まだ、推しが兵役へ行く前。秋の夜。


キッチンで洗い物をしながら、窓を覗いてみると、とてもキレイなお月様が見えた。


夫と我が子にも声を掛けると、カメラが趣味の2人は、「これは素晴らしい」と盛り上がり、その勢いで、私達は、夜の散歩に出かけることにした。



目的地は、老朽化に伴い、取り壊しが決まった公共施設の駐車場だった。

その施設には、私達も、我が子がまだ幼い頃、よくお世話になっていた。


「久しぶりだねー」

「うわー、懐かしい」

「駐車場も、こんなに広かったんだねー」


夫と我が子は、三脚に、一眼レフをセットして、写真を撮り始めた。


カシャッ、カシャッ。

2人のシャッター音を聞きながら、私は、ボーッと、お月様を見上げていた。



「このお月様は、推しと繋がっているのかな」


私の大きな独り言を、我が子は、いつものように「はいはい。繋がってますねー」と聞き流してくれたけれど、残念ながら、夫は聞き逃さなかった。


「頼むから、そんな気持ち悪いことは言わないでくれ」

「でもさ、韓国は遠いんだよ」

「今頃、推しも、見てるといいな」

「見てないな、きっと」


ですよねー、と思いながらも。


月を見ただけでも、推しを思い浮かべるなんて。

私は、多分、とても幸せなのだろう。

その時の私は、何だか嬉しくて、フフンと、1人で得意になっていた。



月日は、流れて。


今のXでは、ペン卒のメッセージを多く見かける。

ほとんどが、青春を、防弾少年団と共に過ごしてきた、若い皆さんだ。


前にも書いたが、私は、推しを含めて、彼等のプライベートは知る必要がない、と思っている。

彼等は、芸能人、だから。  

公式からの発表がないということは、それは、そういうことだろう。


ただ、それとは別に。

私は、ペン卒をする若い皆さんに、とにかく、敬意を払いたいのだ。


もしも、10代で、カッコいい彼等に出会っていたら。

日常生活のほとんど全てが、防弾少年団だったら。

愛も。情熱も。友情も。時間も。お小遣いも。


もしも、青春の思い出が、全て、防弾少年団と繋がっているとしたら。



そうやって、ずっと、ファンダムを支えてきた皆さんがいたからこそ、新規の私は、スーパースターの推しに出会えたのだ。


何が正しくて、何が正しくないなんて、誰にも答えは分からない。


だからこそ。


ファンダムを去りゆく皆さんが、どうか、幸せでありますように。


先輩ARMYの皆さん、お疲れ様でした。

今まで、本当にありがとうございました。


どうぞ、お元気で。




ご覧いただき、ありがとうございました。


以上です。