トランプ大統領がイランと結んでいた核合意を破棄してしまいました。
私は以前からこの問題を追いかけていて、この合意ができた直後に次にようなことを書いています。
「ニューヨーク・タイムズによれば、オバマ大統領は『この合意の代わりになるものは戦争しかない。なぜなら経済制裁だけではイランを屈服させることができないし、アメリカがこの合意から撤退したら他の国々はイランへの制裁をやめてしまうだろう』と語り、さらに『簡単に言えばイランとの合意がなかったら、中東でのさらなる戦争の機会が増えることにつながる』と言ったそうです。」
https://ameblo.jp/mintelligence/entry-12051727632.html
このオバマ元大統領の言葉は、私は今でも正しいと思っています。
ではトランプ大統領は、本気でイランと戦争することを望んでいるのでしょうか?
オバマ大統領がイランとの核合意を結んだ時点で、ネオコンや共和党右派の人達には不満がありました。
オバマ大統領の合意ではイランが核兵器の開発を中止する代わりに民生用の核開発を認めて、アメリカの経済制裁を徐々に緩和するようになっていましたが、その合意にはイランがすすめるミサイル開発やヒズボラやハマスといったテロ組織を援助することを規制するものが何にもなかったからでした。
そこでトランプ大統領はオバマ大統領が決めた合意を破棄して、新たな経済制裁と軍事的威嚇でイランを「無条件降伏」に追い込みたいのでしょう。
イスラエルのネタニヤフ首相もこの合意に不満だったのでつい最近イランが嘘をついているというほとんど証拠のないものをテレビでプレゼンしてトランプ大統領をそそのかしています。
戦争に至らずともオバマ大統領よりも有利な条件を獲得できるというのがトランプ大統領の本意だと思われます。
また、今回のトランプ大統領のイランとの合意の破棄からアメリカと北朝鮮がどのような外交をしているかというヒントが隠されていると思われるので、それについても書いてみます。
日本の保守派がアメリカと北朝鮮との外交で恐れているのは、北朝鮮がアメリカに届くミサイルの開発を中止する代わりにアメリカが北朝鮮を核保有国として認めてしまうのではないかという懸念でした。
「アメリカ・ファースト」を標榜するトランプ大統領ですから、その恐れは私も十分に持っています。
そこで安倍首相はトランプ大統領の会談で、北朝鮮に対して経済制裁を緩める為の条件として、核兵器の廃棄、拉致日本人の解放、中、短距離のミサイルの廃棄、さらには生物-化学兵器の廃棄まで求めたと報道に出ていました。
これが実現すれば北朝鮮が「無条件降伏」することになります。
私が想像するにトランプ大統領は安倍首相が求めたものを強硬に北に要求したのではないかと思われます。
そうじゃなければ、あれだけ金正恩が罵倒していた中国に短期間のうちに2回も行く理由が見当たらないのです。
『NHKスペシャル』でもやっていましたが、金正恩には戦略があって、最初はミサイル発射や核実験などの強硬措置を立て続けにとった後に融和姿勢に転じ、アメリカから有利な条件を引き出そうとしたのでしょう。
アメリカに届くミサイルの開発を中止する代わりにアメリカから核保有国として認められ、経済制裁も緩和してもらえると日本の保守派が恐れていた戦略は金正恩のものだったのです。
ところがアメリカと会談してみたら、核兵器の廃棄だけではなく、拉致日本人の解放、中短距離ミサイルの廃棄、生物・化学兵器の廃棄という「無条件降伏」を突きつけられ、焦った金正恩は直ちに中国に向かったのでした。
トランプ大統領の外交の肝は、経済制裁と軍事的威嚇でイランと北朝鮮を「無条件降伏」に追い込むものだったのです。