プレイリスト「愛と幻想のLOVELYZ」に選んだ全17曲を1曲ずつ紹介していきますので、お付き合いください。

 

 

[1] Candy Jelly Love

 

言わずと知れたデビュー曲。

LOVELYZが残した数々の楽曲群、そしてK-POP界全体の中でも異例なまでにエレクトロポップ色の濃いサウンドは、今もなお新鮮で色褪せていない。

 

この映像はビハインドシーンを集めたものであるが、MV本編に比肩する「作品」に仕上がっている。

あたかも映画のエンディングのようなスタッフロールは、LOVELYZのデビューという一大プロジェクトに対する当時のスタッフ達の意気込みを象徴している。

そして、LOVELYZという一編の映画が幕を閉じてしまった事実を改めて実感させてくれる。

[2] 지금, 우리 (今、私達)

 

'17年に発表された2枚目のフルアルバム「R U Ready?」のリパッケージ盤「지금, 우리」のメイントラック。

MV本編も然ることながら、この「Prologue Film」も独立した作品として記憶に留めておきたい。

 

耽美なアルペジオから始まり、次第に音数を増やしていって28小節の中で高揚していく絶妙にして緻密なアレンジは、OnePieceの中心人物であるユンサン氏の真骨頂と言って良いだろう。

何気ないジャケット写真撮影風景でありながら、サウンドトラックに呼応するように巧みに構成された映像も、デビューから二年半を経てヴィジュアル的にも成熟したメンバー達のルックスも相俟ってドラマティックである。

[3] Close to You

爽やかな初夏の香りが漂う「지금, 우리」から夏を感じさせる「Close to You」へ。

 

LOVELYZのサマーソングとしてはトロピカルハウスの「여름 한 조각」(夏のひとかけら)が'18年にリリースされているが、なぜか個人的にはこちらの曲のほうが夏っぽいと思っている。

 

好きな人との距離感をテーマにしているという点で、この曲は次の「1cm」に通じるものがある。

両曲の歌詞や楽曲など、比較してみると面白いだろう。

[4] 1cm

'16年4月に発表された2ndミニアルバム「A New Trilogy」のサブタイトル曲。

チップチューンのテイストを散りばめたカラフルなサウンドは、1stミニアルバム「Lovelyz8」収録のインストナンバー「Welcome to the Lovelyz8」の続編と解釈することもできる。

 

 

これは'17年1月に開催された1stコンサート「冬の国のLOVELYZ」の映像。

1cmは後にコンサートで盛り上がる定番曲となるわけだが、初めてのコンサートの時点でこれだけ会場が湧いたという事実、活動曲ではなくても何なら一緒に歌えるというレベルでLOVELYZの楽曲を愛している現地のファン達の存在、とにかく全てに衝撃を受けた。

 

そうやって愛されたのがLOVELYZの真価だったと思う。

音楽番組の順位なんかじゃなくてね。

 

EP.3に続く。

2021年12月、LOVELYZのいない冬がやって来た。

毎年この季節になるとこのブログではプレイリストで一年を振り返るのが恒例だったが、今年はLOVELYZの7年間の活動を総括すべくプレイリストを作成した。

 

テーマは「幻想」。

グループ名通りの愛らしさと神秘的な幻想性というLOVELYZの魅力の二面性を軸として、デビュー曲[1]からラストアルバム「Unforgettable」のラストナンバー[17]までを網羅する選曲としてみた。

 

  タイトル 発表 収録アルバム
1 Candy Jelly Love 2014 Girls' Invasion / 안녕
2 지금, 우리
(今、私達)
2017 지금, 우리
3 Close to You 2019 Once Upon a Time
4 1cm 2016 A New Trilogy
5 미묘미묘해
(ミミョミミョヘ)
2018 治癒
6 Aya 2017 지금, 우리
7 예쁜 여자가 되는 법
(可愛い女子に
なる方法)
2015 Lovelyz8
8 Hug Me 2015 Lovelyz8
9 안녕 (アンニョン) 2015 안녕
10 인형 (人形) 2016 A New Trilogy
11 절대, 비밀
(絶対、秘密)
2020 Unforgettable
12 놀이공원
(遊園地)
2015 안녕
13 비밀여행
(秘密旅行)
2014 Girls' Invasion / 안녕
14 Wow! 2017 R U Ready? / 지금, 우리
15 Cameo 2017 R U Ready? / 지금, 우리
16 Circle 2015 Lovelinus
17 걱정 인형
(ウォーリードール)
2020 Unforgettable

