中国の新聞『グローバル・タイムズ』は「北朝鮮の核問題の行き詰まりを突破するに際してアメリカは間違った行動を起こすな」というタイトルで論評を発表したそうです。

http://english.chinamil.com.cn/view/2017-04/07/content_7554618.htm

 

その内容は「北朝鮮が核開発を行うことで中国の東北地方が汚染されることは許さない。北朝鮮は多数の難民が出て来る事態を招くな。中国は鴨緑江の向こう側で中国に敵対的な政府ができることは望まない。そしてアメリカの軍隊は鴨緑江にまでその力を及ぼすべきではない。」というものだそうです。

 

なんか朝鮮戦争が起こった時代に戻ったような気がします。

アメリカのトランプ大統領がシリアを爆撃したことで次は北朝鮮ではないかと噂されていますが、本当にアメリカは北朝鮮の核やミサイルに対して爆撃するのでしょうか。

 

私は懐疑的です。

 

なぜならアメリカが北朝鮮を爆撃し金正恩体制を破壊しておいて中国がそれを黙って見過ごすことなどあり得ないからです。

 

朝鮮戦争をおさらいしてみましょう。

 

中国の毛沢東は北朝鮮が韓国に侵攻することには反対でした。毛はアメリカが介入して来ることを恐れ、そうなれば台湾と統一を果たすことが不可能になってしまうからです。

 

ところが金日生はスターリンと勝手に話を進め毛の意向を無視して南進しました。

 

最初はうまくいったものの、毛の予想通りにアメリカの反撃にあい、北朝鮮は崩壊の瀬戸際に追い込まれます。

 

北朝鮮が無くなるという究極の事態に陥った時、毛沢東は今度は果敢にもアメリカと戦うことを決断するのです。

 

他の共産党幹部たちのほとんどはアメリカと戦うことには反対でした。なぜなら日中戦争の時に日本軍と正面から戦うことを恐れていた共産軍が日本を破った米軍と戦って勝てるとは思えなかったからです。

 

毛の朝鮮戦争の参戦は彼の決断の中でも最も難しいものの一つだったでしょう。それほど北朝鮮の存続が中国にとって大切だったのです。

 

朝鮮戦争から北朝鮮と中国の関係を簡単に言えば、北朝鮮は中国の言うことを聞かないが、そのことによって北朝鮮が危機に至れば助けざるを得ないという関係なのです。

 

翻って現在の北朝鮮の核、ミサイルの問題で中国は内心では反対しているでしょう。それが元でトランプ政権から北朝鮮をどうにかしろとの圧迫を受けているからです。

 

しかし、北朝鮮の金正恩は中国の意向を無視し続けています。

 

ちなみに金正恩は髪型などをみても祖父の金日生を模倣しているようで、中国の意向を無視することも徹底しているようです。

 

そのことが原因でアメリカからの爆撃を受けて北朝鮮が窮地に陥り、崩壊の危機に至った時に毛沢東になりたい習近平がそれを黙って見過ごすことができるでしょうか?

 

おそらく習も毛沢東の決断に習わざるを得なくなり、次に起こることは米中戦争なのかもしれない危険性があるのです。

 

だからアメリカの北朝鮮爆撃は戦略的には決して上策とは言えません。

 

では北朝鮮の核や日本人拉致の問題はどのように解決すれば良いのでしょうか?

 

私は中国共産党の一党独裁を崩壊させれば、北朝鮮の問題は自然に解決すると思っているので、次回にその理由を書いてみたいと思います。

 

アメリカには「アメリカ例外主義」という神から与えられた他の国にはない特別な役割を世界に対して担っているという独特な理想主義的な考えがあります。

 

この問題についてダニエル・ドレズナーは『ワシントン・ポスト』でトランプ氏が大統領になったことや、彼の中東からの移民を制限する大統領令などの行動でアメリカは例外主義を捨て去り普通の国になったと書いています。

https://www.washingtonpost.com/posteverything/wp/2017/02/01/america-the-unexceptional/?postshare=3951486011054494&tid=ss_tw-bottom&utm_term=.98c9344f1501

 

一方ピーター・バイナートはトランプ大統領になってもアメリカの例外主義は健在だが、オバマ大統領に比べてその内容が著しく変わったと『アトランティック』に書いています。

 

「オバマ大統領にとってのアメリカが例外である理由は部族やセクトを超越したアイデンティティを育むことであるがトランプ大統領の場合はアメリカが再び例外的になるためにはオバマの考えは危険な夢だから捨て去らなければならないというものである」

 

ドレズナーもバイナートもそんなに違ったことを言っているわけではなく、二人ともこれまで語られてきたアメリカの例外主義はトランプ大統領時代に弱まってくると主張していることでは同じみたいです。

 

そこで今回はトランプ時代のアメリカ例外主義というある種の理想主義がどう変わっていくかを私なりに考えてみたいと思います。

 

バイナートが『アトランティック』に書いた文章で、オバマ大統領が「私はケニヤからやってきた黒人の父とカンザスの白人の母との間から生まれてきた。・・・・・・この地球上の他の国で私の物語が可能であるとは思わない。」という演説を引用しています。

 

確かにこのことは事実かもしれません。

 

ただオバマ大統領時代の末期に無実の黒人が白人警官から無残に殺された事件が立て続けにおき、怒った黒人の若者が始めたBlack Lives Matter (黒人の命は大切だ)という運動が活発になりました。

 

ここで私は途方に暮れるわけです。なぜ最初の黒人大統領の任期中に「黒人の命は大切だ」という運動が起こったのでしょうか?

 

白人と黒人の人種的な融和がある程度成功したからオバマ大統領という黒人初の大統領が生まれたと私は思っていたのですが、現実は違っていたのです。

 

白人を含む有権者がアメリカの例外主義という理想主義でオバマ大統領が生まれたことは確かですが、アメリカの白人と黒人の葛藤は以前と変わらずに続いていたのです。

 

だからオバマ大統領が人種を超えたアイデンティティを訴えても実際は未だに黒人が「黒人の命は大切だ」ということを訴えなければならなかったのです。

 

そこでトランプ大統領です。

 

私はトランプ大統領が現実のアメリカにおいて人種的な葛藤が存在していることを素直に認めているように思えます。そしてその問題がさらに悪化しないように備えることがメキシコの間に壁を作ることであり、一部のアラブ諸国からの移民の制限なのです。

 

ところがアメリカのリベラル派の知識人は現在のアメリカに人種主義など存在しないし、あってはならないと思っているからトランプ大統領のやることに心底怒っています。

 

ただアメリカの例外主義で人種問題を解決できるようには私には思えませんし、トランプ大統領のようにアメリカには「人種問題」があることを現実に認めてそれが悪化しないようにすることも一つの対処法ではないかと残念ながら思っています。

 

このようにみれば人種問題に関することではオバマ大統領は理想主義的であり、トランプ大統領は現実主義的なのです。