しばらくバタバタっとしていた
主にジム通いに仕事などで大したバタバタではなかったのだが、そんな中、地元で開催されておる年に一度のお祭りをちょろっと覗いてきた。
屋台が立ち並ぶ祭りの人混みの中を友達と雨の中、ウロウロ。
大して何も買わず、祭りの風情だけを味わいに行った…という感じではあったが本格的な夏を目前に毎年この時期に開催される祭りなので
『嗚呼…もうすぐ夏なんだなぁ…』
と、しみじみと
祭りの中、ハイソと初めて会い、食事をした寿司屋の前を通った。
まだ私の中で、この寿司屋は心のトリガーポイントである。
『へぇ~!こんなとこにこんな高級なお寿司屋さんがあるんだね。』
と、友人がその寿司屋に近付いた瞬間、胸がギューっとなったのがその証拠である。
『そうだね…』
と、言葉少なに返した私。
私はまだ、自分は完全に失恋から立ち直っていないのだとこの時思い知った。
仕事をし、友人に会い、ジムに通い、アプリで新たな出会い探しをし、秀晴を愛でる。
ごくごく普通の自分の日常は毎日そこにあり、好きな人が目の前からいなくなっただけで、他には何も変わってはいない。
彼とは付き合ってもいなかった。
何ならいいようにされただけだったのかもしれない。
悲しみも怒りも虚しさも悔しさも、この数ヶ月で消化したつもりだった。
彼は今頃、とっくに私という存在があったことなんぞ忘れて新しいお相手とよろしくやっておることだろう。
自宅に帰り、久しぶりに涙腺が緩んだ。
『そうだ!大好きなエガちゃんを観よう!』
気を紛らわせようとチャンネル登録しておるエガちゃんねるを着けた。
できるだけ楽しそうな動画を…と、適当な回に目星をつけ、再生してみると…
エガちゃんがヒッチハイクをし、広島を巡る旅をする回だった。
そこでおりづるタワーが大きく特集されていた。
おりづるタワーは私とハイソが初めて手を繋ぎ、日中デートした場所だった。
辛くて、観ていられなかった。
私は即座にYouTubeを切った。
本当の笑い話になるまで、もっともっとたくさんの時間が必要なのだろうな…
と、改めて思った。
けれど、それでもいいや。と思う。
失恋というのはこういうものなのだ。
私は身を持って知っている。
乗り越えてしまえば笑い話になることも、記憶が現実の100倍美化されてしまっていてそれが恥ずかしくなることも、相手や自分自身、起きた事実を冷静に振り返ることができるようになることも。
すべて、知っている。
そしてそれが、『人を好きになる』ということなのだとも。
心のトリガーポイントがいつか、
『心の思い出』
として風化していきますよう。
イヤ…風化していくから人は人でいられるのだろう。大きな経験値になるのだろう。
だからまだしばらくはムリせずそっと、たまには泣こうと、そう思う。