八木澤高明「忘れられた日本史の現場を歩く」読む マニアックなB級日本史の面白さと悍ましさを知る
ランク Bの上~Aの下疫病、飢饉で絶えた村、朝廷に逆らたアイヌ英雄、からゆきさんや遊女が絶えた地域、姥捨山 江戸時代の墓地群の跡地など 歴史の本道から分かれた脇道に残る 全国19ヶ所の現場を、 写真エッセイで辿った記録です。教科書にのらない、研究者とマニアの 日本史探訪の本です。この本を読んで、 知らなかったことも多く、 少しは知っていたつもりでも、 具体的には知らなかったことを 教えられました。この本は、陽の当たる明るい日本史ではなく 暗い日陰で、失われていっている 悍ましく、哀れな、歴史に残ることもない 名も無き人々の証拠を探し求めています。エッセイと著者撮影による写真とで構成され B級歴史を、分かり易く教えてくれます。この本で初めて知ったのが 「人首丸(ひとかべまる)の墓」の ことでした。 8世紀末~9世紀初めに 岩手県の蝦夷人(アイヌ?)を率いて 大和朝廷支配に抵抗した アテルイを祀ったのが 「人首丸の墓」です。 坂上田村麻呂の軍門に下り 平安京へ連行され、 帰郷されるのを怖れた朝廷により 大阪・河内の国で殺されます。 岩手県にある「人首丸の墓」は アテルイがいたという大森山にあります。 大阪で殺されたアテルイの伝・首塚は 枚方市にあります。 岩手県人会が、枚方の首塚に アテルイの顕彰碑を設置しようとしたら 反対があって、できなかったとか・・。 権力に逆らった英雄?には、 死後も風当たりが強いのかもしれません。大阪の繁華街が、墓地、刑場跡だとか, 数多くの遊女がいた廃れてしまった宿場町、港の 面影が消えてしまっている。著者は、歴史に名を残すことなく亡くなった 庶民の個人史に思いを馳せて、 寂れた消えゆく土地を歴訪します。言い換えるなら、著者自身も 名も無き?庶民として消えてゆく 著者の個人史の哀れさを 旅しているように思いました。星の数ほどの個人史が、消えていきます。私の両親も、 それなりの波乱万丈の人生でしたが それを知る人も消えつつあります。ウクライナで無駄死にをしている北朝鮮兵にも 忘れがたい個人史があります。歴史は、すべてを記録できません。ごく限られた人の個人史が語られるだけです。ノーベル賞を受賞するのは特異な人間で 名も無き庶民が、歴史に名を残すには 大量殺人者になるのが 手っ取り早いかもしれません。この本は、名も無き庶民への、著者自身のための 著者による鎮魂の記録です。曇天の深みのある現場写真が、 この個人史の重みを、さらに深めています。流行りの心霊スポット写真の趣を 醸し出しています。 明るく、楽しい本ではありません。歴史に残らない個人史の 人間の暗い、情念と欲望や 移り変わっていく無常を 旅する本です。写真と相まって、とても読み易い本です。是非、読んでみて下さい。大河ドラマにならない歴史を 教えてくれます。最後に、この本の現場を 訪れる勇気は、生まれませんでした。怨念が渦巻く地であるような 気がしたからです。歴史にとって、個人史なんか 取るに足らないものかもしれません。 (私の人生なんて、 妻と娘が死ねば、 誰も知らにままです・・・トホホ、嗚呼)