2020年前半にリリースされたアルバムを何枚か紹介していきます。


 

TIGER EYES - Ryu Su Jeong

リリース日:2020年5月20日

レーベル:woollim entertainment / kakao M

  1. Be Cautious
  2. Tiger Eyes
  3. CALL BACK
  4. 너의 이름 (Your Name)
  5. 42=
  6. 나, 니 (NA, NI)
  7. 자장가 (zz)
LOVELYZSuJeongがリリースした待望の1stソロアルバム。
ゆっくりとしたアルペジオから急展開を見せるショートチューン[1]に続く[2]がアルバムのメイントラックとなる。
 

当初はアコースティックな曲調の[5]をメイントラックにする予定であったが、ソロ活動という新しい挑戦に相応しい曲ということでこれまでのSuJeongのイメージとは異なる[2]を選んだとのことである。

そんな制作エピソードを踏まえてアルバム全体を俯瞰すると、[2]を中心としたPopな楽曲群と[5]から始まるアコースティック系のセットという二部構成が浮かび上がってくる。

LPレコードで言えばA面とB面ということになるが、3拍子の曲である[3]と[7]がそれぞれのサイドにシンメトリックに配置されていることに着目すると、そのイメージはより確かなものとなる。

 

但しそれは机上の妄想に過ぎず、実際にアルバムを通して聴いてみるとそのようなドラマティックな構成美は感じられない。

それはメイントラックである[2]があまりに淡々としていることに起因しているのかも知れない。

イントロとエンディングの省略、盛り上がりを期待させながら何事もなかったかのようにAメロディに戻る後半のブレイクパート、そしてフィルインを一切省いて四つ打ちリズムの単調さを際立たせたようなリズムセクションなど、曲を構成する要素全てがあまりにも淡々としているわけであるが、その意図は分からない。

 

それはさておき、このアルバムの最重要曲はSuJeongが自ら作詞作曲を手掛けた[7]に尽きる。

SuJeongはこれまでにLOVELYZのアルバム「WoW!」収録の「숨바꼭질」で作詞に参加したことはあったが、作曲家としてクレジットされるのは今回が初めてとなる。

 

2015年11月にSuJeongが出演した回のテレビ番組「My Little Television」は、今もオールドファンの間で語り草となっている。

当時LOVELYZの楽曲を全面に手掛けていた作曲家ユン・サン氏がゲストと共に楽曲を制作していく過程を披露するという企画で、OnePieceの他のメンバー(Davink氏、SpaceCowboy氏)、LOVELYZの初期から詞を提供しているソ・ジウム女史(本アルバムの[2]にも参加)、そしてLOVELYZのKeiとSuJeongが出演した。

 

最終的に「O2」という曲が完成し、SuJeongは「Yoonvelyz」(ユン・サン、OnePiece、Kei & SuJeong)名義で作曲家の仲間入りを果たしたわけであるが、当時まだ高校生だった彼女がこの番組で片鱗を見せた音楽制作の才能にLOVELYZの可能性を見出したと語るファンは多い。

しかし現実には、彼女の名前が正式なアルバムに作曲家としてクレジットされるようになるまでに4年余りが費やされた。

LOVELYZやSuJeongを取り巻く環境の変化や昨今のガールズグループ界の勢力遷移などを鑑みると、正直長かったように思う。

 

最後に、LOVELYZの次回作への展望という観点から本作を再考してみたい。

本作にはこれまでLOVELYZとの接点の無かったクリエイター達、特にMayu WakisakaさんやSean Michael Alexander氏と言った売れっ子作家が参加している点が注目に値する。

流行りのクリエイターが手掛けた楽曲をLOVELYZが歌いこなせるか興味深いところであるが、LOVELYZの場合は作家陣の力量よりも総合的にコンセプトをまとめるプロデューサーの手腕が重視されるべきであろう。


 

LOVELYZのカムバックに関する結論はいったん保留にして、次のレビューに進みます!

