市川雷蔵・大映映画「大菩薩峠 全3部(1960)」を観る 悪人になり切れなった?侍の悲劇を描く
ランク Bの上原作「大菩薩峠」は、中里介山が 1913~1941にかけて執筆された新聞連載小説で、 全41巻の日本最長小説?と言われるが 中里介山の死で、未完に終わっている。映画化は、片岡千恵蔵、渡辺邦男・内田吐夢監督の 東映映画で2回 市川雷蔵、三隈研次・森一生監督の大映映画 仲代達矢、岡本喜八監督の東宝映画ベテラン監督人がそれぞれ映画化しているので 観比べると面白いと思います。 (今回の雷様映画しか観ていません・・・ 他の映画に興味はあるけれど 観るチャンスがあるのかどうか・・・嗚呼)大菩薩峠は、山梨県甲州市にある1897mにある 鞍部の峠だそうです。 (なお、作者の中里介山が大菩薩峠へ登ったのは 連載12年後の1925年だったそうです) 剣術の魔力?に憑りつかれた主人公が 悪行?に染まりながら、虚無的な 生き方をする物語だと思いました。幕末から明治維新の動乱を背景に 男女の「柵(しがらみ)」と、 敵討ちが描かれています。左翼運動に近かった中里介山は 友人の多くが「大逆事件」に連座し、 逮捕、刑死したことことが 虚無的?仏教的?な傾向が 作品に反映されたとか・・・。 大逆:旧(戦前)憲法では 天皇に危害を加える、加えようとしたら 死刑になるという大逆罪があった。 大逆事件は、1910年(明治43)幸徳秋水などが 天皇暗殺計画をしたという口実で 一気に、多くの左翼系運動家を 逮捕、12名を死刑にした事件です。 (官憲によるフレームアップ(でっちあげ)事件?として 有名です)主人公のニヒルな、刹那的な主人公の生き方が 延々と描かれます。他方では、アンチテーゼとしての 真面目な、純粋に生きている対立する登場人物の 若侍も描かれます。軍国化、様々な規制が強まる世の中に対する ひねくれた、斜視的な、無力感に満ち溢れた 生き方をするしかなかった庶民の思いを 象徴しているのかもしれません。ニヒルな色気を醸し出す俳優と言えば 市川雷蔵が、日本映画史上のTOPです。ただ、この映画では、雷様の魅力が 思う存分発揮されていないのは 原作の長編化で 主人公のキャラが 少しずつ変遷を しているためでしょう。主人公は悪行をするのですが、 悪人になり切れなかった 心の弱い侍のように思いました。この映画の魅力は、雷様でもあるのですが 何といっても、相手役の中村玉緒の 演技力が際立っています。キャラの違う女性を 見事に演じ切っています。雷様の女性に迫るシーンも 見物になっています。明治維新の歴史上事件、人物が登場する一方 抜き差しならぬ男女の仲も描かれます。原作を読んでいないので 原作との比較はできませんが、 大長編小説を、 3部6時間にまとめているので 物語展開に、少し無理がきている ように思いました。たくさんのエキストラや大掛かりなロケがあり 日本映画界が元気な頃の映画です。ラストシーンは、意外な終わり方ですが 原作通りなのか、気になりました。何度も映画化されているので 監督、役者冥利になる原作なのでしょう。 (たぶん、原作を読まないと思います。 私の同僚に、全巻読み切った人がいました。 彼の感想は忘れましたが 読み切ることに情熱を傾けては いました・・・)チャンスがあれば、ご覧ください。他作品を観ることはあるのだろうか・・・? 無いような気がします・・・トホホ、嗚呼