マッキントッシュの男 デズモンド・バグリイ
1971年 ハヤカワ文庫 昭和54年
プロの泥棒である34歳の南アフリカ人のジョセフ・アロイシアス・リアデンは、謎の男マッキントッシュに仕事を依頼されて生まれて初めてロンドンの地を踏んだ。
マッキントッシュの事務所にはミセス・スミスという美貌の秘書がいて、彼女もマッキントッシュの計画を知っているどころか、それを立案したのが彼女だというのだ。
それによるとイギリスの極めて優秀な郵便制度を利用して、12万ポンドのダイヤモンドをコダックの黄色いフィルムの箱に入れて郵便で密輸しようとするグループから盗み出すというものだった。
マッキントッシュはフィルムが届けられ、そこで強盗を実行する予定のビルの同じ階に一部屋を借り、キディッカー玩具会社という架空の会社を設立し、リアデンはそこで待機することとした。
実行前日にリアデンは、キディッカーで待機しながら1日2回の郵便配達の様子を観察し、ついに翌日配達夫を棍棒で殴り倒し、コダックの箱を奪うと外に飛び出て、鋪道の向かい側にいたマッキントッシュに手渡した。簡単かつスピーディな仕事だった。
その夜リアデンが街に出ようとホテルで用意し ていると2人の大男が現れた。
それはブランスキルという警部と、ジャービスという警部補で、彼らはリアデンの名前を知っており、郵便配達夫強盗の容疑で彼を逮捕する。
リアデンは取り調べに対して、ダイヤモンドのことなど一才知らないと言い張るが、警察は彼が犯行を犯して逃亡するのを見たという証人や、襲われて動けなくなっているはずの配達夫までを面通しに用意していた。
ここに至って、リアデンは自分が罠に嵌められていたことを理解する。
やがて彼は中央刑事裁判所で裁判にかけられ、ダイヤモンドの行方を白状すれば情状酌量の余地はあると告げられるが、これを拒否して、二十年の刑を言い渡されて刑務所に収監される。
そこで知り合ったジョニィ・スミスという囚人から、莫大な財産を持っている囚人に対しては代償と引き換えに脱獄を支援するスカーペラーズという組織の存在を示唆される。
そして、彼もその組織から選ばれたことを告げられ、同時にスレイドという、ソ連の大物スパイで政府内部にまで食い込んでいた罪で42年の刑を喰らっていた男と2人で脱獄するという計画を打ち明けられる。
そうしてスカーペラーズの周到な計画の元にスレイドと共に脱獄したリアデンであったが、スカーペラーズに薬物を注射されて昏睡している間にスレイドとは離され、どこかわからない場所に監禁されていることに気づく。
そこでは外に出ることや、外の様子を伺うこと以外は何でも認められ、酒も食事も贅沢なものが提供されたが、リアデンは国際的なスパイ活動に巻き込まれて行ったのだった。
2月にナチスドイツの黄金を探す冒険を描いた「ゴールデン・キール」を書いたデズモンド・バグリイの冒険小説
そもそもマッキントッシュとは何者なのか?
中盤で明かされるこの謎が冒頭部から読む者をミスリードし続ける。
リアデンはその後も危機を脱して行動を続けるが、何度もその情報は敵に筒抜けになっていた。そもそも発端からこの作戦はリアデンと、マッキントッシュと、ミセス・スミスしか知らないことになっている。物語中盤以降リアデンに協力するミセス・スミスは飛行機を操縦し、射撃の腕も達者で魅力的な美女で未亡人であった。リアデンが主人公で一人称で物語は進行するので、マッキントッシュがミセス、スミスのどちらかが裏切り者のはずである。
表紙写真を見て分かる通り、原題はThe F reedom T rap(自由の罠)であり、邦訳した際に「マッキントッシュの男」とされたが、本国での出版から2年後の1973年にポール・ニューマンの主演で映画化された。しかし、その原題はThe M ackintosh Man なのである。