英国エリザベス2世女王が逝去された。
在位70年という長さだった。これを受けてチャールズ皇太子が新国王として即位されるので、長年馴染んだON HER MAJESTY'S(女王陛下の)というイディオムは使われなくなる。
007シリーズに『女王陛下の007』という作品があるが、ダニエル・クレイグが演じたジェームズ・ボンドは前作で終了したが、イオン・プロが新しいボンド役者を起用して次回作を製作するとしたら、次のボンドが仕えるのは新国王という設定になるのか、原作者イアン・フレミングの設定を踏襲して、女王統治時代にこだわるのか興味が持たれるところである。
以前書いたことがあるが、やはりイギリスの作家アリステア・マクリーンの処女作にして、彼を冒険小説作家のスターダムに乗せた『女王陛下のユリシーズ号』という傑作があるが、作品の舞台となった第二次世界大戦中は、一貫してイギリスの君主はエリザベス女王の父にあたるジョージ6世だったために、この邦題は誤訳であるのだ。
近・現代史においてイギリスは、先の君主交代の時期をもって、それまで世界を牽引した大英帝国の威信が失われ、国際的リーダーシップをアメリカとソ連に譲り渡すこととなった。
わが国では現在、安倍前首相の国葬問題について意見が錯綜しているが、他国の元首とはいえ、彼女が何を成したか?ではなく、彼女の時代は何だったのか?を振り返ることは現代史及び現在の国際情勢を理解する上で、やはり昭和天皇亡き今、歴史の生き証人を失ったと考えるべきであろう。