コロナ禍の迅速融資の副作用でコンプラ違反倒産が最多! | 体脂肪率4.4%の公認会計士 國村 年のブログ

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日本経済新聞によると、粉飾決算などコンプライアンス(法令順守)違反が発覚し、借り換え融資などを受けられずに倒産する企業が増えているようです。

民間調査会社によると、コンプラ違反関連の倒産は2023年1〜8月で228件と前年同期比39%増え、同期間で過去最多でした。

新型コロナウイルス禍の融資で金融機関が審査の質よりスピードを優先させた「副作用」が出ているとみられます。

 

帝国データバンクによると、要因別では粉飾決算、違法な営業活動などによる業法違反がそれぞれ50件で最多となっています。

補助金などの不正受給(19件)、私的流用による資金流出や横領などの不正(18件)が続きました。

粉飾が発覚した業種では、卸売業が全体の30%を占め最多でした。

架空取引のほか、資金調達を目的にした取引の実態を伴わない不正な手形を使ったケースが多くなっています。

 

背景には実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済本格化があります。

2023年7月から2024年4月にかけて返済ピークを迎えるなか、「ゼロゼロ融資の返済開始後に資金を手当てできず、借り換えや追加融資を金融機関に求めた際に不正が発覚したケースが目立つ」(帝国データの内藤修・情報統括部課長)ようです。

 

産業用機械のトガシ技研(山形県鶴岡市)は2023年2月、民事再生法の適用を申請しました。

帝国データによると、2022年7月、架空取引による粉飾が発覚し債務超過に転落しました。

固定費削減などに取り組んできましたが、自力での再建を断念しました。

 

コロナ禍での資金繰り支援は融資実行のスピードが重視され、本来は審査で問題が疑われるような企業にも資金が回り、結果としてコンプラ違反企業の延命につながっていた可能性があります。

2020年3月に始まったゼロゼロ融資は2022年9月末時点で約245万件、実行額は約43兆円まで膨れ上がったのです。

 

ある都内の信用金庫関係者は「審査が緩んだ面は否めない」と振り返っています。

ゼロゼロ融資は各都道府県が最初の3年間は利子を企業に代わって払うのに加え、返済が焦げ付いても信用保証協会が肩代わりするのです。

金融機関の負うリスクは小さく、むしろ低金利にあえぐ信金や地銀は競い合うように貸し出しを積極化しました。

 

実際、コンプラ違反は融資を受ける企業だけでなく、貸し手側にもありました。

中日信用金庫(名古屋市)はゼロゼロ融資を実行しやすくするために取引先の業績を改ざんしていたことが発覚し、2022年9月に東海財務局から業務改善命令を受けました。

その後、中日信金は経営責任を明確にするため当時の理事長が辞任しました。

 

コンプラ違反企業の倒産が増えている状況について、東洋大学の野崎浩成教授は「銀行の審査機能、情報をきちんと分析する能力が十分に発揮されないまま、ある意味で銀行のモラルハザード、借り手のモラルハザード、両方が原因で増えた」と指摘しています。

 

コロナ禍の資金繰り支援は倒産抑制に寄与した半面、本来なら淘汰されるべき企業の延命にもつながりました(いわゆるゾンビ企業)。

日本も金利のある世界になれば、利払い負担が重くなり、こうした「ゾンビ企業」の淘汰は一段と加速する可能性があります。

 

「今後、金融機関は事業の成長を見極める事業性評価をきちんと実施していくことが重要だ。事業性に問題があれば、廃業や他社によるM&A(合併・買収)を含めた方向性を示していく必要がある」(東洋大の野崎氏)としています。

 

平時ではない有事の際には、細かいことよりスピードが重視されるのは当然か思いますが、平時の時から、金融機関はもっと事業の成長を見極める眼を養っておく必要があると思いますし、補助金などではないので返済しないといけないなど、借り入れに関す知識を持っておかないといけないと思いますし、財務の状況を把握しておかないといけないのではないかと改めて感じた記事でした。

 

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