年末恒例のBEST MIXシリーズ。

今回は趣を変え、「バラード」をテーマに'10年代を振り返りつつ今年発表された楽曲を紹介するという構成にしました。

 

The 2010s Ballads Mix @ SOUNDCLOUD

https://soundcloud.com/kasamasama/the-2010s-ballads-mix

 


[1] 조각달 - BabySoul

(00:00-04:06)

作詞 BabySoul

作曲 BabySoul

編曲 Song Seong Kyeong, Sweetch

from "조각달" (2019)

 

 

LOVELYZのリーダーBabySoulが自ら作詞作曲を手掛けた意欲作。

4月23日にデジタルシングルとして発表されたこの曲は、配信に先駆けて2月に開催されたLOVELYZの単独コンサート「LOVELYZ in Winterland 3」で初披露された。

編曲としてクレジットされているSong Seong Kyeong氏は、LOVELYZの歴代のコンサートでバンドマスターを務めている人物である。

曲の作者であり歌い手でもあるBabySoulや手練れのミュージシャン達と共に、リハーサルを重ねながらアレンジを煮詰めていったであろうことは想像に難くない。

この曲を聴いて得も言われぬ質感が伝わってくるのは、そういった理想的な音楽制作プロセスを経たからなのかも知れない。

 

[2] Circle - LOVELYZ

(04:06-07:32)

作詞 김이나

作曲/編曲 OnePiece

from "Lovelinus" (2015)

 

[3] Paper Heart - f(x)

(07:32-10:48)

作詞 서지음

作曲 Chris Wahle, Didrik Thott, Dianna Corcoran

編曲 Chris Wahle

from "Red Light" (2014)

 

[4] Illusion - OH MY GIRL

(10:48-14:19)

作詞 서지음

作曲 David Amber, Mayu Wakisaka

編曲 David Amber

from "Remember Me" (2018)

 

[5] OH BOY - Red Velvet

(14:19-17:23)

作詞 구태우

作曲/編曲 Herbie Crichlow、Lauren Dyson、Jin Choi、LDN Noise

from "The Red" (2015)

 

[6] Dorothy - Sulli

(17:23-21:21)

作詞 Sulli / Jibin of Y2K92

作曲 Simo of Y2K92 / 정민규 (소년쿠로)

編曲 Simo of Y2K92 / 주영은

from "Goblin" (2019)

 

Y2K92は、ラッパーとしても有名なSimoとモンゴル出身のJibinによる新進気鋭のクリエイターチーム。

'98年生まれのJibinは、アルバム「Goblin」の全ての曲の歌詞をSulliと共作しているが、Simoが2018年に発表した「칙칙 폭폭」で聴くことのできる彼女のウィスパーボイスは、このアルバムに多大なインスパイアを与えたに違いない。

 

 

Sulliのことについては、今は何も書かない。

 

[7] Excerpt from "La Maison LOONA" - 이달의 소녀

(21:21-22:01)

作詞 Unknown

作曲 Unknown

編曲 Unknown

from "XX Limited Version A" (2019)

 

LOONAの「XX」は、昨年8月に発表したミニアルバム「++」に6曲を追加した12曲入りフルアルバムとして2月19日にリリースされた。

XXは++と同様に限定盤 A/B、通常盤 A/Bという四形態でリリースされたが、限定盤にはそれぞれ13曲目として隠しトラックが収録されていた。

そのうちの一つがこの曲である。

 

それから数カ月後、6月1日に公開されたTeaser映像「La Maison LOONA」によって、それらの曲がかねてから噂のあったバラード集の収録曲であることが明らかになった。

 

 

この映像を観ると、限定盤A/Bの隠しトラックはそれぞれODD EYE CIRCLELOONA 1/3の楽曲であったことが解る。

また、メンバー達の髪の色から推測するとコンセプト写真はかなり前に撮影されたようだ。

 

そして、最後のシーンに小さく書かれた「Delayed but Someday」という一文。

この記事を書いている12月末現在でもこのTeaserの続編は発表されておらず、バラード集の企画はお蔵入りとなったという見方が強い。

今思えば発表した時点で企画がお蔵入りになることが解っていて、その事実を知らしめるためのTeaserだったのかも知れない。

 

[8] Black Swan - 2YOON

(22:01-25:19)

作詞 윤혜주, 낯선

作曲 Lars Aass, Ole Henrik Antonsen, Claudia Mills

編曲 김태호

from "Harvest Moon" (2013)

 

[9] 10 Seconds - AOA

(25:19-29:08)

