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われは河の子

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 わが国にキリスト教を伝えたスペインの宣教師、サン・フランシスコ・ザビエルの名前を英語読みすると、セント・フランシス・ゼーヴィアになる。

 なおザビエルの肖像画の河童頭をトンスラというが、この絵は後世の日本人画家が想像で描いたと推定され、本物のトンスラという髪型は、ザビエル図のように耳の上の毛を残すことはなく、頭の周りだけを輪のように刈り上げる物である。


 これも河童汎世界論の一つの傍証としたい❣️


 今日の北海道新聞一面報道で、11月末の時点で道内の人口が68年ぶりに500万人を切ったと発表されました。

 少子高齢化による自然減が自然増を上回るスピードで進行しているとのことです。

 道内の人口は1997年末に569万人に達したのをピークに減少を続け、ついに500万人を切ったことになりました。


 北海道は面積では47都道府県中で最大ですが、人口順ではトップの東京都以下、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県、千葉県、兵庫県、福岡県と続き、その次の第9位となり、次点の静岡県は300万人台とぐっと水を開けます。

 人が多ければいいという単純なものではないですが、限界集落が増え、地域社会の維持が困難になっていくことには危惧を覚えます。


 北海道を旅行した人はご存知でしょうが、観光で訪れる都市部はそこそこですが、そこを一歩で外れると、広々スカスカですし、都市部も札幌、北広島千歳以外は空洞化が目立ちます。

 大学進学後は東京で暮らし、その後17年間もタイに渡って昨年還暦を過ぎてから故郷函館に戻ったキョーイチなどは、全盛期に32万人いた函館市が、平成の大合併で周辺町村を合併しても、現在では23万人余しか人口がないのを嘆いています。


 私の家は190万都市札幌市の一角ですが、2階の窓から見える風景はこの有り様です(これはこれで大切にしたいですが)


 皇帝の嗅煙草入れ ディクスン・カー

 1942年 旺文社文庫 昭和51年


 北フランスの海岸保養地ラ・バンドレッド。観光シーズンも終わりに近いある夏の深夜、かつての熱心な社会事業家であり、現在は引退して骨董趣味に打ち込んでいるモーリス・ロウズ卿が、書斎で何者かに無惨にも後頭部を打ちのめされて惨殺される。その日ある美術商から入手したばかりの、ナポレオン皇帝の遺品という時計型をした高価な嗅煙草入れも粉々にされていた。

 美貌で金持ちの女性イブ・ニールは、細い通りを隔てた自分の部屋から目撃したことを話さない状況にあった。

 離婚した元夫のネッド・アトウッドがその時彼女の寝室に一緒にいたのだ。

 イブ・ニールは離婚後向かいの家に住むロウズ家の人々と仲良くしており、ロウズ卿の息子のトビイと恋仲になり婚約していた。

 離婚後しばらくはアメリカに行っていたがフランスに戻ってそのことを知ったアトウッドが復縁を迫って、結婚中に預かって返していなかったイブの家の鍵を使って深夜寝室を訪れていたのだ。

 窓越しに向かいのロウズ家を眺めていたアトウッドが、ロウズ卿が嗅煙草入れのようなものを調べていることをイブに報告していたが、突然卿が何者かに襲われたことを告げる。驚いたイブが窓に駆け寄ってロウズ家を見てみると、茶色の手袋を着けた手が書斎のドアを閉めて出て行くところを見ただけであったが、元夫は犯人の顔も見たという。しかし、婚約中の自分の寝室に元の夫とはいえ1人の男性がいたことを知られるととんでもないスキャンダルになり、婚約も破談になりかねないと思ったイブは、アトウッドを追い返そうとするが、誤って彼を階段から突き落としてしまい、彼は鼻血を出す。なんとか彼を外を追い出したが、なぜか彼女も自分の家のドアが閉まって自動で鍵が掛かり家から閉め出されてしまう。

 そうこうしているうちにも、ロウズ夫人によって卿の遺体が発見され、通報を受けて警察がロウズ家に押し寄せてくる。ロウズ家の娘ジャニスとトビイはイブに助けを求めて道路を渡って来る所を警官に阻まれる。イブはアトウッドから返してもらった鍵が部屋着のポケットに入っていたことに気づいて、見つからないように玄関に周りそれを使って家に入り、2階の自室に上がる。見るとガウンにアトウッドの鼻血が付いていたので、顔や手を洗って大人しくしていた。

 ロウズ家には卿の夫人でいつもイブを頼りにしているトビイたちの母のヘレナとその兄でこれもイブには暖かい目を向けているベン伯父が家族として住んでいた。

 警察が捜査に乗り出し、最近に現場で兄妹を押し留めた警官が、イブの家の戸口で血の染みのついた部屋着の紐を拾ったことで、イブの立場に影が差し、さらに彼女の部屋着から、われた嗅煙草入れの破片が付着していたことから彼女の嫌疑は一層深まる。アトウッドが証言してくれれば、彼女の嫌疑は一時にして晴れるのだが、その彼は階段から落ちたショックで脳神経を起こしており、ホテルに帰ってから昏倒して人事不省に陥る。

 やがてイブはロウズ卿殺害の容疑者として逮捕される。

 捜査と逮捕の指揮を取る警察署長のゴロン氏と、その友人でイギリス人の心理学者ダーモット・キンロス博士の意見は食い違う。キンロス博士は必ずイブを救ってみせると約束する。


 カー中期の名作。名作たる故に、数々の文庫に収録されたが、海外ミステリ翻訳に定評があった創元推理文庫やハヤカワミステリ文庫版ではなく、なぜあまり海外ミステリに強くはない旺文社文庫版などを選んだのかは、大昔のことすぎて忘れたが(多分中学生が高校生)、改めて読み返してみると、これがカーか?と思えるほど読みやすい。だいたいカーは本来の文章が難解なのか、昔から誤訳悪訳が多いことでも知られ、古いハヤカワ版などでも非常に読みにくい作品が多いが、これはサクサクと読めた。

 カーの持ち味であるオカルト趣味や魔術志向などもなく、これも特徴の極端なドタバタも起こらず、一見単純な撲殺事件を最初は女性主人公の目を通して語られるせいか、不可能犯罪の王者カーの扱ういつもの事件より簡単に思えることで読みやすく感じるのだろう。


 しかしながら、ここでも魔術師カーはとんでもないトリックを仕掛けている。それは犯人が作中で仕掛ける犯行トリックである(これは非常に単純な心理的なものである)とともに、作者カーが読者に対して仕掛けるトリックでもあり、その大胆さは馬車の中のキンロス博士とイブの会話に集約されており、さらに本のタイトルに「皇帝の嗅煙草入れ」そのものを持って来たことに窺える。

 これがカーの自信とさらなる仕掛けなのである。

 初読が印象的だったので、犯人は最初から覚えていたが、読み進めていくうちに、どうしてもその人物が犯人ではあり得ないと思う始末だった。

 そしてその大トリックを支える幾多の伏線回収の見事さには、やっぱりカーの実力を思い知らされた気分だった。