結婚問題part3にしても良いのですが…

 

おそらく宝塚歌劇団において、タカラジェンヌの結婚出産のシステムが様々な理由をつけられて整えられないのには

 

タカラジェンヌは異次元の存在だから(宝塚歌劇とジェンダー⑪タカラジェンヌの結婚問題 part.1)、とか

小林一三が花嫁学校といった伝統(宝塚歌劇とジェンダー⑫タカラジェンヌの結婚問題 part.2)

 

という理由もありますが、


・結婚出産していたら宝塚のハードな舞台はこなせない・体型が変わってしまう

 

・高校野球と同じで素人が一生懸命活動する姿が美しい(処女性のようなイメージ)

 

という理由も出てくると思います。

 

これらに共通しているのはエイジズムとルッキズムだと思います。

これらのことは論文に充分に入れる事が出来ず、まだまだリサーチ不足なので色々調べていきたいと思っています。

 

 

・結婚出産していたら宝塚のハードな舞台はこなせない・体型が変わってしまう

 

については、現に宝塚歌劇団と同じように

夢の世界を演じ、身体性が重要視されるバレエ界では、

結婚・出産してもいわゆる宝塚でいうトップスター的存在のプリンシパルやエトワールの人たちが舞台復帰しています。

 

ウィーン国立バレエのプリンシパル(最高位)の橋本清香さんもその一人、「踊る母」として新聞にも取り上げられています。

(毎日新聞. 2018.「バレリーナの出産「踊る母」育児経験で表現に幅」.記事はこちら

 

ここには海外バレエ団が産休・育休制度を整えている背景が大きいとのこと。

 

新国立バレエ団芸術監督の吉田都さんは、海外に比べ日本のアーティスト達は弱い立場にあり待遇改善を目指し、妊娠出産に関しても意思に沿って復帰できるようにしたいと述べています。

吉田都舞踊芸術監督を囲む記者懇談会〜新国立劇場2022/2023シーズンラインアップ説明会

 

そうなると宝塚の生徒の未婚も劇団の職場環境が整っていないだけで、

多くの生徒やファンがそれに協調・服従している可能性もあるなぁと思いました。

 

これはよくファンが心配する生徒の激務等と地続きでもありますし、

 

劇団はコスト等がかかる結婚に伴う産休・育休制度を作る段階にまでいっていないのだと思います。

 

ただ、身体性やスターの新陳代謝が言い訳として使えない時代になってきています。

 

理想的には制度がきちんと整った上で、生徒自身の判断により制度は使ったり使わなかったりと個人のライフプランと見合わせながら選べる環境にしていく事が大事なのではないかなぁと考えました。(もしかしたら半世紀後とかになるんでしょうか…💦)

 

今からでも「宝塚芸」の追求と、したい人は結婚や出産といった人生プランを両立できるような仕組みを検討し始めて損はないのではないかと思います。

 

 

・高校野球と同じで素人が一生懸命活動する姿が美しい(処女性のようなイメージ)

 

 

素人が期間限定で一生懸命活動をするという点には、根底にエイジズムがあることは間違いないと思われます。

 

周東 美材. 2022.「未熟さ」の系譜 (新潮選書)によれば (pp.3-4)

 

 

日本の音楽文化には世界に例がない「未熟さ」という特徴があると述べています。

 

この「若い」「初々しい」事が素晴らしいという「エイジズム」もルッキズムやジェンダーと密接に関わっており、差別を助長するものなのです 【参考:山田. 可視化か不可視化か. 現代思想 2021年11月号 特集=ルッキズムを考える ムック. 2021,p.112】

 

宝塚におけるエイジズムとルッキズムについてはこれはもうすごい事になっていると思います(笑)

以前の宝塚の説明にもある通り

 

現役のタカラジェンヌはスター路線とは別に学年順で序列化されているのです。

同じ学年内では、試験の成績順に序列が決まり、不動の形で横たわっています。

 

しかもこの試験というのも

おなじみ川崎氏によれば(1999, p.196)

人気なり劇団の評価なりといった客観的データを出しようのない要因に左右され、

成績の序列にしても、評価の対象が声楽、演技、ダンスと、だれもが納得する客観的な根拠があるとはいいがたい

と述べています。

 

確かに舞台に必要な要素は客観的なデータが取れるものではないですし、

「見える」という事態は、見られる側からは完全に制御できない見る側の主観に大きく依存し、何を表現し表現しなかったかの切り出し方自体を見る側が見られる側に強制するものでもある。

【参考:森山至貴. 2021. どんな見た目でもいいじゃない、LGBTの人たちみたいに. 現代思想 2021年11月号 特集=ルッキズムを考える ムック.】

と、特に外見の美しさやそのスターさんが持つ雰囲気や人気は、周りを取り囲む人、社会情勢、企業の方針に大きく左右されるのではないかと思います。その根底にはジェンダー問題があることは間違いないと思います。

 

ただ、ここで言いたいのは、劇団がなにもしなくて悪いのだ、という事ではありません。

 

電通総研の調査(2021)によればジェンダー・ギャップ指数2020で日本は153か国中121位。(ほかにも面白いデータがあります。リンクはこちら)

 

劇団がタカラジェンヌの職場環境を整えないのにも、利益を上げる事が優先という商業的背景だけではなく日本の社会構造によるものも大きいのだと感じます。

 

ひとりひとりの意識が大事なんだなぁと感じたのでした…

 

 

つづく