたちの芝居を小劇場でじっくり観られる贅沢。
こういった知的欲求をとことん満たされるようなお芝居は、本当に刺激的でワクワクします。
ごく淡々と普通に演じているのに、こちらはハラハラしたり爆笑したり、三谷さんの脚本が冴え渡っていました。
「エノケソ」は全然つまんなかったけど、やっぱり三谷さん天才だわー!


名前も存在しない、お隣同士の二組の夫婦。
何にでも興味を持ち首を突っ込みたがる若い妻 優香 実は元教え子。
主人は事なかれ主義な学校教師 段田安則

もう一組は、子どものいない中年の夫婦。
クレプトマニア(万引き常習)の妻 戸田恵子
主人は一見非常に真面目な公務員 栗原英雄

 

真田丸での真田信尹役が素晴らしくてファンになった栗原さんですが、そのまろやかなお声と大人な佇まいが素敵でした。
一番まともそうな雰囲気出してますけど、彼もやはり微妙にズレているんですよね。
戸田恵子さんと段田さんの巧さはもちろんのこと、これだけの芸達者の中で大丈夫かなと思った優香さんが、凄くハマリ役でびっくりです。
長年バラエティでコメディセンスや笑いのツボを鍛えられてきたんだな~と。
そっとしておけば良いことに首を突っ込み、波風を立て、物語を動かしていく役目を生き生きと演じていてとても魅力的でした。

 

彼女がひっかきまわしたがために崩壊してしまった中年夫婦。
残った若い妻の夫婦も、お互い爆弾となる秘密を抱えながら、何事もなかったような顔で、日常は続いていく。
色々な伏線を回収し、不穏な余韻を残しながらのエンディングには思わずうなってしまいました。
大人の上質なひとときを過ごした、という感じです。
赤坂でのダメージがかなり癒されました。
今年上半期No.1かも!!


1月期のドラマ「カルテット」でも同じような感覚がありました。
どちらも二組の男女、4人が織りなす物語です。
少しずつ駆け引きがあり嘘があり、その脚本の妙と演出の見事さと実力ある役者さんたちの素晴らしい演技。
お芝居の醍醐味はそれにつきますね。

エンディングで歌われていた椎名林檎さんの「おとなの掟」

ああ白黒付けるのは恐ろしい
自由を手にした僕らはグレー
‥おとなは秘密を守る‥

この歌詞の断片が思い出されます。



説明ばかりで中身のないテレビドラマには本当に飽き飽き。