底辺への競争と中世化 | 「国家戦略特区」blog

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経世済民・建築論『底辺への競争と中世化』

古代ローマで、ウィトルウィウスが書いた世界最古の建築書として知られる建築十書には、工事費の見積についての記載があるそうで、予算の3割オーバーまでは施主は建築家を訴えてはならない!との内容だそうです。

これは約2000年前のローマでは、予算の3割まで見積がオーバーしても良いという社会常識があったと解釈出来ますし、逆に古代ローマでも建設コストを巡ってトラブルが一般的に起きていたのを暗示します。



建物は特定の敷地に、特定に施主の為につくるオーダーメイド品です。既製品とは違う特注品なので、どうしても予算に対してブレが出易い特徴があります。特に建築家の設計する「作品」の場合、その差が大きく出易いものです。

しかし、べらぼうなコストを掛けて作るプロジェクトは稀で、むしろ少ない予算でいかに良い建物を実現するかが、ローマ時代から現代まで続く、建築家の能力の大半を占めているといっても過言ではありません。

2000万円の建物なら3000万円の見積が出る場合もありますし、1億円なら1億5千万円、100億円なら150億円、今話題の東京五輪の新国立競技場も予算に対し、倍以上の見積が出たと紛糾していますが、驚く話ではありません。



東京五輪については、予算の大幅増と設計変更で対応しているそうですが、正に歴史的なモニュメントなので、もっとお金を掛けても良いと思いますが、一般のプロジェクトでは許される話ではありません。予算に対し倍の支払いが出来る施主はいませんので、何とか予算+アルファのコストに抑えるのです。

上手く、見積が収まった場合も、そう簡単には進みません。これは実感なのですが、私の設計した建物で儲けた建設会社は無いと思います。つまりクライアントから預かったお金以上に工事にお金を使わせてしまうのです。そうで無ければ良い建物は作れません。

よく近江商人の三方よしの話を聞きます。「売り手よし、買い手よし、世間よし」だそうです。建築の場合も「施主よし、設計よし、施工よし」が理想ですが、ナカナカそうはならないものです。



私も、何とか施工者が損をしないように色々工夫したケースもあるのですが、上手く行きませんでした。今では割り切って良い建物を作ることだけに集中しています。

というのも、普通ではない良いものを作ろうと思えば、当然ながらエネルギーを使ってしまうものです。多くの人々を巻き込んで力を束ねれば、お金以上に労力が掛かってしまいます。これはジャンルを問わず良いものが生まれる時の宿命です。

私の莫迦みたいな結論としては、仮にひとつの建物でエネルギーを掛けすぎても社会全体で経済が上手く廻っていれば、吸収出来るのではないかと考えています。これが身勝手ながら私が経世済民の思想を広めたいと思う理由です。


これは噂話なのですが、ある大手ゼネコンが意欲的なデザインの超高層ビルの工事を受注したところ、そのゼネコンの支店の利益を全部、ひとつの建物で使い切ってしまったそうです。プラスマイナス・ゼロでプライスレス!ですね。

スーパーゼネコンならこんな芸当も出来ますが、現在のデフレ下で、一般の施工者がそんな事をすれば、死に繋がります。結局は、政府が仕事をつくり、それをバラまいて、経済を廻して、適正な利益が確保される中で、余計なものであっても許容される社会にしない限り、底辺への競争が加速してしまいます。

建築家の村野藤吾は、働き盛りの40代が大東亜戦争の時期で、全く仕事が無く、日々読書をして過ごしたそうです。戦争をしている国や、食べる事に精一杯の国では、建物を作るどころではありません。

新興国でも一部の富裕層が、質の高い建築をつくることもありますが、少なくとも自国の建築家がそれを手掛けることはありません。やはり社会の安定と継続的な経済成長が不可欠なのです。



公務員などを除き、多くの人々は、激しい自由競争に晒されています。それ自体は悪くは無く当然のことです。しかし、政府までも経世済民の思想を忘れ、無駄を削れ一本やりの、ネオリベ政策を取り続ければ、国全体が疲弊してしまうでしょう。

圧倒的な文明を誇った古代ローマも、やがては衰退し、ヨーロッパは中世に突入します。優れた技術も失われルネッサンスまで人々から忘却されてしまうのです。日本のネオリベ政策の目指す道は、日本の中世化では無いでしょうか?それを防ぐか否か、私たちは岐路に立たされていると感じています。

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