久しぶりに読んだ室井佑月のエッセイ。
このエッセイ集のなかに収録されていた「乙女のボンノー108」から引用。
(64)ラブレター
別れた男たちは、あたしにラブレターを出したことを後悔しているんだろうか?
それとも、そんなことは忘れているんだろうか。
きっと後者だ。
だからあたしは貰ったラブレターを捨てることができない。別れた男たちが
忘れてしまうなら、あたしは覚えていたいと思う。
誰が書いたラブレターかは関係なくて、そういう温かい気持ちがあったことを。
だって、それはあたしたちしか知らない。
あたしが覚えていなきゃ、無かったものになってしまうから。
最近では薬のおかげなのかどうなのかはわからないが、彼のことを思い出すことは
随分なくなってきた。
昔一緒にいた時間が、実は幻だったのではないかと思うくらい。
だって、今、それをなぞることは全く出来ないのだから。
だけど、彼から貰った手紙は今も手元にある。
確かにあたしたちは、出会い、同じ時を生きていたのだ。
たとえ彼が忘れてしまっても、それは事実なのだ。
あたしも、覚えていたいと思う。そういう温かい気持ちがあったことを。
執着はもうしない、だけど、覚えていたい。
そういう幸せに、私もちゃんと出会っていたのだということを。