日本経済新聞によると、三井住友銀行やみずほ銀行が紙の約束手形、小切手のサービスを相次ぎ廃止するようです。
政府は2026年をめどに紙の手形・小切手の電子化を目指していますが、削減幅は2026年度の全廃に向けた全国銀行協会の当初計画の7割にとどまっています。
大手銀行が背中を押すことで、中小企業の業務負担を改善し生産性改善につなげる狙いがあるようです。
約束手形とは商取引における代金決済方法の一つで、将来の一定期日に代金を支払うことを約束した有価証券を指します。
受取人は指定された期日になったら金融機関に手形を取り立てに出し、現金に換金することができます。
手形による取引は、明治時代の手形交換所以来の商慣行です。
取引先への支払いが猶予されることから経済成長期には、手元資金に余裕のない発注企業の資金繰りに役立ってきました。
ただし、近年は入金の遅さなどの弊害が目立ってきました。
三井住友銀行が廃止するのは明細の一覧化のほか、「連続手形」と呼ぶ手形の用紙を1,000枚以上ひとまとめにして印刷したり、用紙に事前に支払い元の社名を印字しておいたりするサービスです。
廃止対象のサービスを利用する企業数は1,000社を超える規模になります。
みずほ銀行は企業がみずほ銀行に持ち込んだ取り立て手形の持ち込み日別、期日別の明細や入金予定を一覧にするサービスを2025年12月に廃止します。
三菱UFJ銀行もサービスの縮小を検討する方針です。
紙の約束手形、小切手を利用する企業にとっては手形の管理を自前でこなさなければならないなど利便性の低下につながります。
大手銀行が相次ぎ紙の手形サービスを縮小する背景には、2017年の未来投資会議で掲げた約束手形や小切手の電子化を目指す政府方針があります。
2021年の成長戦略実行計画でも5年後の手形の廃止や、小切手の全面的な電子化を目指す方針を盛りこみました。
全国銀行協会は2026年度末までに手形、小切手の交換枚数をゼロにする自主行動計画を定めました。
新規発行についてはすでに停止している銀行が多いようです。
三井住友銀行は2023年10月以降の新規の当座預金口座の開設者を対象に手形・小切手の発行を停止したほか、2027年4月以降を期日や振出日とする手形や小切手の取り立て受け付けを2023年末で止めました。
三菱UFJ銀行、みずほ銀行の両行も2023年9月に追随する方針を明かしました。
ただし、手形、小切手の利用縮小ペースは落ちてきています。
手形や小切手の電子化には支払い元、支払先が一体となった移行が必要となり、中小企業への周知は十分とはいえません。
手形や小切手での支払いの決済費用が値上げされても、なお他の決済手段に比べて高いと言い切れない事情もあります。
三井住友銀行は既存の当座預金の顧客向けに新規の発行に応じてきた手形・小切手の停止の議論を始める方針です。
三井住友銀行の手形・小切手類の利用件数は年数百万枚規模にのぼり、新規顧客向けに設けた当座預金の規定と従来の規定を統合することを検討しています。
三菱UFJ銀行とみずほ銀行も検討を進める意向を示しています。
政府は下請け企業への支払いに使う約束手形の運用をおよそ60年ぶりに改め、商品を納入し手形を発行してから決済までの期限を原則120日から60日以内に短縮する方針です。
電子化の恩恵を念頭に企業間決済の迅速化を後押しする狙いがあります。
大手銀行の新規顧客を対象にした手形、小切手の発行停止を受け、りそな銀行も2024年1月から新規顧客の発行停止に踏み切りました。
地方銀行でも群馬銀行や常陽銀行が当座預金口座の新規開設停止に踏み切るなど各行の動きが加速しています。
紙の手形がなくなっても、電子化された手形は残ります。
電子化された手形は電子記録債権と呼ばれ、全国銀行協会がやりとりを仲介する「でんさいネット」があります。
全国銀行協会は手形・小切手の電子化で年400億円近くのコスト削減効果があるとみています。
アメリカもかつては小切手主体でしたが、中小企業にも銀行振込やクレジットカードが浸透し始めているほか、中国でも手形の半分は電子化されているとされます。
労働力不足に悩む日本の中小企業にとって紙の手形の廃止は業務のデジタル化へ向けた好機になりそうです。
紙の手形や小切手は盗難や紛失のリスクもありますし、管理コストもかかりますので、早く電子化が当たり前になって欲しいですね。
紙の手形・小切手サービスを大手銀行が廃止し発行停止も議論していることについて、あなたはどう思われましたか?