作詞 지민, 김재양, 박이수

作曲/編曲 Linnea Mary Han Deb, Joy Neil Mitro Deb, Anton MalmbergHaard Af Segerstad, Jenniler Decilveo

from "Good Luck" (2016)

 

[10] Butterfly - 이달의 소녀

(29:08-)

作詞 G-high (MonoTree), Jaden Jeong

作曲/編曲 G-high (MonoTree)

from "XX" (2019)

 

 

パリ、香港、LA、そしてアイスランドと歴代のMV撮影地を再登場させることでストーリーの一貫性を再認識させつつ、MV本編では現地でスカウトしたエキストラ達を主役に据えるという大胆なディレクション。

人間的な生命の躍動感に満ち溢れていた前活動曲「Hi High」とは対照的に、個を押し殺して十二羽の蝶としての一体感をストイックに表現したかのような楽曲やダンスフォーメーション。

そういった作品としての完成度の高さも然ることながら、この曲に関しては彼女達のパフォーマンスそのものが発する覇気がそれらを超えていたという点が注目に値する。

 

3月31日放送の人気歌謡をもってXXの活動を終えたLOONAが新たなTeaser「#」を発表したのは、翌日の4月1日零時。

誰もが彼女達の快進撃が続くことを信じて疑わなかっただろう。

しかし、2019年内のカムバックはとうとう叶わなかった。

XXの完成度とは裏腹に、今年のLOONAの活動は前述のLa Maison LOONAの件なども含めて順風満帆とはいかなかったようであるが、ここではこれ以上詮索しない。

 

「#」のTeaser続編は、12月14日にソウルで開催された「LOONA Premium Meeting Meet & Up」にて初公開された。

 

Hi HighのMVのラストシーンからの続きとなる映像の中で、天空に辿り着いてなお更なる高みを見据えて一歩を踏み出そうとするHeeJin。

彼女の姿は来る2020年代のLOONAの象徴となるだろうか。

 

今回のコンサートのハイライトを挙げるならば、第四部の前半で披露された「Rain」に尽きる。

同曲は昨年11月にリリースされた5枚目のミニアルバム「Sanctuary」の収録曲であるが、今回初めて披露された。

 

LOVELYZのコンサートにおいて第四部前半というのは、熱狂の第三部後半とヒット曲のオンパレードでコンサート本編の幕を閉じる第四部後半との間の谷間のような存在であるが、実はコンサート全体の印象を引き締める重要な役割を担っている。

2017年冬の「初雪」や2019年冬の「백일몽」など歴代のコンサートを振り返ってみれば、その重要性が解るだろう。

幻想的なライティングに浮かび上がるセンターステージで披露されたパフォーマンスは、その期待に見事に応えたと言える。

 

コンサートからは離れてしまうが、最後に「Close To You」を取り上げて今回のレポートを締め括りたいと思う。

 

Close To Youは最新ミニアルバム「Once Upon A Time」の収録曲で、作詞に2017年以来久し振りに김이나が参加している点が目を引く。

김女史はこれまでにCandy Jelly LoveCircleWoW!など往年のOnePiece作品の歌詞を手掛けてきた人物であるが、それらの悲恋ソングとは対照的にこの曲の歌詞は有機的な喜びに満ちている。

また、そんな歌詞に呼応するように仄かな官能さえ感じさせる楽曲は、2017年にLOVELYZがリリースした「The」(R U Ready?収録)や「Take Me Somewhere」(2017 FEVER FESTIVALのために発表されたアルバム未収録曲)の正統な後継として評価すべきである。

 

ところで、2018年以降のLOVELYZの活動曲に関する記事やインタビューを読むと、「아련하다」という単語が頻繁に登場する。

日本語に直訳すると「ぼんやりしている」とか「おぼろげだ」とかいう意味の単語で、適切な訳が思いつかないが「그날의 너」や「찾아가세요」のイメージを指す言葉としては当てはまっている気がする。

最新アルバムOnce Upon A Timeの活動は、メイントラック「그 시절 우리가 사랑했던 우리」が3週間で切り上げられ、矢継ぎ早にClose To Youを後続曲としてさらに3週間に渡って活動を継続するという異例の展開となった。

最初からClose To Youをメイントラックにしたサマーアルバムで活動したほうが良かったのではないか?という意見はさておき、これは「아련하다」路線の終焉と新たな展開への布石なのかもしれない。