 

「愛と幻想」というテーマでLOVELYZの楽曲を俯瞰してみたときに、重要な存在として浮かび上がってくるのが、[6]や[8]を手掛けた제이윤(ジェイユン)氏と、[11]の作編曲者にして作曲家チームOnePieceのメンバーでもあるDAVINK氏である。
 
彼らはLOVELYZに数多くの楽曲を提供しているが、可愛らしい作品が多いジェイユン氏がLOVELYZの「愛」のイメージを担っていたとしたら、人気曲「어제처럼 굿나잇」(昨日のようにグッドナイト)を始めとしてダークな作風が印象的なDAVINK氏は「幻想」の世界を司っていたと言えるだろう。
 
そんな二人は実は旧知の間柄で、ジェイユン氏が参加していたバンド「Moonchild」(のちのM.C The Max)のデビューアルバムにDAVINK氏がプロデューサーとして参加したのを始めとして、'00年代後半には「MONOTONIK」というユニットを結成して活動していたこともあった。
 
その後ジェイユン氏はwoollim entertainment専属のクリエイターとして、またDAVINK氏はOnePieceのメンバーとして、LOVELYZの楽曲への参加を通して邂逅したというから面白い。
この二人が共同で手掛けたLOVELYZの楽曲を聴けることを長いこと心待ちにしていたが、残念ながらジェイユン氏が今年5月に急逝してしまったため、敵わぬ夢となってしまった。
 

なお、[11]に関してはDAVINK氏が'06年に録音したデモバージョンも公開されているので、こちらも聴いてみてほしい。

LOVELYZに提供するにあたってキーをEからG#に上げたことが解る。

 

その他の曲の解説は、また次回(まだまだ続きます!)。

GIRLS' INVASION」のブックレットの写真撮影が行われた培材(ベジェ)学堂歴史博物館

 

教育機関の校舎として1916年に建設されて1984年まで実際に使用されたのち、改装されて2008年から博物館として一般公開されている。

ソウル地下鉄市庁駅のそばにあるので、コロナ禍が落ち着いたら訪れてみると良いだろう。

 

LOVELYZのデビューアルバム「GIRLS' INVASION」は2014年11月17日にリリースされた。

作曲家チームOnePieceが手掛けた前半の5曲に加え、LOVELYZとしてデビューする前に各メンバーがリリースしていた4曲が後半に収録されている。

  1. Introducing The Candy
  2. Candy Jelly Love
  3. 어제처럼 굿나잇
  4. 이별 Chapter 1
  5. 비밀여행
  6. 남보다 못한 사이 feat. 휘성 (BabySoul Solo)
  7. 그녀는 바람둥이야 feat. 동우 of 인피니트 (BabySoul & Kei)
  8. Delight (Jiae Solo)
  9. 너만 없다 (JIN Solo)
最も古い曲は当時19歳(!)のBabySoulが歌う[6]で、2011年11月23日にデジタルシングルとしてリリースされた。
2011年と言えばwoollim entertainment(以下ウリム)にとって初の試みとなるガールズグループ(通称ウリムガールズ)の計画を始動させた時期であるが、その方向性を決定付けたのは当時JYPからウリムに移籍してきた敏腕A&RのJaden Jeong氏に違いない。
 
同氏はのちにLOONAを手掛けることになるわけであるが、2012年当時からすでにガールズグループをデビューさせる前に一人一人のメンバーをシングル曲で披露していくという、まさにLOONAのデビュー過程そのままの構想を持っていたらしい。
その後[6]に続いて翌2012年1月に[7]、2013年4月に[8]、そして同年11月に[9]が公開されたわけであるが、そういう観点で本アルバムを[6]-[9]、[1]-[5]の順番で聴いてみると感慨深いものがある。
 
ちなみに[9]が発表された直後の2013年12月27に放送された歌謡大祭典には、BabySoul、Jiae、Jinに加えてJisoo、Mijoo、Kei、Sujeongの7名がウリムの先輩グループであるINFINITEのステージにダンサーとして参加した。
そこにYeinが加わってLOVELYZとしてデビューするまでさらに11ヶ月かかるわけであるが、今となってはその準備期間の長さよりもむしろ、当時のウリムがLOVELYZのデビューに慎重かつ綿密な計画を練っていたことに驚かされる。
今のウリムだったら年明け、いや遅くとも旧正月明けにはLOVELYZをデビューさせていたことだろう。
 

