イランとの合意が成立したようなので少し感想を書いてみたいと思います。

ニューヨーク・タイムズによれば、オバマ大統領は「この合意の代わりになるものは戦争しかない。なぜなら経済制裁だけではイランを屈服させることができないし、アメリカがこの合意から撤退したら他の国々はイランへの制裁をやめてしまうだろう」と語り、さらに「簡単に言えばイランとの合意がなかったら、中東でのさらなる戦争の機会が増えることにつながる」と言ったそうです。

私はこれまでそんなにオバマ大統領の外交を評価していませんでしたが、今回の合意は高く評価しています。「中東でのさらなる戦争」などは全く日本の国益になりませんし。

ところが、イスラエルのネタニヤフ首相やアメリカの共和党はこの合意には不満なようで「不完全な合意なら合意が無いことの方が良い」とか「さらなる制裁」などと叫んでいますが、これはイランに対して「無条件降伏」を求めていることと同じことなのです。

「無条件降伏」は日本がフランクリン・ルーズベルト大統領から要求されたものですが、戦争もしないでイランがそれを受け入れることはないでしょう。

共和党の強硬な外交についてピーター・バイナートは「アメリカ合衆国が『全能』では無い事実に対してオバマ大統領を批判しているのだ。これはそんなに驚くべきことではない。というのも現在の共和党外交の指導理念は『アメリカ全能』というものだからである。」と書いています。

共和党はイラク戦争の失敗にもかかわらず、アメリカの「一極主義」の夢から醒めていないようです。

では今回のイランとの合意をアメリカの議会が反故にする恐れはないのでしょうか。

上院、下院が今回の合意を否決してもオバマ大統領が拒否権を発動して、さらにそれをひっくり返すにはそれぞれの2/3以上の反対が必要です。

つまり今回の合意がひっくり返されるにはかなりハードルが高いことも事実なのです。

それでも私がやはり気にかかるのが、ウッドロー・ウィルソン大統領の前例があるからです。

ヘンリー・キッシンジャーは『外交』という本の中で、「歴史家達はヴェルサイユ条約の運命を決めたのはアメリカの連盟加盟拒否であると論じてきた」と書いています。

民主党の大統領が決めたことを共和党優勢の上院が否決してしまったのです。

それについてキッシンジャーは「アメリカ国内に孤立主義的雰囲気がある限り……」と書いて、アメリカが国際連盟に加入しなかったのは「孤立主義」を理由にしていますが、今回のイランとの合意を反故にしかねないのはピーター・バイナートが主張するようにアメリカの「全能感」(omnipotence)なのです。

「孤立主義」と「全能感」は意味的に正反対ですが、どちらにも共通しているのはリアリズムの欠如です。

というわけで、イランとの合意は一応できましたが、これからはアメリカ国内が戦いの場になります。
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