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インドの女子救護院の悪行を
女性記者が告発する社会派映画です。
ムザファルプールのシェルター事件を
元に制作された映画です。
「バクシャク」は、「捕食者」という言葉だそうです。
ムザファルプールのシェルター事件とは
2018年 NGO運営のシェルターで暮らす
42人の少女に対して
性的虐待、レイプ、拷問などが
行われた事件です。
この映画で描かれているように、
NGO代表、地区児童保険担当官、
政治家などが、犯行に関与しています。
この映画は、シェルターで何が起きていたかを
告発している、サスペンス調の社会派映画です。
(映画が、どこまが事実で、
どこまでがフィクションかが
気になりました)
インド犯罪刑事映画と言えば
女性が大活躍する作品が多いです。
ということは、インド社会において
男性は、あまり、正義に対して
鈍感なのかもしれません。
インドは、カースト制と
男性強権優位社会のためかもしれません。
(被害少女のカーストを尋ねるシーンが
ありましたが、葬式も身分差別が
あるようです)
この映画は、事件だけでなく
キャリアウーマンの生き辛さも
しっかりと描いています。
(キャリアウーマンは
働いて家事も料理も
できないといけないようです。
インドは、女性が結婚して
子供を産んで認められる
社会のようです。
日本以上に、女性が生き辛い
ようです)
フェミニズム映画の要素も強いです。
(ヒロインの夫の姿をみて
我が振りも、反省しました・・・トホホ)
シェルター内の悲惨な状況を
リアリズムに徹し、再現していると
思いました。
(インドですので、
過激な表現は控えめですが
それでも悍ましさが
伝わる映像です)
この映画は、インドの官僚機構への
痛烈な批判映画となっています。
「上に弱く、下に強い」とか、
汚職と利権にまみれているとか
事なかれ主義のお役所仕事を
生々しく描いています。
(日本も似たようねものですが・・・トホホ、嗚呼)
インド映画の特徴は
個性的な風貌の脇役陣が
上手い演技をします。
そして、この映画は、
悪役が魅力的でないといけない
という鉄則に、見事に
的中しています。
悪役NGO代表を演じたのは
アディティア・スロヴァスタヴァです。
憎たらしい悪役を見事に演じます。
そして、重要な証言をする料理人役の
タニシャ・メータです
シェルター内を歩き回るシーンは
ハラハラドキドキで、一級の
サスペンスシーンとなっていました。
また、ヒロインとの初取材シーンでは
素晴らしい演技をします。
監督のプルキットは
手堅い演出で、事件の深刻さを
見事に表現しています。
とても計算された撮影で、
演出の上手い監督です。
日本でも、児童養護施設などで
性的虐待、暴力が表面化します。
この大きな問題を、スキャンダラスなニュースで
取り上げても、大衆に啓蒙、告発するような
映画ドラマは、プライバシー保護や
自主規制から制作されることはありません。
様々な問題があるインド社会について、表現者は
この映画のように、真正面から取り上げ
一級の娯楽作品に仕上げて
観客に訴えてきます。
(ラストシーンのヒロインの訴えに
集約されています)
日本に失われた表現の自由と強さと
自信が、インドにはあります。
良い映画ですので、是非、ご覧ください。
もちろん、インド映画の定番、
挿入歌があります。
(流石にダンスは無いのですが
でも、やっぱり、挿入歌は無かった方が
よいように思いましたが・・・)
最後に、事件の裁判結果は、2020年に
NGO代表は、終身刑になり、
共犯者18名は、有罪判決を受けています。
終身刑を受けたNGO代表
ブランジェク・タシュールは、
下画像の左で、
右は、灰色?の女性厚生大臣です。
是非、観て下さい。
この映画を観たからと言って、
インド嫌いになったり、
怖がったりしないで下さい。
インド映画界の実力の高さを
知ってください。