さて、本作の要と言えばやはりタイトル曲の「Candy Jelly Love」に尽きる。

 

この曲の魅力を語りだすとキリがないが、楽曲のポイントとして何と言ってもヴォーカルトラックの「息継ぎ音」を消さずにメロディーの一部として聴かせている点を挙げたい。

息継ぎ音が聴こえることで、歌い手とリスナーの距離がぐっと縮まったような錯覚さえ覚える。

この曲のイメージを牽引しているのがSujeongであることは言うまでもないが、彼女のハスキーな声を基準にして編曲を進めた結果こうなったのかもしれない。

 

冒頭のSujeongの歌詞が

 

구슬처럼 귀에서 자꾸 맴돌아요 달콤한 그 말

(ビー玉みたいに 耳元で転がり続ける 甘いその言葉)

 

のように聴覚に直結しているのは、決して偶然ではないだろう。

 

耳元で転がり続けると言えば、曲全体を通して鳴り続ける電子音のアンサンブルも非常に心地が良い。

まるでVince Clarkeが奏でるアナログシンセのように暖かみのあるサウンドは、絶妙なリヴァーブ処理も相俟ってヘッドフォンで聴くと癖になる。

 

LOVELYZの楽曲のインストバージョンのみを納めたアルバム「Muse On Music」で聴くと、この曲が良質なエレポップとしても聴き応えがあることが分かる。

OnePieceの中心人物であるYoonSang氏はDuran DuranのJohn Taylorに憧れて音楽を始めたという世代なので、'80年代の英国エレポップはリアルタイムで当然耳にしていたはずである。

 

楽曲の構成という観点では、比較的ゆったりとしたメロディのAメロ~Bメロと急展開するサビとの対比も興味深い。

Jiaeパートのブレイクで転調して始まるサビは、サウンドは多幸感で弾けているように聴こえるが、歌詞から読み取れる心境はむしろ真逆であるという事実にこの曲の深みを感じる。

 

「괜찮아요 (平気よ)」、「햇살도 부럽지 않아요 (太陽の光も羨ましくない)などと強がりを言っていたのに、サビに入った途端に「힘들다(つらい)」「슬프다(悲しい)」「외롭다(寂しい)」などと言った言葉が飛び出すのは、こらえきれずに爆発した本心に他ならない。

 

サビの中でもことさらせつない最後の8小節、「얘기」(話、物語)という言葉で畳み掛けるくだりは、この曲のハイライトである。

サビの高揚感の真意を知ったあとでは、このくだりを単なる脚韻として聞き流すことはできないだろう。

 

우리 둘이 한 얘기 (私たち二人でした話)

간질간질한 얘기(くすぐったい話)

나만 아는 그 얘기 (私だけが知っているその話)

우리 둘이 못 다한 끝나지 않은 얘기(私たちが語りつくせなかった話)

 

そして、永遠に続くかに思えた電子音のシーケンスは残響だけを残して突然止まる。

MVで言うと、ちょうどJiaeの缶ケースから最後の一粒のキャンディーがこぼれ落ちるシーンだ。

 

LOVELYZが活動を終える2021年11月16日を目前にして、今はまさにあのラストシーンのように茫然と残響の余韻に浸っている。

余韻に浸りながらさまざまな話、そして「語りつくせなかった話」について思いを巡らせている。

 


7年間を総括するつもりだったのに結局1stアルバムのレビューになってしまったが、タイムリミットが迫っているので無理やりまとめに入る。

 

デビュー後、LOVELYZを取り巻く制作環境は次第に変容していった。

Jaden Jeong氏はデビュー翌年にはウリムを離れてしまったし、OnePiece+Digipediという未曽有の黄金タッグも、2017年リリースの「지금, 우리」を最後としてLOVELYZのアルバムに再び関わる機会はとうとう戻ってこなかった。

 

それでも、あの時期にデビューしてJaden Jeong氏やOnePiece、そしてDigipediといった超一流どころのクリエイター達と仕事をして素晴らしい作品群を残せたことは、LOVELYZにとってもファンにとっても幸せなことだったと思う。

だって、今のウリムだったら有り得ないじゃん(笑)。

 

7年前にリリースされた1stアルバムを聴き返してもこんなに文章を書けるし、まだまだ書き足りないくらいだし、いまだに新しい発見があったりする。

メンバー達はもちろんのこと、LOVELYZの作品に携わった全てのクリエイター達にもありがとうと言いたい。