千葉の医療法人社団心和会が過去3番目の規模の倒産! | 体脂肪率4.4%の公認会計士 國村 年のブログ

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日経産業新聞によると、千葉で2023年4月、負債132億円という医療機関として過去3番目の大きさとなった倒産が発生しました。

「八千代病院」などを運営し、約1,200人の従業員が働く医療法人社団心和会(千葉県四街道市)が2023年4月4日に民事再生法の適用を申請し、倒産しました。

医療とリゾートの融合など新たなサービスを進めてきた法人が、なぜ巨額の負債を抱えることになったのでしょうか?

 

心和会の歴史は、1946年に荒井元吉氏が千葉県四街道市に個人経営の診療所を開設したことにはじまります。

その後、1954年に医療法人荒井病院に法人改組し、1955年に八千代市に新しく八千代診療所を開設、1957年に同診療所を八千代病院(当時53床)に変更して礎を築き、1967年に法人名を心和会に改称しました。

 

事業規模が大きくなったのは1983年に新八千代病院(当時200床)を開設させたことがきっかけです。

さらに、1988年に八千代病院を現在の場所に移転させて372床に増床させ、さらに1991年に現在の422床に増床させました。

このような初代の事業展開を経て、1992年に荒井壽明氏が2代目理事長に就任しました。

 

壽明氏は1992年の介護老人保健施設・荒井記念ホーム(100床)をはじめ、複数の訪問看護ステーションやクリニックなどの開設に携わり2009年に約17年の任期を終えました。

 

2009年に3代目の理事長としてバトンが引き継がれたのは、壽明氏の三男である荒井宗房氏で、2009年3月期の年収入高は約60億7,200万円まで増加していました。

 

宗房氏の就任後は、人間ドックからフィットネス、スパを手がける医療リゾートのシンワメディカルリゾート(2011年)、シンワメディカルリゾート柏の葉(2016年)のほか、成田リハビリテーション病院(2017年、100床)、江東メディカルタワー(2018年)、シンワメディカルリゾート宮古島(2021年)などを手がけ、医療と健康・美容の融合や医療とリゾートの融合など新しいサービスを進めてきました。

 

心和会の2008年3月期以降の15期分の業績推移を見ると、年収入高は一度も前期を下回ることがなく増加し続け、2015年に70億円、2019年に80億円、2021年に90億円を突破しました。

2022年3月期には約97億5,900万円と100億円目前になっています。

 

ただ一方で、利益(当期純利益)は近年悪化していました。

2009年を除き利益を計上し続けていましたが、2019年、2021年、2022年と赤字の計上が続いていました。

2019年は役員退職金約10億5,100万円を臨時費用として計上したことなどから約12億7,900万円を計上しました。

 

また、新たにはじめたリゾート関連の事業は新型コロナウイルス禍の影響もあり、当初の計画通りに進んでいなかったようです。

相次ぐ施設の開設もあり、借入金(長期・短期合計)は宗房氏の理事長就任時と比較して約3倍に膨れ上がっていました。

 

さらに、開設されて間もないシンワメディカルリゾート宮古島の営業が2022年12月末をもって終了しました。

2023年2月1日には宗房氏から宗房氏の兄である荒井泰助氏に理事長が交代しました。

「ついに情勢が急変する前兆かもしれない」とある関係者は語っていました。

 

そうしたなか、心和会は2023年4月4日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請しました。

負債は金融債務約58億4,800万円、一般債権約27億1,000万円など含めた計約132億円で、債権者数は275人にのぼりました。

 

2022年3月期末時点の負債は決算書上で約80億9,900万円となっていたことから約51億円もの差異があることになります。

背後にこれまで公にされてこなかった大きな問題が潜んでいるのではないかと関係者の間でささやかれていました。

 

132億円の負債は、医療機関の倒産として医療法人育和会(大阪、2002年民事再生法)の200億円、浪速医療生活協同組合(大阪、2005年民事再生法)の134億円に次ぐ過去3番目の規模となり、医療関連の審査関係者の間でも大きな話題となりました。

 

もともと医療機関は安定経営の事業者が多いとされています。

なかでも病院の倒産は年間5件(2022年)と一般企業と比べて極めて少なくなっています。

そうした中で発生した心和会というまれにみる「大倒産」は医療機関の倒産史に極めて大きなインパクトを残しました。

 

心和会の支払い遅延に関する情報を耳にするようになったのは2021年春を過ぎた頃からだったようです。

以後、毎月のように支払い遅延・延期要請をはじめとする信用不安情報が帝国データバンクに寄せられるようになり、特に不動産や手形に関連したトラブルが多く、不可解な人脈・関係性が見え隠れしていました。

 

2023年4月4日、民事再生法の一報を受け、大手医薬関連企業の審査担当幹部は「過去から信用不安情報をキャッチして警戒感を高めていたところ、2022年春に心和会の割止め情報が入り、取引撤退を社内にて決定していた」と話しています。

 

翌4月5日には、心和会のホームページに「民事再生手続申し立てに関するお知らせ」がアップされましたが、そこに書かれていた申し立ての経緯の内容に驚いた人は多かったはずです。

 

そこには、近年、意図せずに外部の者による不当な介入を受け、前理事長がこれらの者から度重なる詐欺・恐喝を受け続け、抗拒不能の状態に陥り資金流出を許してしまったという内容が書かれていました。

東京地裁に提出された申立書の中にも申し立てにいたった理由について、同じことが書かれているようです。

 

心和会の従業員は1,204人で、数多くの患者が存在し、多方面の取引先も有し、地域の医療だけでなく、経済・雇用も支える存在となってきました。

それだけに再生を進めていくには前理事長の経営責任を含めた徹底した原因究明が求められます。

本業とは関係ないと思われる要因が飛び交っている今回の倒産劇ですが、これまで心和会と関係を保ってきた従業員、金融機関、一般取引先、そして患者とその親族の感情にも大きく影を落としそうです。

 

次々と設備投資を行なっていたため、その減価償却費などで赤字になったと金融機関などには説明していたのかもしれませんが、実際は思ったほどの収益が上がらず、粉飾をして、それを補ったり、隠すために、どんどん設備投資をしていたのかもしれませんね。

規模が大きいだけに、金融機関としても、取引をしたかったでしょうし。

基本的には、フリー・キャッシュ・フローの範囲内で設備投資を行なうのが普通だと思いますが。

 

千葉の医療法人社団心和会が過去3番目の規模の倒産したことについて、どう思われましたか?